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『祈現の碧』Prevalent Providence Paradigm  作者: 宇喜杉ともこ
第3章 華隷彌─カレイド
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#5 第2節

 

 幸斗の精神は深く沈み、鏡の世界で幽閉された。

 

「困ったなぁ……本当はすぐにでも帰りたいところなんだけど……あのコたちを放っておいたままってのはマズいよね……」

 

 美那萌は顎に指を当てながら思案していた。

 本来の予定ではわざわざ精神を隔離せずに彼らを彼女のものにしようとしていたのだが、どうやら美那萌の能力は三人には効果が効きにくいようだった。

 その結果として今、美那萌は怪異の鏡に閉じ込める手段を取り、彼らの意識に細工をしている。

 

「じゃあどうしよっか。流石に三人まとめて運ぶのはできないし……一人ずつじゃ時間がかかっちゃう。んだけど…………あれ?」

 

 唐突に浮かび上がる疑問符。視線は地面に臥した幸斗の方だ。

 

「今、動いたように見えたんだけど……おかしいな? 気のせいかな?」

 

 美那萌はゆっくりと慎重に目を凝らして幸斗の方へ近づいていく。

 幸斗の腕が痙攣したかのようにピクピクと動き始めた。

 

「うわ、信じられない。本当に動いてる。なんで?」

 

 彼女が状況を飲み込もうとする間にも幸斗は身体を動かし、立ちあがろうとしている。

 理由がわからない。確かに幸斗の精神は鏡の中だ。それなのにどうして今目の前にいる男は立ちあがろうとしているのか。——美那萌は慄いた。

 

 それよりも今は——理由を考えている場合じゃない。彼が今にも立ちあがろうとしている。何をしてくるかなんてわからない。だったら今すぐに、阻止しなければ……ッ!

 

 美那萌は慌てて踏み込み、幸斗に駆け寄る。

 鏡を中空に出し、狙いを定めて幸斗の方へ光線を発射する。

 

「————ッ⁈」

 

 美那萌の攻撃は届かなかった。

 

 光は碧水によって直角に曲がり、幸斗の身体から離れていく。

 ゆっくりと立ち上がりながら、幸斗は指一つ動かさず碧水を操る。


 顔は俯いたまま、鋭く美那萌を見つめていた。

 

「なんなのコイツ……さっきより強い!」

 

 まだ少しの動きしか見ていないが、それだけで十分に感じ取れるほどのはっきりとした違いがあった。

 

 幸斗が歩き出す。美那萌は焦りつつも鏡を展開して応戦するが、鏡が現れた瞬間に幸斗の碧水がその悉くを粉砕した。

 

(まずいっ……!)

 

 美那萌は瞬時に後退し距離をとった。

 まるで人が変わったかのように動きが違った。能力の出力も精度も段違い。

 このままではやられるのは自分だ——美那萌はそう感じ取った。

 

 鏡を上方に展開し、光を降ろす。前回と同じように奇襲を試すが彼の動きのキレは美那萌を視界に捉え続けていた。

 

「きゃっ……!」

 

 入ろうとした鏡が破壊された。

 

(ダメね……通用しなくなってる。やっぱりここは逃げるしかない……!)

 

 展開した鏡を盾にして美那萌は逃走を図った。

 次々と破砕されていく鏡、彼女のエネルギー消耗は半端なものではない。

 だが、相手もそこまで必死には追ってこなかった。

 

「————今回は痛み分けね」

 

 そう呟きながら美那萌は屋内駐車場から飛び降り、何処へと消えた。

 

 天井から滴る碧水が幸斗の肩や髪を濡らす。

 彼はこれ以上追うことはしなかった。

 踵を返して荒志郎の方へと向かう。

 その姿は、まるで雨の中で喪に服すかのように暗澹とした空気を溢していた。

 

 

これで連日投稿は最終日です。

これからはまた不定期で更新していくので、引き続き応援をお願いします。

また、更新に関する情報はXでお知らせしていますのでそちらでご確認下さい。

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