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「ご存知の通り、宮園由利香さんは人気者です。いつも他の人たちに囲まれて、休み時間は仲の良いお友達と過ごされています。紗友里さんも彼女たちの仲間に入れてもらえるといいいのですが、それは厳しいでしょう」
「うん……。私もそう思う。あのグループに混ざるのは無理だよ」
いきなり部外者の私が割り込んできたら、彼女たちにとってはいい迷惑である。
もし皆が私を受け入れてくれたとしても、ぎこちない関係になってしまうだろう。
すでに完成している人間関係だ。それを今さら作り変えるのは容易ではない。
「紗友里さんの願望は宮園由利香さんを独り占めすることでしたよね。ですから、紗友里さんにとって他の子たちは邪魔者でしかないんです」
邪魔者という言い方はよくないけど、私に独占欲があるのは本当だ。
私は宮園さんと特別な関係になりたい。他の女の子たちとは違う存在になりたいのだ。
宮園さんの中で一番になる。私は彼女の唯一無二のパートナーでありたい。
他の誰も知らない宮園さんを私だけが知っていたい。私だけが彼女のすべてを受け止める。そのような関係になりたいというのが、私の願いであった。
「紗友里さんはアピールが必要です。宮園さんに自分のことを覚えてもらうために。他の子と同じじゃダメなんです。他の子よりも目立ち、印象に残らなければいけません」
「それはそうだけど、アピールの仕方なんてわからないよ」
「彼女と二人切りになる時間を作るんです。紗友里さんと宮園さん以外は誰もいない空間で、お互いの仲を深め合うことが効果的でしょう」
二人切りになれば宮園さんは私のことだけを見てくれる。私だけを意識することになる。ユリエルさんの言っていることは一理あると思う。
しかし……。
「問題はどうやって二人切りになるか、だよね。宮園さんって学校ではいつも人に囲まれてるから、私みたいに一人ぼっちで過ごしているところなんて見たことないよ」
「放課後が狙い目です。他の人たちが部活に行ったり、家に帰った後がチャンスでしょう。紗友里さんも宮園さんも部活動には所属していません。放課後は時間があるはずです」
「そっか。誰もいない放課後だったら、二人切りになれそうかも」
私だけを見てもらうために宮園さんと二人切りになる。時間は放課後。
では、そこで何をするのか。
「彼女を誘うための口実が必要です。特に用事もないのに放課後の時間を割いてもらうわけにはいきませんから」
「宮園さんも暇じゃないもんね」
「はい。それなりの理由がなければ呼び出しに応じてくれないかもしれません」
「それなりの理由って、何があるかな?」
「勉強です」
「え? 勉強?」
「優等生の宮園さんに勉強を教えてもらうのです。むっつりスケベの紗友里さんは授業中も、いやらしいことばかり考えていますから、あまり勉強に集中できていませんよね? おかげで成績もイマイチですもんね」
「うっ……。私の成績が良くないのは事実だから、何も言い返せないよぉ」
確かに宮園さんは成績優秀でいつも学年トップだ。彼女に教わるのはいいことだと思う。
けど、勉強を教えてほしいと頼んでも、承諾してもらえるかは不明だ。
「私の分析では、宮園さんは誰かに頼られると断れない性格です。紗友里さんが勉強で困っていることを知れば、きっと手を差し伸べてくれるでしょう」
そんな気がする。宮園さんは他人想いの優しい人だから。
私のことも見捨てないで、助けようとしてくれるんじゃないだろうか。
「二人きりの空間で勉強を教えてもらいながら距離を縮めていくのです。題して、『ドキドキ放課後勉強会作戦』です!」
いいと思う。やってみよう。
でも、その変な作戦名はどうにかならないかなぁ?
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