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この世界がいずれ滅ぶことを、俺だけが知っている  作者: 灰島シゲル
五章

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目には目を


前話「失格」の最後に2000文字ほど加筆してます。

今回は加筆の続きとなってます。



「現状を一度纏めよう」


 蒼汰が泣き止んで、しばらくしてからのことだ。

 明達は今後の方針を固めるべく、龍一も交えて今後の話し合いをしていた。


 龍一によって得た情報は、柏葉や彩夏にもすでに共有している。


 当初は龍一の蒼汰に対する態度に難色を示していた彼女たちも、龍一の体験した出来事を聞いて、彼の境遇にある程度の納得もしたようだ。今では龍一が蒼汰と向き合ったことで良しとしたのか、以前のような不機嫌さも見られず龍一と言葉を交わしていた。


 そんな中、龍一が口を開いた。



「連中に見つかれば蒼汰が狙われる。かといって、このまま手をこまねいていても仕方がない。タイムリミットが決まっている以上、何かしらの行動を起こさねェと蒼汰が化け物に変わっちまう」



 そう言って、明を見つめる龍一の膝の上には蒼汰が乗っている。蒼汰は龍一と和解したことがよほど嬉しいのか、あれからべったりと龍一にくっついたままだ。


 龍一の言葉をあまり理解していないのか、「ぼく、変わるの?」と龍一の膝の上で蒼汰が首を傾げている。それを見た龍一が「変わらないよ」と蒼汰の頭を優しく撫でた。



「そうです。同時に、それは俺たちの敗北条件でもあります。不完全とはいえ、仮にも魔王です。あの異常なステータスを持つ化け物に、どう足掻いても勝つ見込みが今はない」

「ギガントの数倍、だっけ。まあ普通に考えて無理だよね」


 口の中で棒キャンディを転がしながら彩夏がため息を吐いた。


「オッサン……っと、もうオッサンが二人か。えーっと、一条のオッサンが一撃でやられたってことは、あたし達の誰も勝てないわけだし。仮にだけど、一条のオッサンが『疾走』とかのスキルが使えたらどうなの? 勝てそう?」

「無理だな。仮に使えてたとしても、あの化け物には勝てない。数値が足りてない」

「それじゃあ、戦闘は無しだね。となると、やっぱり方針としてはその子をどうにかするしかないか」



 当てはあるの? と彩夏が明を見つめる。

 その視線に、明は小さく頷きを返した。



「龍一さんの話と、これまでのループで分かったことからの推測になるけど……。蒼汰を元に戻す鍵を握っているのは、ニコライだ」

「ニコライ? 誰ですか、その人」


 明の言葉に柏葉が首を捻った。

 いや、柏葉だけじゃない。奈緒も彩夏も、明が口にしたその人物の名前に首を傾げている。

 彼女たちが不思議がるのも無理もない。なにせ、今の彼女たちはまだあの神父に出会ってすらいないのだ。


 そのことを失念していた明は、彼女たちにニコライという男のことを説明する。



「――と、まあそんな感じだ。()()奈緒さんが言うには、ニコライってヤツが蒼汰に血を流し込んで化け物に変えていたらしい」

「なるほどな。化け物に変える方法を知っているならその逆も知っているかもしれない、ということか」



 思案顔で奈緒が頷く。



「ちなみにだけど、そのニコライってヤツは――()()()()で良いんだよな?」



 続けて口にした確認の言葉は、龍一に向けられていた。

 龍一は頷く。



「ああ。アイツは間違いなく()()()()だ」

「実際、あっち側の人間はどれぐらいいるんだ?」

「俺が知っているだけでも数十人……。この街にいるリリスライラのほとんどが、あっちから来た人間だ」

「アーサーは?」

「アーサー? …………ああ、あのオヤジか。アイツは俺たちと同じ()()()()だ」



 どうやら龍一はアーサーとも面識があるらしい。奈緒の言葉にそう言って頷くと、視線を彷徨わせる。



「アイツは、俺と違って抜ける気がないだろうな。……連中の嘘に縋りついている。いや、むしろ連中の嘘を信じることで、辛うじて自分を保てている。連中の嘘が無ければ、アイツはとっくに心を壊していた人間だ」



 アーサーのように、家族を失う痛みが分かるのだろう。

 龍一はそういって小さな吐息を吐き出すと、視線を明へと向けた。



「ニコライを相手にするなら、リリスライラっていう集団との戦いは避けられない。一度、連中と戦ったお前なら分かると思うが……。連中は手強いぞ? なにせ俺たちとは違って、モンスターが当たり前のように存在していた異世界で生きていたような奴らだ。連中の味方をするこちら側の人間も、『ヴィネの寵愛』スキルによって大幅に強化されている。策もなくぶつかれば、全滅するだけだ」

「何か、方法はないの? スキルによって強化されてるなら、最初から強かったわけじゃないんでしょ?」



 彩夏が龍一に聞いた。

 その言葉に、龍一が躊躇うように口を開く。



「……一応、方法はあった。だが、その方法はもう出来ない」

「どういう意味?」

「連中が異世界から来たと言っただろ。早い話が、連中もモンスターと同じなんだよ。どういう仕組みなのかは分からないが、()()()()()()()()。世界反転率が1%未満ならそこまでの力はなかったはずだが……。今じゃあ、連中も本来の力の一部が使える状態だ。今から連中を弱体化させる方法なんて、存在しない」



(連中が、モンスターと同じく異世界から来たって聞いた時に可能性としてはあり得るとは思っていたけど……。やっぱり、そうだったか)



 モンスターだけでも厄介だというのに、異世界から来た人間も世界反転率が増すごとに力を増していく。

 その事実に、明は眉間に皺を刻むと重たいため息を吐き出した。



(となると連中の存在を後回しにすることも出来ない、か)



 モンスターとは違って知性がある分、厄介だ。

 現状を理解すればするほど、こちら側の不利が際立ってくる。

 明は沈みかけた気持ちを振り払うように頭を横に振ると、気持ちを切り替えた。



「…………それでも、やるしかない。俺たちが生き残るには、この状況をどうにかしないといけない」

「それは、そうですけど……。でも一条さん、方法はあるんですか? 相手は今の一条さんでもやっとの人達なんですよね? それが何十人もいるのに、どうやって相手をするつもりですか?」



 不安そうに柏葉が言った。

 その言葉に、明は思案顔になる。


 柏葉の言うことはもっともだ。今の状況は、これまで相手にしていたボスモンスターとは違う。何度も死んで、レベルを上げてどうにかなるような話でもない。



(相手は多勢……。例えるなら、今からやろうとしていることは何十匹ものボスモンスターを一度に相手しようとしているようなものだ。『黄泉帰り』を使ってレベルを上げて、試行錯誤を続けるのにも限界がある……。もっと根本的に、連中の力を削ぐ方法を考えないと……)



 ぎゅっと瞳を閉じる。

 これまでに経験してきたことの全てを思い出す。

 何か方法はあるはずだと、明は思考を巡らせる。


 ――そして、ふと。


 明はその方法に辿り着いた。




「…………ある。連中を弱体化させる方法が、一つだけあります」

「え?」



 明の言葉に、その場に居た全員の視線が向けられた。



「何か思いついたのか?」

「目には目を。歯には歯をってヤツですよ」



 首を傾げた奈緒に向けて、明は悪戯を思いついた子供のようにニヤリと笑った。


明日も更新します。

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