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器用貧乏とモームの告白

そのうちクリスかモームの視点の話を入れたいなとか思ったり。

あと感想についてなのですが、全然返信出来ていませんがきちんと全て読んではいます。ただ、全てに返信する余裕が無いので、今度幾つか質問をピックアップして活動報告でお答えしようかなと思います。

 



「モーウ、モウモウ。モーウ、モウモウ」


 泣いているモームに回復魔法を掛けながら、ハルトは安堵の溜息を吐いた。斧を弾き飛ばされた時は、割って入ろうかとかなり迷った。クリスが止めなかったら、ハルトは飛び出していただろう。


「泣くなモーム。よく頑張ったな」


 ハルトはモームを宥めようとようとするが、いっこうに泣き止まない。


「……死ぬかと思いましたぁ。あと、凄く痛かったですぅ」


 ぐずるモームをあやしていると、クリスがクスクス笑いながら歩いてきた。


「おめでとう、モーム」

「ク、クリスさぁん」


 モームはクリスに抱きついて泣きじゃくる。


「モーウ、モウモウ」

「よしよし、頑張ったね」


 抱き合う二人を見ながら、ハルトはやれやれと肩を竦めた。





 どのくらい時間が経っただろうか、モームが泣き止んだタイミングでハルトは口を開いた。


「さて、落ち着いたところでステータスを確認してみろ」

「? はい。そうですね、レベルが上がっているかもしれませんし」


 モームは若干不思議そうにしながらも素直にステータスを開いた。


 ピコン!


 ――――――――――――――――――――


 モーム 17歳 牛人族 女 LV21

 STR:180

 AGI:100

 VIT:200

 MP:50

 SP:500


 称号

 不壊(ふえ)


 魔法適正

 なし


 アビリティ 

 なし


 ――――――――――――――――――――



「わぁ! レベルが20を超えました! 能力値も凄く上がってますよ! あれ? ……何か称号があるんですけど」


 初めは嬉しそうに報告していたモームだったが、最後の方になると声が震えていた。


「何て称号だ?」

「えっと、不壊です」

「よし、予定通りだな」


 ハルトがニヤリと笑う。この称号こそが、ハルトがモームに習得させたかった称号なのだ。


 ――――――――――――――――――――

 不壊

 VIT強化・全属性耐性・装備品の耐久性向上

 ――――――――――――――――――――


 称号の効果的には、大河の鉄壁に近い。多少毛色が違うだけで、防御系の称号の中では

 鉄壁と双璧を為す強力な称号だ。


「す、すごいです」


 モームは自らの称号の凄さに驚いている。自分のことを弱い、弱いと思っていたモームにとっては、称号の習得は青天の霹靂だった。


「まあ、このために一人で戦わせたんだけどな」


 ハルトが仮定成長鑑定で見たモームの成長の道筋の一つ。それが、ソロでダンジョンのボスを倒すと称号不壊を習得するというものだった。当然他にもモームが強くなれる道筋はあった。しかし、不壊の習得がモームの一番強くなれる道筋だったのだ。


「そ、そうだったんですか!?」

「俺にはある程度、人の素質がわかるのさ」

「え?」


 ハルトの秘密を知らないモームは詳しく聞こうとしたが、クリスが口を挟んだ。


「さあ、頑張ったモームにご褒美タイム」

「え?」

「ん?」


 突然のクリスの言葉にモームとハルトが首を傾げる。


「モームは頑張ったんだから別にいいでしょ、ハル?」


 満面の笑みのクリスにハルトはダメとは言えない。「ああ」とぎこちなく頷くだけだ。


「じゃあモーム。何でも好きなことをハルに頼みなさい」


 パチリとウインクされたモームは、これがクリスのアシストであることに気がついた。


「本当に何でもいいんですか?」


 モームはクリスに感謝しつつ、恐る恐る上目遣いでハルトを見た。

 不安そうに見上げてくるモームにハルトはノーとは言えなかった。どうやらハルトはノーとは言えない日本人のようだ。


(まあ最悪でも奴隷から解放して欲しいとかだろう。大丈夫、大丈夫)


 どうにも嫌な予感がするハルトだったが、心の警鐘を無視してモームに頷いた。


「じゃあ、ご主人様のことを教えて下さい!」

「はぁっ!?」


 ハルトの顔が引き攣った。最悪の事態なんて想定するだけ無駄なのだ。悪いことに上限など無いのだから。


「ご主人様は色々と秘密がありますよね? それを教えて下さい!」

「ど、どうしてそのことを?」


 興奮してにじり寄ってくるモームに、ハルトは冷や汗が止まらない。


「私クリスさんに聞いたんです。ご主人様がどんな人なのか」

「っ!?」


 ハルトがバッとクリスの方を向くが、クリスは肩を竦めているだけだ。


「でも詳しくは教えて貰えなくて」


 ハルトはふぅーと息を吐き出した。


(俺がいる時にそんな話をするわけないから夜か?)


 ハルトは毎日イウザの屋敷に偵察に行っていたので、モームはその隙にクリスと話し込んでいたのだ。


「何で俺のことを知りたいんだ?」

「初めは捨てられないように、気に入られる為にクリスさんに聞いたんですけど。クリスさんから話を聞くうちに、純粋にご主人様のことを知りたくなりました」

「クリスから何を聞いたんだ?」

「クリスさんとの馴れ初めとか、その後に良くしてもらったこととかです」


 確かに肝心な所は言っていない。言ってはいないのだが、ハルトはジト目でクリスを見た。クリスは微笑んでいるだけだが。

 ハルトは嘆息しながら


「聞いたら後戻りは出来ないぞ」


 と脅すが


「構いません」


 モームはぶれない。


「今なら奴隷から解放してやることも出来る。今のお前なら冒険者としてやっていけるだろう。それでも聞きたいか?」

「はい。私は一生ご主人様について行くと決めました。奴隷を一人でダンジョンで戦わせるような酷いご主人様ですけど、なんだかんだ言って優しいのも知っています」


 モームは真っ直ぐハルトを見つめる。その瞳に穢れは無く、とても生き生きした瞳だ。とても出会った時のような死んだ魚のような目をした小汚い奴隷には見えない。


「私はご主人様が好きです」


 モームの笑顔と共に紡がれた言葉が、ハルトの胸を揺らす。


(これは勝てないかな)


 ハルトは負けを認めた。別に勝ち負けがあるわけでは無いが、気持ち的にはモームに完敗だった。

 世界を呪った筈だった。自分を殺した世界の住人も殺したいほど憎んだ筈だった。でも一人は寂しくて、辛くて、自分の心を理解しないまま無意識のうちにクリスを助けて傍に置いた。後に自分が仲間を欲しているのがわかって、クリスと仲間になった。それで終わりだと思っていた。このままクリスとずっと二人きりで過ごすものとばかり思っていた。


(違ったな)


 モームによって新たなる可能性が示された。まだハルトが人と関わっていける可能性だ。


「ありがとう」


 ハルトは、そっとお礼の言葉を口にした。そのお礼は果たして告白についてなのか、それとも自分に新しい可能性を見出してくれたことについてなのか、それとも……。

 恐らくハルトが、そのことについて答えることはないだろう。


「じゃあ、俺の秘密を教えようか」


 なぜなら、きっと照れ臭がって答えないだろうから。




一巻発売を記念してちょっとしたアンケートっぽいものをやりたいと思います。

内容は伝説の武器について。本編に出す伝説上の武器を募集します。詳しくは活動報告をご覧下さい。

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