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この世界がいずれ滅ぶことを、俺だけが知っている  作者: 灰島シゲル
五章

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VS ニコライ①

 


「やってみろよ」


 明が駆け出した。

 距離は再びゼロになり、ニコライに向けて剣が振るわれる。



「『影渡り』」


 が、その刃はニコライには届かなかった。男の姿が突如として足元の影に吸い込まれて消えたのだ。



(消え―――!)



 直後、全身の毛が一気に逆立つ。

 それが『危機察知』スキルによる警告だと気が付いた時には、明はすでに上体を大きく逸らしていた。

 ひゅっ、とした銀閃が直前にまで明の頭があった場所を掠めた。



「良く分かりましたね」


 いったい、いつの間に移動したのだろうか。明の背後にいたニコライが、僅かに驚いた表情で呟いた。



「今のは確実に入ったと思ったのですが……なるほど。これも予想済みというわけですか」

(馬鹿言え、今度は初見だよ!)


 明は心でそう叫ぶと、ニコライへと蹴りを放った。放たれた蹴りはニコライに止められる。


「くッ」


 ダンッ!

 すぐに地面を蹴って明が回転した。『軽業』スキルが瞬く間にその姿勢を制御し、空中で態勢を整えた明が、その回転のエネルギーさえも威力に変えて、一撃必殺の踵を落としにかかる。



「『防護(プロテクション)』」


 ニコライが唱えた。瞬時に放出された魔力がニコライの身体を覆って、瞬く間に防御の膜を形成する。

 ガァンッ!!

 ニコライの身体を覆う魔力と、明の放った踵が衝突した。

 衝撃で地面が砕けるが、その中心に立つニコライは無傷だ。表情には笑みさえみられ、既に超人の域に達している明の攻撃を前にしてもその余裕は崩れることがなかった。



「今度はこちらの番です」


 ニコライが呟き、ゆらりと持ち上げたその片腕を明の顔へと近づけた。



「―――!!」



 明の『危機察知』が発動する。

 ただ顔に手を近づけられただけなのに、その手に触れてはならないとスキルが最大限の警告を放ってくる。



(間に合わない!)



 攻撃を受け入れようと、明が奥歯を噛みしめた。その時だ。



「ッ!」



 ニコライの手が飛来した何かに弾かれた。

 攻撃の正体は、彩夏が投げた短剣だった。解体用に所持していたものを、どうやら咄嗟に投げたらしい。短剣はニコライの皮膚に弾かれたが、それでも一瞬の隙を作り出すには十分だった。


「ナイス!」


 明が地面を蹴って、瞬時にその間合いから抜け出した。すると、そんな明と入れ違うようにして『疾走』を発動させた龍一が突っ込んでくる。


「『神穿ち』!!」


 龍一が、二対の短剣で目にも止まらぬ速さで突きを繰り出した。

 明と初めて会った時に、サハギンチーフに向けて龍一が繰り出していた技だ。だが、その威力は以前見たものより劣っている。


「チッ、槍じゃねぇから流石に無理か!」


 どうやらスキルは不発で終わったらしい。ただの突き技となってしまったのか、龍一が顔を歪めながら呟いた。

 すかさず龍一がその場から離脱しながら注意を促してくる。



「気を付けろ! コイツの能力は『強奪』だ。手に触れられたヤツは、持っているスキルを奪われるぞ!」

「スキルを奪う!? そんなのチートじゃん!」

「だったら触れられなければいいだろ!!」


 彩夏の叫びに、奈緒が魔導銃を構えて答えた。



「『衝撃矢(ショックアロー)』」



 放たれた魔法がニコライに直撃する。



「ぐぅううッ!」



 初めて与えたダメージだ。放たれた魔法の衝撃に耐え切れなかったのか、足元をふらつかせたニコライが呻きを漏らした。



「おぉおおおッ!!」



 そこに、明が駆け込んだ。否、()()()()()()()()()()

 おそらく奈緒が魔法を放つと理解していたのだろう、すでに攻撃の体勢を整えていた明は、頭上に振りかざした両手剣を渾身の力で振り下ろした。



「が―――ッ!」



 切り裂かれたニコライの胸元から血が舞った。モンスターと同じ、どす黒い血だ。

 男は墨のように黒い血をボタボタと溢しながらたたらを踏むと、ニヤリと笑って明を見据えた。



「やはり、一番厄介なのはあなたですね。あなただけは、何としてでも動きを封じなければいけません!! 『影牢』!!」



 ニコライの足元の影が、一気に蠢いた。

 影は一気に明を包み込むと、その身動きが取れないように強固な檻となってその身動きを封じてくる。



「くっ!」



 明が檻を破ろうと剣を振るった。

 ガァン!

