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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第二章 法術暴走事件

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第9話 嫌な街の思い出

「どうしたんですか?西園寺さん。さっきから黙り込んで。実戦経験豊富な西園寺さんなら死体なんて見慣れてるでしょ?」 


 急なかなめの変化に誠は戸惑った。そして、誠は思い出した。かなめの陸軍非正規部隊での仕事の中心が港湾地区だったことを。


「昔、任務で居た街なんだ。嫌な街だったなあって。……ただそれだけだ」 


 それだけ言うとかなめは席を立とうとした。それを茜が押し止める。


「かなめお姉さまの個人的感想はうかがってはいませんの。司法局の法術特捜協力班員として解決までご協力していただけませんか?」 


 茜の言葉は穏やかだが、その目の鋭さにさすがのかなめも押し黙って席に着いた。


「ただこう言う奇妙な死体が製造されているだけなら所轄の警察署の仕事のはずではないんですか?資料の分析程度ならこの人数でどうにかなりますけど、これだけの広さの地域を捜査範囲にするには……」 


 カウラの言葉にアメリアも大きく頷いた。島田とサラは相変わらず七つの変死体の写真を見比べていた。


「確かにこの人数でローラー作戦なんてやろうとは思っているわけはないのです。そんなこと司法局上層部の誰も期待していないでしょうし。ただこのメンバーならではの捜査活動をしたいと思ってますの」 


「この面子だと何が出来るんだよ」 


 重苦しいかなめの声に一同の顔が茜に向いた。


「わかんねーかなー。法術は展開すれば必ず反応が出るんだぜ。アタシや嵯峨警部、それか神前ならすぐに察知して駆けつけられる。そこを押さえる。それが今回の捜査のパターンだな」 


 これまで一人でかりんとうを食べ続けていたランの言葉で今度は誠に視線が集まる。


「でも、法術適性を持つ人を見つけてそれを暴走させる人が出てくるまで待つんですか?この範囲の法術発動を監視するなんて……」 


 誠のその言葉にあきれ果てたと言う顔のかわいらしいランの顔が見えた。


「馬鹿じゃねーか?この事件は誠が法術兵器をはじめて実戦で使用したのが確認されてから起きてるんだぜ。この死体を作ったのが組織だったら、神前は間違いなくこの事件を起こした組織に監視されてる。そのきっかけを作った神前が動けばこの死体の製造元が動き出すかも知れねーだろ?そうすりゃー何か手がかりでもつかめるかも知れねーからな」 


 そう言ってランは大きな湯飲みを手にした。誠は不安になってアメリアを見つめたが、その目が完全にランの外見年齢不相応の話し方に萌えていることに気がついて、いつでも取り押さえられるように力を込めた。


「そう言うことですわ。ともかくこれが何を意味するのかもまるで分からない。ただこの死体が現れたのが神前曹長の存在が全宇宙に知らされた時と言うこと。それが重要な意味を持つのは間違いありませんから」 


 そう言うと茜はラーナに端末の終了を指示した。



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