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百合×百合オペレーション  作者: 平井淳
第一章:ドキドキ放課後勉強会作戦

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01

感想をお待ちしております。

 私には今、同じクラスに気になる女の子がいる。


 気になるといっても、私はただその人と友達になりたいと思っているだけで、別に変な意味ではない。確かに彼女は同性の自分から見ても魅力的だけれど、それは恋愛感情とは異なるものだ。憧れや尊敬の念に近いといえる。


 あと五分ほどで朝のホームルームが始まる。

 私は自分の席に座りながら、彼女が登校してくる瞬間を密かに待ちわびていた。


 彼女はもうすぐ来るはずだ。

 早く会いたい。その姿が見たい。その声が聞きたい。

 

「おはよう」


 彼女は今朝も素敵な笑顔を振りまきながら教室に入って来た。

 それと同時に私の心はパッと晴れ上がる。


 まっすぐと腰の辺りまで伸びた長い黒髪と大きな瞳が印象的な美少女。色白で透き通った肌は見ていてとても羨ましくなる。スタイル抜群でウエストは細いのに出るところはしっかり出ており、まるでモデルさんみたいだ。


 彼女の名は宮園由利香みやぞのゆりか

 男女両方から好かれる人気者で学年トップの成績を誇る優等生だ。品行方正な模範的生徒として、先生からの評判もいい。おまけにお父さんが有名企業の社長であるらしく、お金持ちのお嬢様なのであった。


 宮園さんが席に着くと、周囲に三人の女子生徒が群がってきた。彼女たちは宮園さんといつも仲良くしているグループのメンバーである。


「おっす、由利香」

「由利香ちゃん、おはぽよ~」

「ねぇ、昨日話してたアレのことなんだけどさ」


 私は友人たちと談笑している宮園さんの姿を凝視する。

 やっぱり今日も可愛いなぁ。


 宮園さんの可憐さに魅了されていた時だった。彼女が私の方をチラリと見たのである。

 ほんの一瞬、目が合ったような気がした。


 ああ、いけない。ジロジロ見ているのがバレたら嫌われちゃう。


 慌てて視線を窓の外へ向ける。すると、綺麗な青空が見えた。今日はとてもいい天気だ。


 ところが、しばらくすると私は再び宮園さんの方をチラチラと見てしまうのだった。

 見ないようにしていたはずなのに、自ずと視線が彼女に引き寄せられていく。


 宮園さんは今も楽しそうに笑っていた。


 いいなぁ。私も宮園さんとおしゃべりしたいなぁ。


 宮園さんと仲がいい人たちは、クラスの中でもイケてる子ばかりだった。オシャレでキラキラしていて、スクールカーストの上位に君臨している。見た目も性格も地味な私とは住む世界が違った。


 もし私がイケてる感じの女子だったら、今頃宮園さんたちのグループに入ることができていたのかな。


 スクールカースト最底辺の私が、彼女たちの輪に入ることなどできるはずもない。現実はとても残念なものだった。


 一方、宮園さんはカーストの頂点に立つ女神様だ。一般生徒からすれば雲の上の存在だといえる。


 誰もが彼女を慕い、誰もが彼女を認めている。男子たちも宮園さんと話すときは表情が緩んでいるし、他の女子とは明らかに扱い方が違っていた。普段やんちゃなクラスのリーダー的な男の子でさえ、宮園さんの前では紳士的に振る舞うくらいだった。


 そんな宮園さんに凡人の私がお近づきになりたいと思うこと自体、間違っているのかもしれない。凡人は凡人らしく身の程をわきまえるべきだ。けど、どうしても彼女を諦めることができなかった。


 なぜ、そこまで宮園さんに執着してしまうのか。自分でもよくわからない。

 彼女が人気者だから? 家がお金持ちだから? ううん、そんな浅い理由なんかじゃない。上手く説明できないけど、胸の内側に秘められた「宮園さんを独占したい」という欲望が今にも暴れ出しそうになるのだ。こんな気持ちは生まれて初めてだった。


 最近は無意識のうちに宮園さんのことばかり考えてしまう。

 授業中も休み時間も、家にいる時でさえも。


 (宮園さん……)


 うっかり彼女の名を呟きそうになった。

 こんな独り言を誰かに聞かれたら、絶対に気持ち悪がられる。


 宮園さんへの想いは決して声に出してはならない。

 でもその代わり、心の中でなら、どんなことでも自由に叫ぶことが許される。


 だから私は張り裂けそうな今の気持ちを全力で脳内にぶちまけることにした。


 宮園さんと話したい。宮園さんと仲良くなりたい。宮園さんと遊びに行きたい。宮園さんと思い出を作りたい。宮園さんと手を繋ぎたい。宮園さんとハグしたい。宮園さんとキスしたい。宮園さんとエッ……。


 って、最後の方はちがぁぁぁぁぁぁう!


 ガン! と机に額を打ち付ける私。

 大きな音が教室に響き、クラスメイトたちの視線がこちらへ一斉に向けられる。


 宮園さんも私のことを見ていた。


 ダメ、見ないで……。

 変な人だと思われたらどうしよう。


 私は何てことを考えてしまったのだろう。宮園さんとあんなことやこんなことまでしたいだなんて。


 最近、自分が自分ではないような感覚に襲われることがよくある。なぜか宮園さんといかがわしい関係になる妄想をしてしまうのだ。


 これは本当に私の意思なのだろうか。何者かによって思考を操られているのではないか。


 ますます変なことを考えてしまう。私はそんな頭の痛い子じゃない。至って普通の女子高生なんだから。


 とりあえず落ち着こう。今は宮園さん以外のことを考えるんだ。


 昨日の夜に観たバラエティ番組のことを思い出す。最近売れ出したお笑い芸人……名前は何だっけ? 忘れたけど、あの人が披露しているあのギャグ、何が面白いのかさっぱりわからないなぁ。


 その芸人の顔を思い浮かべる。眉毛が太くて、目力が強くて、スキンヘッドで……。


松浪紗友里まつなみさゆりさん。私の声が聞こえますか……』


 え? 今の声は何?


 誰かに名前を呼ばれたような……。


 いや、きっと気のせいだよね。

 精神を集中させて、もう一度芸人さんの顔を想像する。


『無駄ですよ。あなたは宮園由利香さんから逃れることはできません』


 また聞こえた。謎の声が直接脳内に!


『宮園由利香さんと仲良くなりたいのでしょう?』


 どうしてそれを……!

 

 ホントに誰なの? 誰が私に話しかけているの?


『失礼しました。まだ自己紹介をしていませんでしたね。では一度、場所を変えて私とゆっくりお話ししましょうか』


 次の瞬間、視界が突然真っ白になった。

 私は「え? え?」と戸惑いながら、辺りを見回した。


「初めまして、松浪紗友里さん」

「うわぁっ! どちら様ですか?」


 目の前に見知らぬ女性が現れた。一体どこから出てきたのか。

 そんなことより、彼女の恰好が気になって仕方がないんだけど。


 その女性は白いワンピースを身に纏い、背中から翼のようなものが生えていた。頭の上には金色に輝く輪が浮かんでいる。


「私は恋を叶える天使、ユリエルと申します」

「はい……?」


 この人は何を言っているのだろうか。

お読みいただきありがとうございます。

感想をお待ちしております。

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