 檻が硬い音を響かせる。斬れている様子はない。影の檻そのものにニコライの魔力が宿っているため、ただの斬撃では断ち切れないのだ。



「無駄ですよ。その檻は、魔力を断ち斬るほどの威力が無ければ絶対に破れません」


 檻の中の明を見つめて、ニコライが薄く笑った。



「そして、今のあなたは魔力がない。もう逃げられませんよ」

「クソッ! 一条!!」


 奈緒がショックアローを発動し、檻にぶつけた。

 だがその衝撃でも檻は壊れない。


「あたしも手伝う!」


 奈緒に続き、彩夏もまた魔法を発動させた。次々と炸裂する魔法が明を捕らえた檻を揺るがすが壊れる気配がなかった。

 ニコライは必死になる奈緒たちを見て声を上げて嗤う。



「くふっ、はははは! 無駄無駄、無理ですよ!!」


 その瞬間だった。

 ニコライの胸元へと、突如として短剣が突き刺さった。



「なっ!?」



 短剣の主は、柏葉だ。どうやら戦闘が始まってすぐ『隠密』で離脱し、アーサーの亡骸から彼の短剣を手にして戻って来たらしい。

 攻撃したことによって『隠密』が解除された柏葉は、ニコライの視線を受け止めると手にした短剣にグッと力を入れて、思いっきり引き抜いた。



「―――…では、あなた自身を攻撃すればどうなるんでしょう?」



 柏葉がニコライの傍から離脱しながら呟いた。

 そこに奈緒の魔法が入れ違いでニコライへと炸裂し、凄まじい衝撃となって土煙を巻き上げる。



「ナイスだ柏葉さん!」

「いえ、それよりも」


 ちらりと柏葉がニコライへと目を向けた。


「状況的に、かなりマズイです。一条さんが欠けた今、私達には決定打がありません」

「その短剣でどうにか出来ないの!? 今だってニコライの皮膚を貫通出来てたじゃん!」

「あれは、一条さんが付けていた傷の上から刺しただけです。追い打ちをかけた形にはなりましたが、致命傷にはなりません」


 彩夏の言葉に、柏葉が首を振る。


「何としてでも、一条さんを解放しないと」

「それがあなた達に出来ますか?」



 土煙の中から、ニコライが歩みながら現れた。明や奈緒と同じ『自動再生』のようなスキルを持っているのか、はたまた彩夏のような『回復』系統のスキルを持っているのか。男の胸元にあった傷が、いつの間にか消えている。

 ニコライは胸元に残る血の跡を拭き取るように手で払うと、ニコリとした笑みを浮かべた。



「スキルも未熟、ステータスも未熟。何もかもが未熟なあなた方だけで、何が出来ますか?」

「……はっ、舐めるな」


 ニコライの言葉に奈緒が笑う。


「確かに、私達は明に比べれば弱いさ。でもな、時間稼ぎと足止めぐらいなら十分に出来る」

「なに?」



 怪訝な顔で呟いたニコライが、ハッとして振り返った。

 視線の先に、獣が居た。

 否、それは妻子を奪われた復讐に心を燃やす夜叉の姿だった。

 男はすでに攻撃動作に入っている。

 両腕を頭上に構え、密かに研いだ牙を突き刺すように。男は体内で練られた魔力を限界にまで刃に乗せている。




「『魔力』」


 構えた刃へと魔力が収束し、



「『連撃』!!」



 振るわれた刃の連撃によって解き放たれた魔力の渦が、斬撃を飲み込んで爆発した。


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