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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第十二章 かなめのかつての任務

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第71話 人間の摂理と言うもの

「早く出せよ」 


 ランの言葉にカウラはアクセルを踏み込んだ。


「あれもまた人間の摂理さ」 


 路上で子供達が突然走り出したカウラの車に罵声に近い叫び声を上げていた。


「この街では暴力とカネ以外のものに何一つの価値も無いんだ。仕事でここに来ることはこれからもあるだろうからな、良く覚えておけ。まあそういう意味ではアタシ等の商売道具は暴力の方だがな」 


 かつてのこの地での任務を思い出しているのか、かなめの目が死んでいた。その隣で窓から外を見ているランの瞳もその幼げな面持ちとは相容れないような老成した表情を形作っていた。


「西園寺にしては的確な状況説明だな。ただ、私も今回ばかりは西園寺の言うことは正しいと思う。ここでは暴力がすべてを支配している。それだけは事実だ。暴力がこの街の法。それ以外の一切は価値が無い。そんな街に見える」 


 黙ってかなめの言葉を聞いていたカウラがバックミラーの中のかなめを見つめた。


「何言うんだよカウラ。アタシの説明はいつだって的確だろ?特にここはアタシのホームグラウンドだ。どんなところだって瞬時に案内して見せるぜ?どこに行きたい?パチンコ屋か?あるぜ、ここには何だってある。金と暴力で何とでもなる。それがここの真実さ」 


 そう言ったかなめの瞳に久しぶりに生気が戻った。カウラはそれに満足したように倉庫街のような道に車を走らせた。そこには廃墟の町で見なかった働き盛りの男達が群れていた。袋に入ったのは小麦か米か、ともかく麻袋を延々と運び続ける男達の群れ。周りではどう見ても堅気には見えない背広の男達が手伝うつもりも無く談笑しているのが見える。


「租界内外の物品の流通は制限されているんじゃないですか?あの人達が運んでるのはつまり……密輸品?」


 誠は堂々と密輸品が運ばれている現場に立ち会っている自分に驚いていた。 


「神前。西園寺の言葉を聞いてなかったのか?駐在部隊だって同じこの魔窟に巣食う住人なんだ。もらうものをもらえば見てみぬふりさ、それに仲良くお仕事に励むってのも美しい光景だろ?」 


 ランの皮肉の篭った言葉に誠は目を開かせられた。東都湾岸地区の急激な治安悪化により三年前に東和政府は同盟加盟国に軍の駐留を許可した。同盟会議の決議により駐留軍はその裁量の範囲内で必要な資材の搬入や輸送を独自に行う権利を与えられることになった。それがこの魔窟では明らかに部隊に必要な補給としては多すぎる量が倉庫に送られていった。さすがに軍の支援物資としては多すぎる量の密輸品の山に対して後ろめたいと感じているのか、付近には駐留部隊の兵士の姿は無かった。


「ここの物資がこの街を支えているんですね。こんな物資……どこをどうやったら合法なものに変わるんだろう?」 


 次々と運び込まれる穀物の入った麻袋がパレットにある程度積み上げられると。中の見えない木箱と一緒にフォークリフトで倉庫から建物の裏へと運ばれていった。その向こうでは冷凍貨物のコンテナが軍用の塗料のまだ落ちていない中古のクレーンに吊るされて巨大な倉庫に飲み込まれていくのが見えた。


 そしてそのどの作業にも生命力を吸い取られていると言うような姿の男達のうごめきが見て取れた。


「でもこんなに物資が?一体どこに?」 


 ただ誠はその圧倒的な物流の現場に圧倒されながら流れていく港の景色を見送っていた。


「物資の行き先?それはアタシ等の仕事じゃねーよ。東都警察か安城の機動部隊にでも当たってくれよ」 

 

 そう言ってランが小さい胸の前に腕を組む。その様子が面白かったようでかなめがまねをして豊かな胸に腕を押し付ける。そしてバックミラーに写る二人の様子にカウラが噴出した。


「何考えてんだ、オメー等は!」 


 そう言うとランは子供のように頬を膨らませた。もしこの顔をアメリアが見たら『萌えー!』と叫んで抱きつくほど幼子のようにかわいい表情だと思った誠は自分の口を押さえた。



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