第58話 彼女の為に俺は変態になる
琳加は俺の上着を執拗に嗅ぎ終えると、やはり聞いてきた。
「今日の事なんだが……朝宮たちに聞いても教えてくれなくてな。とにかく、『もうリツキには関わるな』の一点張りで……どうして喧嘩したんだ?」
「それは――」
理由を話そうとする蓮見を俺は手で制した。
琳加がどう思うのかは分からない。
番長の力でビンタされたら首の骨が折れるかもしれんが、蓮見が恥をかかないで済むなら首の1本や2本は安いもんだ。
「実は、俺が学校でエロ本を持ってるのが朝宮さんたちに見つかったんだ……」
「んなっ!? エロ本だと!?」
琳加は俺の話を聞くと大声で復唱した。
琳加さん……住宅街なので声は抑えてね。
「な、なるほどな……確かにその……びっくりは、するかもな」
琳加は顔を赤くして頬をかいた。
てっきり軽蔑されるかと思っていたのに、琳加は意外と落ち着いている。
「――だが私は大丈夫だぞ! そういうのは理解があるからな! お姉ちゃんにも……お、男の子はそういうものだって聞かされているし……そんなことくらいでリツキを嫌いになったりなんてしないぞ!」
琳加はそう言ってくれた。
俺は安心して通話ボタンに指をかけた119の番号の入ったスマホをしまう。
ありがとう、まだ見ぬ琳加のお姉さん……でもカツラはもう借りなくても大丈夫です。
「と、ところでだっ! リツキが持っていたのはどんな内容のエロ本だったんだ!? 参考に――じゃなくて朝宮がどういうのを見て怒ったのかを知りたくてな」
琳加は鼻息を荒くすると取り調べを始めた。
「あぁ、聞かないほうがいいぞ。かなりハードなやつだ」
なんか脅迫物が多かったな。
蓮見にはそういうのに興味を持ってると思われているんだろうか?
俺はどちらかというと、いつも脅迫されているがわなんですが……。
「な、何だとっ!? ハードなやつか……。よ、よしリツキ! 欲求不満で我慢が出来なくなってきたら最初に私に言ってくれよ! 私はなんでもリツキの力になるからな!」
「は、はい……そうします」
きっと琳加に相談するときは俺が引導を渡される時なのだろう。
蓮見の優しい気遣いのせいでド変態の称号を頂いてしまった俺は心の中で泣いた。
短くてすみません!毎日投稿は続けます!
【感謝】
昨日は、『ギルド追放された雑用係の下剋上』のコミカライズに多くの方が読みに来てくださってありがとうございました!
おかげさまで、瞬間的にニコニコ静画でランキング総合一位にもなりました!(ヤバい)
陰キャボーカルもアイドル編はもうクライマックス!
終わったらまた新章に突入予定なので、最新話を追いかけ続けてもらえると嬉しいです!





