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今から宮園さんにラインでメッセージを送る。
これが正真正銘の初めてのやり取りだ。どんな文面にしようかと、あれこれ悩んでいたが、結局ユリエルさんからのアドバイスに従うことになった。
『松浪です。よろしくお願いします』
出来上がったのは、何の捻りもない至ってシンプルなメッセージだ。
本当にこんなのでいいのか不安になってくる。しかし、ユリエルさんは問題ないと言う。
私はそれを何度も読み返した。誤字や脱字はないか。変なところはないか。
何度見ても、これ以上は手直しする箇所が見つからなかった。
ウジウジしていても埒が開かない。
いよいよ私は覚悟を決めることにした。
「じゃあ、送るね……」
震える指で送信のボタンをタップする。
「……送っちゃった」
緊張のせいで鼓動が早くなっている。
たった一言のメッセージを送っただけなのに、かなりの気力と体力を消耗してしまった。
「さぁ、どんな返事が来るでしょうか」
「無視されたらどうしよう?」
「向こうから誘ってきたのですから、さすがにそれはないでしょう」
だよね……。
宮園さんはきっと返事をしてくれる。私のアカウントを友だち登録してくれるはずだ。
ラインを通して彼女と仲良くなれるかもしれない。大きなチャンスが転がり込んできた。これを逃してはならない。
私は送信後もスマートフォンの画面を見ていた。すると、送ったばかりのメッセージに「既読」の文字が付いた。
宮園さんがメッセージを読んでくれた。
ここから彼女がどんな風に反応するのか気になるところだ。
さらなる緊張が走る。
宮園さんは今、どんな顔でメッセージを読んでいるのだろう?
彼女は私のことをどう思っているのかな? ただのクラスメイト? もしかしたら、いつも一人で過ごしている暗い子だと思ってるかも……? 悪い印象を持たれていたら嫌だなぁ。
「あ、返事来た!」
「早かったですね。どれどれ……」
二人でスマートフォンの画面をのぞき込む。
『連絡ありがとう。こちらこそよろしく。仲良くしましょう』
仲良くしましょう。
宮園さんは私と友好的な関係を築く気があるようだ。
「よかった……。ホントによかったぁ……」
肩の力が抜けるのを感じた。
私はそのままベッドの上に寝転がった。
今日はとてもいい日だ。灰色だった高校生活が一気に彩られていくような気分である。
宮園さんにほんの少しだけ近づくことができた。まだまだ道のりは長いけど、私にとっては大きな前進だった。
ラインの「友だち」に「宮園由利香」のアカウントが追加される。
彼女の名前がそこにあるだけで、私は胸が熱くなるのだった。
「ふふふっ……。友達かぁ」
「紗友里さん、嬉しそうですね」
嬉しい。本当に嬉しい。
あの宮園さんと繋がりを持つことができたのだから。
明日からは学校でも宮園さんと話せるかな?
「そう。まずはそこです。宮園由利香さんとおしゃべりをするためには準備が必要です」
「準備って、何をしたらいいの?」
「作戦を考えました。今から説明します」
作戦という言葉を耳にした私は再び緊張し始めるのだった。
スマホからメッセージを送り合っただけで浮かれている場合ではない。
本番はここからである。
私は身体を起こし、ベッドから降りた。
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