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この世界がいずれ滅ぶことを、俺だけが知っている  作者: 灰島シゲル
7章

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335/351

準備完了


 ――チリン。


 明け方近くになって、ようやくクエストが終了した。


 10ポイント獲得したことを知らせる画面を消して、明はドカリとアスファルトの上に座り込む。


(やっと終わった……。やっぱり、空を飛ぶモンスターは苦手だ。攻撃手段が限られる)


 明は手に入れたポイントを割り振るべく、ステータス画面を開いた。



 ――――――――――――――――――

 一条 明 25歳 男 Lv3(10)

 体力:21

 筋力:27

 耐久:26

 速度:27

 魔力:3

 幸運:11

 ポイント:21

 ――――――――――――――――――

 固有スキル

 ・黄泉帰り

 ――――――――――――――――――

 スキル

 ・戦闘感覚Lv1

 ・身体強化Lv1

 ・魔力回路Lv1

 ――――――――――――――――――

 ダメージボーナス

 ・ゴブリン種族 +3%

 ・昆虫系モンスター +3%

 ――――――――――――――――――


 

 キラービーのクエストを進めている最中に、明は『身体強化』を獲得していた。


 さらには『虫嫌い』というトロフィーを獲得したことで、昆虫系のモンスターにはダメージボーナスが発生するようになっている。


 大量のポイントは、前回のゴブリンのクエストで得たものと、今回のキラービーのクエストで得た結果だ。


 明は画面を見つめて呟いた。


「順調だな」


 死亡回数は最小限。獲得ポイントは最大限。


 このペースなら、ミノタウロス戦までに40ポイント以上は確保できる。過去の周回と比較しても、圧倒的な効率だった。


(『身体強化』のスキルレベルを上げておこう)


 スキル習得コストが半減したとはいえ、レベルアップには依然として大量のポイントが必要だ。『身体強化』をLv2にするのに必要なのは10ポイント。今回稼いだ分が全て消える。


 それでも、明は躊躇しなかった。



 ――――――――――――――――――

 スキル:身体強化Lv2を取得しました。

 ――――――――――――――――――



 『身体強化』のスキルレベルを上げた。


 次のクエスト対象を倒すには、この強化が不可欠だった。


 変化したステータスを確認し、ウィンドウを閉じる。残りのポイントには手を付けない。使い道は既に決まっていた。


「次はボアだ」


 明は呟き、意図的にボアの牙にかかった。



              ◇



 ボアとの戦いは、キラービーとは違い単純なものだった。


 『戦闘感覚』によって攻撃のタイミングを見切り、躱し、ゴブリンから奪った棍棒で反撃する。


 ボアの耐久値は30と高いが、『身体強化』スキルのレベルを上げた明の筋力値のほうが上だ。いくら硬い毛皮を持つボアといえど、今の明の敵ではない。


 ドゴッ!


「ピギィ!」


 棍棒で横っ面を殴られたボアが、悲鳴を上げて逃走を図る。だが速度でも明が勝っていた。


 追撃して、すかさず振り下ろす。


 ドゴッ! ドガッ、バキッ!


「ブ、モォオ……」


 棍棒で滅多打ちにされたボアが、ついに息絶えた。


 これで100匹目。無事、クエストクリアだ。


 ポイント10を獲得した画面を確認すると、明は手にしていた棍棒を投げ捨てた。


 空を見上げて、疲労を押し出すかのように細い息を吐き出す。


「ステータス」

 

 ――――――――――――――――――

 一条 明 25歳 男 Lv5(14)

 体力:25

 筋力:61

 耐久:60

 速度:61

 魔力:7

 幸運:15

 ポイント:25

 ――――――――――――――――――


 現在の総合レベルは14。


 ポイントは十分にあり、各能力値の数字も申し分ない。『疾走』や『剛力』などといった能力値上昇系のスキルを取得すれば、今すぐにでもミノタウロスを倒すことができる。


(どうしようか)


 明は画面を見つめて考えた。


 まだ、この街のモンスターでクエストを発生させる余地がある。


(発生させることが出来るクエストは……レベル15のロックバード、レベル17のブラックウルフか……。どちらもE級で、報酬は10ポイントだな)


 残機を一つ捨ててでもやるべきか、やらざるべきか。


 明は画面を見つめたまましばし黙考し、やがて結論を出した。


「……やっておくか」


 序盤のポイントは貴重だ。貰えるものは貰っておいたほうがいい。


 明はその足で街をふらつき、見つけたモンスターの前に姿を現し、殺された。





 明が選んだのは、ブラックウルフだった。


 レベルのことを考えればロックバードを相手にクエストを発生させるのが一番だったが、現状対処は困難だ。今の明には、空飛ぶモンスターへの攻撃手段がない。


 その点、地上を駆けるブラックウルフなら何とかなる。多少の速度差は『戦闘感覚』でどうにかなるし、群れで行動する習性も効率的な狩りには好都合だった。


「ガウッ!」


 群れの中の一匹が飛び出してくる。


 明はその動きを『戦闘感覚』によって予測し、ブラックウルフが次に飛び掛かってくるであろう場所に向けて、全力で棍棒を振り払った。


 バキッ!


