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この世界がいずれ滅ぶことを、俺だけが知っている  作者: 灰島シゲル
五章

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272/351

方法



 それから三度、明は対話を試みた。

 しかし、どれも結果は同じ。どんな口調で、どんな語り口で蒼汰に話しかけても、明は殺され、その度に『黄泉帰り』を発動して戻ってしまう。

 そうして四度目となる『黄泉帰り』を経験してようやく、明は蒼汰に話しかけることが出来るのが龍一だけだと気が付いた。


 それからは龍一を説得し、蒼汰への語りかけを増やしてみた。けれど何度試しても結果は同じ。その試行回数で分かったことと言えば、蒼汰の自我が戻ったのは奇跡に等しいことであり、この一瞬を過ぎればまた自我を失ってしまうということだけだった。

 自我を失えば、もう二度と蒼汰は龍一の言葉に耳を傾けない。

 それを十度目にしてようやく把握した明は、そこから蒼汰の身体に埋め込まれたものを取り除く方法を探すことに思考を切り替えた。が―――。



(……ダメだ、方法が分からない)



 通算ループ回数、二十四度目。

 蒼汰に殺され、再び同じ地点へと戻って来た明は項垂れるように唇を噛みしめていた。

 感情を押し殺して、蒼汰を傷つけたこともあった。その身体を斬り、中に埋め込まれている肉体とやらを取り除こうともした。

 けれど、その方法はどれも失敗に終わる。

 蒼汰の持つスキルの中にギガントの『再生』スキルを越える『超速再生』というスキルが存在していたからだ。

 蒼汰の自我がある間はまだどうにか出来る。

 蒼汰自身がスキルの発動を抑えているのか、肉体の再生が行われないからだ。しかし、時間が経ち自我を失うにつれて、蒼汰の肉体はスキルの影響で再生し始める。


 異形へと変わったその身体の中にある物を探すにはあまりにも明達に残された時間が短く、さらには龍一以外の人間が蒼汰に近づけば、すぐに自我を失い暴走してしまうためその方法も限られた。


 実行役は龍一しかいない。

 けれど、龍一のステータスでは蒼汰を助けることが叶わない。



(せめて蒼汰のどこに埋め込まれているのかが分かれば……)



 ニコライは死んだ。蒼汰を元に戻す方法さえも教えずに。

 一条明には時間を戻す能力はあるが、セーブデータが一つしかないスロットにある、セーブデータの上に繰り返しオートセーブが上書き発生していくようなもので、その能力が活きる場面はひどく限定的なものだ。

 オートセーブが発生してしまえば最後、どんなに願ってもその前のセーブデータには戻れない。

 今の一条明には、ニコライから情報を得る手段が存在していなかった。


(いや、それでもまだ方法はあるはずだ)


 ヒントはあった。

 龍一からリリスライラに関する内容を聞いて発生した、EXと名がついた特殊シナリオだ。


(シナリオ)


 明は心で呟き、状況を確認する。




 ――――――――――――――――――

 リリスライラの目的阻止率 92%

 ――――――――――――――――――




 いつの間にかシナリオの進捗は残り8%へと迫っていた。


(リリスライラの信者を倒し、奴らの教祖であるニコライを倒して、この数字は一気に進んだ。つまり、この数字が残っているということはまだどこかに残党が生き残っているんだ)


 であれば話は早い。

 その生き残りから蒼汰に関することを聞けばいいだけだ。


「よし……!」


 方針を固めて、明は動き出す。

 何度も、何度も同じ世界を繰り返して。

 そして『黄泉帰り』の弊害である記憶の混濁が現れ始めた、六十七度目。

 一条明は、この世界のどこにもリリスライラの残党が残っていないと結論付けた。






(……この方法じゃ、無かったのか?)


 六十八度目。

 憔悴しきった明は、解決策の見えない目の前の問題に頭を抱えていた。

 暴走する蒼汰から逃げながら、横浜一帯を探し回った。

 横浜にはいないことが分かってからは、徐々にその範囲を伸ばして周辺の街を探しまわった。

 そうして幾度となく世界を繰り返した先にあったのは、もうこの世界のどこにもリリスライラの残党は居ない、という結論だけだった。



(それじゃあ、どうして……このシナリオは止まっているんだ?)



 もはや、どうしてこのループをし始めたのか目的も分からない。

 ただただ、あの子を救いたいという気持ちだけで明はこの時間軸を繰り返し続けている。それが自分にしか出来ないことだと思っている。


(このシナリオをクリアすれば、きっと、蒼汰が救われる)


 はたして、本当にそう思うか?

 明は自分の中で囁く誰かの言葉を聞いた。それが『第六感』による否定の言葉であることは分かっていた。


(でも、そのクリア方法が分からない。リリスライラの残党が居なければ、この数値もこれ以上増えることがない)


 ……いいや。本当はもう分かっている。

 一条明は、このシナリオのクリア方法を知っている。かつて取得し、これまでも判断を下す材料となってきた『第六感』も同じことを言っている。



「…………っ」



 明は唇を噛みしめ、俯いた。

 もはや嫌でも認めざるを得なかった。

 最初から分かっていたのだ。

 この特殊シナリオの進行は、蒼汰の生存と矛盾しているということに。

 蒼汰は、リリスライラの目的そのものだ。蒼汰が生きていることはすなわち、リリスライラの目的が途絶えず続いていることを意味している。

 仮に自我を取り戻して元の身体に戻れたとして、その中にあるのは魔王と名のつく爆弾だ。またいつ暴走するかも分からないその身体では、今までと同じように過ごしていくことも出来やしない。



(だから、あの子の中にある物が取り除ければと思った……! それが出来ればきっと、どうにか出来るって…………そう思ってた)



 けれど、その方法が見つけられない。

 いやそもそも、そんな方法は存在していないのかもしれない。

 『第六感』スキルが反応する。

 白の絵具に混ぜた黒の絵具を、別に分ける方法がないように。

 清水蒼汰という存在に混ざった異物はもう取り除けないと、そのスキルが言っている。


(違う。違う違う違う……!! きっと何か方法があるはずだ。きっと俺がまだ見つけきれていない何かが……どこかに……)


 所詮、スキルの判断だ。

 それが絶対に正しいなんて保証はどこにもない。

 だから、もう一度だけ。

 もう何度かだけ試したい。

 この世界のどこかには、あの少年を救う方法がどこかにあるはずなのだから。











 そして通算ループ100度目。

 一条明は、この世界のどこにも清水蒼汰を救う方法がないことを、ようやく認めた。


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