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第27話 不良が優しい一面を見せるとキュンとなる

 

 琳加は朝宮さんを連れて視聴覚室へと連れて行った。

 ここなら誰も来ないから2人きりになれると思っての事だろう。


 朝宮さんは全身をビクビクと震わせながら腕を組んで仁王立ちしている琳加を涙目で見つめる。


「――あ、あの……すみません。アイドルとか言って調子に乗ってました……な、殴るなら顔以外をお願いします。他のメンバーには手を出さないでください……」


 ――いや、朝宮さん滅茶苦茶怯えちゃってるんですけどぉ!?

 確実に誘い方間違えてたよね!?

 琳加の言葉が俺の耳には「お前を殺す」って聞こえたんだけど!?


 俺たちは視聴覚室の扉の横で身を隠し、震えながら2人の様子を見守っていた。

 本来の予定なら、琳加が一人で朝宮さんから事情を聞き出す予定だった。

 しかし、琳加の誘いだす様子がおかしかったので不安になり、俺たちも付いてきたのだ。


「す、須田君……朝宮さんが殺される前に私達が止めに行った方が良いんじゃ――死体が増えるだけだと思うけど……」

「いや、待て、琳加を信じるんだ! あいつは心優しい猛獣のはずだから! 多分、獲物を狩る時も優しくゆっくりと殺すタイプだから!」

「それ、逆に残虐なんじゃ……」


 蓮見と一緒に震えていると、椎名が突然立ち上がった。

 椎名……もしかしてお前が琳加を止めに――


「須田君、蓮見さん……ごめん。友達が呼んでる……」


 それだけを言い残して、全力疾走でこの場を立ち去る椎名を俺たちは呆然と見送る。

 いや、あいつに友達なんているはずがない。


「あっ、くそっ! 椎名の奴怖くて逃げやがった! この薄情者! ミステリアス美少女!」

「す、須田君! 琳加さんが朝宮さんに近づくよ!」


 蓮見の呼びかけに目を向けると、琳加が朝宮さんに迫っていた。


「――はっ! 殴るわけねぇだろ? アイドルだか何だか知らねぇがへらへら笑いやがって。それで他の奴らは騙せても、私は騙せねぇぞ?」

「ひぃぃ!?」


 そう言って、琳加は朝宮さんを壁まで追い詰めて、朝宮さんの顔の横に荒々しく手を付いた。


 もう完全に朝宮さんを脅しにかかっている。

 琳加がなんで暴走しているのかは分からないが、このままじゃマズイ!


「よし、蓮見! 俺が琳加にボコボコにされている間に朝宮さんを連れて逃げるんだ!」

「う、うん――!」


 俺は男らしくそう指示をして飛び出そうとする。


 ――琳加は朝宮さんのアゴに手を当てて、自分の顔に近づけるように軽く持ち上げた。


「何か困ってる事があるんだろ? 他の奴はそんな作り笑顔で騙せても(リツキに教えてもらったから)私はそうはいかない。ここは誰も使っていない教室の隅だ、私以外に聞く奴はいない……その抱え込んだ悩みを打ち明けてくれ」


「……へ?」


 ――あれ?

 流れ変わったな……


 俺は飛び出そうとする足に急ブレーキをかけて、続きを見守った。

 というか、あの状態って……


「須田くん、アレって――」


「いわゆる『壁ドン』ってやつと『(あご)クイ』ってやつだな……琳加は特に意識してないだろうが」


「凄い……漫画以外で初めて見た……。凄く綺麗で興奮する……鼻血出そう」


 琳加は朝宮さんの頭に手を置いて優しく微笑む。


「お前が心から笑顔を見せてくれないと、(リツキが心配するから)私が困るんだよ。(リツキがお前に興味を持って欲しくないから)朝宮がいつも通りの笑顔を見せてくれるように、私で良ければ力になるからさ」


 何だあのイケメン。

 あれ、俺今宝塚でも見てるの?


 朝宮さんはとろけそうな表情で顔を赤くして琳加の笑顔に目を奪われる。

 そしてその目には少しずつ涙がにじんできた。


「う……うぅ……琳加さま……! うわぁぁ~ん!」


 そして朝宮さんは琳加の胸に泣きついた。

 琳加は少し困惑したような表情で朝宮さんを受け止める。


 いや、乙女ゲーのキャラかよ。

 あんなことされたら誰でも惚れるわ。

 あいつ、変にキモい事言わないで普段通りに女子に接すれば落とし放題なんじゃないか……?


 蓮見は隣で「百合、尊い……」と一言呟いて2人を拝んでいた。


コミカライズ・書籍化に関しまして

沢山のお祝いのお言葉、有難うございます!


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― 新着の感想 ―
[良い点] これDV夫が怖がらせてから優しくするあれじゃあ...
[良い点] 琳加... イケメンすぎますね!!! だから沢山惚れる人がいるのですね!
[気になる点] ガチレズの存在以外は本当に名作なんですが、どうにかならないでしょうか。
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