「キャインッ!」


 すると、まるで吸い込まれるようにして飛び込んできたブラックウルフが、その顔面に強烈な一撃を受けて、地面に転がった。


 すかさず明は地面に倒れたブラックウルフへと駆け寄り、そのどてっ腹を思いっきり蹴り飛ばす。


 野蛮な戦い方だ。けれど、現状はこの戦い方しかできない。


 この街に現れるモンスターは、武器を持たない獣系ばかりだった。武器を手にして戦うのは、ゴブリンとミノタウロスだけ。


 武器を作るための素材を集めるのにも時間がかかるし、『武器製作』で武器を作ろうにも『インベントリ』のない今は、次のループ先へと武器を持ち込めない。


 そう考えると、最も時間効率が高いのは、開始早々に出現したばかりのゴブリンを襲って棍棒を奪い、その棍棒を手にクエストモンスターを倒し続けることだった。



 ――――――――――――――――――

 E級クエスト:ブラックウルフ が進行中。

 討伐ブラックウルフ数:100/100

 E級クエスト:ブラックウルフ の達成を確認しました。報酬が与えられます。

 ――――――――――――――――――

 クエスト達成報酬として、ポイントを10獲得しました。

 ――――――――――――――――――



「これで、この街でできることは全部終わりだな」


 明はクエストの終了画面を見つめて、呟いた。


「ゴブリン、キラービー、ボア、ブラックウルフ……。残機4つを消費して、クエストで獲得したポイントは40。レベルアップが18回。総獲得ポイントは、しめて58ポイントか」


 ブラックウルフを一定数倒したおかげで、狼種族に有効な『狼狩り』のトロフィーも手に入った。


 しかし残念だったのは、ミノタウロスにも有効な『狩人』というブロンズランクのトロフィーを獲得することができなかったことだ。そのトロフィーさえあれば、獣系モンスターに対してダメージボーナスが+5%も発生するようになる。


(あのトロフィーを獲得するには、500匹以上の獣系モンスターを狩り続けないといけない。今はそんな余裕がないから、諦めるしかないな)


 それでも、勝算は十分だ。


 明は画面を見つめて、満足げに微笑んだ。


「次はミノタウロス戦に備えないとな」


 明は手に入れたポイントを使用するべく、さっそくスキル一覧を開いた。


 『疾走』スキルと『剛力』スキルを選択し、取得する。二つ合わせて10ポイントの消費だ。明はさらに続けて4ポイントを消費すると『魔力操作』スキルを手に入れた。


 ――残り21ポイント。


 しばしの間、黙考する。


 それから自身のスキルビルドの方針を固めると、明は10ポイントを消費して『短剣術』を、そしてさらに10ポイントを消費して『魔力撃』を取得した。


 明はできあがった自分のステータス画面を見つめた。



 ――――――――――――――――――

 一条 明 25歳 男 Lv5(19)

 体力:30

 筋力:56

 耐久:55

 速度:56

 魔力:12

 幸運:20

 ポイント:1

 ――――――――――――――――――

 固有スキル

 ・黄泉帰り

 ――――――――――――――――――

 スキル

 ・戦闘感覚Lv1

 ・身体強化Lv2

 ・魔力回路Lv1

 ・魔力操作Lv1

 ・剛力Lv1

 ・疾走Lv1

 ・魔力撃Lv1

 ・短剣術Lv1

 ――――――――――――――――――

 ダメージボーナス

 ・ゴブリン種族 +3%

 ・虫系モンスター +3%

 ・狼種族 +3%

 ――――――――――――――――――



「悪くないな」


 このスキル構成なら、ギガント以下のボスなら楽に相手することができるだろう。


 明は画面を消すと、大きく伸びをした。


 ここからが本当の始まりだ。


 ミノタウロスを倒せば、『黄泉帰り』のセーブ地点が更新される。それはすなわち、この世界の運命が変わり始めるきっかけでもある。


(今回は失敗しない)


 明は頬を叩いた。


 決意は固いが、気負いすぎてもいけない。それが自分の悪い癖でもあることを、今の明は十分に理解していた。


 明はゆっくりと街を歩き、ミノタウロスに見つかった。


 そして意識を失うその瞬間まで、明はミノタウロスを凝視し続けた。





 ――――――――――――――――――

 虫嫌い


 ・分類:トロフィー

 ・ランク:ブロンズ

 ・取得条件:昆虫系モンスターを50匹討伐する

 ・効果:昆虫系モンスターからの敵対心+20

     昆虫系モンスターへのダメージボーナス+3%

 ――――――――――――――――――



 ――――――――――――――――――

 狼狩り


 ・分類:トロフィー

 ・ランク:ブロンズ

 ・取得条件:狼種族モンスターを50匹討伐する

 ・効果:狼種族モンスターからの敵対心+20

     狼種族モンスターへのダメージボーナス+3%

 ――――――――――――――――――

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