表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第十三章 個人的な、あまりに個人的な

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/206

第76話 かなめの過去を知る男

「それじゃあ行くぞ」 


 そう言ってかなめは立ち上がった。見事に数分でうどんを完食して見せた彼女に驚いて誠は顔を上げた。


「おい西園寺急ぐなよ。まだ食ってるんだから。オメーが食うのが早すぎんだよ」 


 そう言いながらランは最後の一すすりをした。その視線の先には湯気の上がる汁を吹くカウラがいた。


 かなめは仕方がないというようにどっかと椅子に座った。


「姐御、これから暇……なわけ無いっすよね」 


「そうだ暇なわけがねえな。たとえ暇だったとしてもテメエの面なんざ仕事でもなければ見たくもねえ。あの時は客だったから相手をしてやっただけだ。いい気になるんじゃねえぞ、バーカ」 


 三郎の言葉にぞんざいにそう言うとかなめはポケットからタバコを取り出した。気を利かせるようにライターを差し出す三郎の手を払いのけてかなめは自分のライターで火をつけた。


「昔は俺の方が火をつけてもらったもんですのにねえ」 


 三郎の言葉にかなめの表情はサディスティックな色を帯びる。


「アタシがタバコに火をつけてやった連中の多くは墓の下にいるからな。そうだ!今からでも遅くないから送ってやろうか?三途の川の向こう」 


 そう言って素早く拳銃を取り出すかなめに三郎は立ち上がって両手を上げて泣き顔を作って見せる。


「馬鹿は止めろ。食べ終わったぞ」 


 カウラが立ち上がるとそのままかなめは銃をホルスターに戻した。


「すまねーな大将。勘定はこの馬鹿で良いのかい」 


 そう言って足が届かない椅子から飛び降りてランがカウンターに向かった。


「なに、また来てくれよ。それよりサオリさんの上司だって言う小さいあんた。あんたの出は遼南だろ?」 


 店の親父はふてくされる息子を無視して小さなランのことをうれしそうに見つめる。さすがに誤解を解くのも面倒なようでランは照れ笑いを浮かべながら財布を取り出した。


「おー。やっぱり分かるか。うどんの食い方ひとつにもこだわるのが遼南人の心意気って奴だからな……おい!そこのチンピラ」 


 ランはそう言うと三郎を見上げた。三郎もかなめの知り合いと言うこともあり、その上司のランを子供を見る目ではなく真剣に見つめていた。


「人の売り買いは金にはなるかも知れねーが手の引き時が肝心だぞ。命は一つしかねーんだ。そこんとこよく考えろ」 


 親父とは違って三郎の目は真剣だった。ランのくぐった修羅場を資料で見せられている誠も二人の緊張した雰囲気に息を飲んだ。


「ご高説感謝します」 


 そんなランの言葉に三郎は皮肉たっぷりにそうやり返した。そしてその様子にサディスティックな笑顔を振りまきながら、肩で風を切るようにさっそうとランは店を出る。誠も三郎に追い立てられるようにして租界の道路に転がり出た。


「凄いですね、あの三郎とか言うヤクザ相手に一歩も引かないなんて」 


 店を出てずんずんと歩くランがそんな言葉を言った誠を振り向いた。いかにもあきれ果てたそんな表情が浮かんでいる。


「オメーなあ。自分の仕事が何かわかって言ってんのか?軍人は舐められたら終いだ……そんぐらい覚えとけ」 


 それだけ言ってランは骨董屋の前に止められたカウラの車に乗り込んだ。


「精進しろよ。新兵さん!」 


 かなめはそう言って誠の肩を叩いて続いて車に体を押し込む。誠は彼女が助手席のシートを戻すとそこに座った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