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百合×百合オペレーション  作者: 平井淳
第一章:ドキドキ放課後勉強会作戦

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少しずつエンジン上げていきます。よろしくお願いいたします。

 しばらくの間、私はユリエルさんに抱きしめられながら頭を撫でてもらっていたが、急に恥ずかしさがこみ上げてきた。

 よしよしされるなんて子供みたいだ。もう高校生なのに。


 彼女を引きはがし、コホンと咳ばらいをする。


 それから、改めて確認しておいた。

 彼女の私に対する「忠誠心」というものを。


「……私のこと、見捨てないでね?」

「安心してください。私はあなたを幸せにするまで、ずっとそばにいます」


 幸せにする。

 まるでプロポーズの言葉みたいだ。

 別に結婚するわけじゃないけど、結婚と同じくらい大切な意味を持っていると思う。

 

 私たちの協力関係には、私の幸福がかかっているのだから。


 願いが叶うまで、天使と運命を共にする。

 一心同体となり、共通の目標を目指すのだ。


 けど、この先どうなるかわからない。

 未来が恐い。恐くて身体と心の両方が震える。


 頼れるのはユリエルさんだけ。彼女は他の誰にも言えない夢を唯一応援してくれる存在だ。

 パートナーと呼ぶに値する人に出会えたのは、これが初めてである。


 私は興奮している。宮園さんにフラれる未来を想像すると恐くて仕方がないはずなのに、ほんの少しだけワクワクしていた。


 宮園さんが好き。

 絶対に誰にも知られたくない秘密をユリエルさんと共有している。


 禁断の恋を実らせるため、ユリエルさんは「共犯者」となった。

 もしこの恋が破れたら、私は彼女を道連れにしたい。期待を抱かせながら絶望させた責任を取ってもらいたい。


「見たいんだよね? 私と宮園さんがラブラブしてる光景」

「見たいです。お二人ならば、私の求める『尊さ』を生み出せると確信しています」

「できなかったらどうする? 私がフラれたら、その時はユリエルさんも悲しんでくれる? ちゃんと慰めてくれる? 私、どうなっちゃうかわからないよ? ショックで死んじゃうかもしれない。私が死んだら、ユリエルさんも一緒に死んでくれる?」


 何を言っているんだろう、私は。

 すごく面倒くさい女になってる。

 おかしいな。こんなこと言うタイプじゃなかったはずなのに。


 でも仕方ないよね。今からやろうとしていることって、単なる遊びじゃないんだもん。

 おおげさな言い方になるけど、これは私の人生そのものを左右することなんだから。


 宮園さんにフラれたら、私は何のために生きているのかわからなくなる。

 これが初めての恋だ。今まで私は何となく生きてきたけど、宮園さんに出会ってからは違う。


 私が生きる理由は宮園さんなのだ。宮園さんと結ばれたくて生きているんだ。

 それほど好きな人に拒絶されてしまうのは、生きる理由そのものを否定されたことに等しい。


 宮園さんがどのような言葉で私を拒むのかはわからない。だけど、その言葉は間違いなく死刑宣告となる。

 

 失いたくないんだ。宮園さんへの憧れと彼女を好きな気持ちを。

 それが許されない日が来たら、私は迷うことなく死を選ぶ。


 私をこんな気持ちにさせた最初で最後の人が、宮園さんであってほしいから。


「重い女だよね……。私、どうかしてるかも」

「いいえ。あなたと同じ想いを抱える人をたくさん見てきました。恋が実らず、命を投げ捨てた人たちを私は知っています」


 私だけじゃないんだ。何だか嬉しいな。

 でも、やっぱり悲しい。

 「ダメだった未来」を味わった人が、何人もいるってことだから。


「紗友里さんには同じ道を辿らせません。ですが、もしも……。もしも叶わないことがあれば、私も一緒に死にます。人を幸せにできない天使など、天使失格ですから」

「ありがとう。最期まで一人なのは寂しいから、一緒に地獄へ落ちてくれる人が欲しかったんだ」


 私は笑っていた。死への恐怖が少しだけ和らいだような気がしたから。

 でもおかしいな。まだフラれると決まったわけじゃないのに、どうしてこんなに死ぬことばかり考えちゃうんだろう。 

 

「そうですね。まずはそのネガティブ病を治すべきでしょう。話はそれからです」


 ピロン♪ とスマホが鳴った。

 ラインの通知音だ。


 ベッドの上に置いていたスマホを拾い上げる。


 画面を見た。メッセージの送り主は宮園さんだった。


『明日、二人で一緒にお昼食べない? いい場所知ってるの』


 二人……?

 私と宮園さんの二人だけで?


 宮園さんは普段、森さんたちと教室でお弁当を食べている。友達がいるのに放っておいてもいいのだろうか。


「どういうことなのかな?」

「さぁ……? でも、お受けするしかないでしょう」

「うん」


 私は急いで返事をした。


『はい! 食べたいです』


 もちろんオッケーだ。

 まさかこんなに早く宮園さんとのランチタイムがやって来るなんて思ってなかった。


「敬語。まだ直ってませんね」

「そ、そうだった……」


 さっき宮園さんに敬語は使わないと決めたばかりなのに、ついうっかりしてしまった。

 まぁ、明日から気をつけるから問題ない……よね?


「緊張してきたぁ……。今夜は眠れないかもぉ」

「落ち着いてください。まだ序の口ですからね」


 心臓がバクバクと音を立てている。興奮し過ぎて頭がどうにかなってしまいそうだ。

 こんな調子で本当に大丈夫かな?

お読みいただきありがとうございます。

感想をお待ちしております。


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