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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第十四章 官庁街と租界

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第83話 過去を気遣う仲間達

「アイツ等。気を使ってるつもりかよ……ばればれなんだよなあ!」 


 自虐的な笑いを浮かべたかなめは相変わらずタバコをくわえていた。


「別に僕は気にしていませんよ。今は西園寺さんは西園寺さんなんでしょ?それで良いじゃないですか?昔の任務の話なんて僕は気にしていません」 


「は?何が?童貞なりの気遣いか?気持ち悪いんだよ。それに気にしてない人間は気にしてないなんてわざわざ口にはしねえもんだ」 


 かなめはそう言うと立ち上がりテーブルを叩いた。


「アタシがあそこで娼婦の真似事をしたのは、租界での情報収集に必要だったからだ。それにアタシの体は機械だからな。とうにその時の義体は処分済み……と言ってもその時の記憶はこの脳の有機デバイスにしっかり保存されている訳だ」 


 そう誠にまくし立てた後、再び椅子にもたれかかる。誠はかなめの吐くタバコの煙に咽ながら頭を掻くかなめを見つめていた。


 誠はただ一人自分の中で納得できないものがあるようにいらだっているかなめに何を話すべきか迷っていた。


 だがしばらくの沈黙に根を上げたのはかなめだった。


「お前はお人よしだからな。流れでどうしようもなくて体を売ってた女って目で見るならそれも良いって思ってたんだけどさ。そんな哀れむような目でアタシを見るなよ。それだけ約束してくれればいい。アタシはかえでとは違う。アイツとは一緒にするな。趣味で男に抱かれてたわけじゃねえ」 


 かなめは携帯灰皿にタバコをねじ込んだ。


「きっとカウラさん達もそう思ってますよ。みんな知ってますよ、西園寺さんが良い人だって」 


 誠はかなめがどこまでも純粋な心を持っていると信じたかった。以前彼女の歌を聞いた時、彼女はそう言う人間なのだと思った自分を思い出していた。


「まったく……なんだかなあ!お人よしが多くてやりにくいぜ。租界の悪人共に抱かれてた時の方がもっと気楽だった」 


 ぼそりとそう言うとかなめはいつもの嫌味な笑顔を取り戻す。


「明日からはオメエとカウラで組んで動け。研究施設の規模の予想から湾岸地区のめぼしい建物のデータを送ってやる」 


「西園寺さんは?」 


 かなめは笑顔に戻っていた。誠の言葉に再びタバコを取り出して火をつけたかなめはそのまま片手を上げる。


「お子ちゃまと駐留軍や東都に事務所のあるやくざ屋さんを当たってみるよ。おおっぴらに司法局が動いているとなれば最悪でも研究の中断くらいには持ち込めるだろうしな」 


 そう言って立ち上がるかなめを誠は落ち着いた心持で見送っていた。



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