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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第十一章 魔都と呼ばれる地

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第63話 命の値段の軽い街

「そんなに驚くこともねえよ。甲武だって東和の締め付けで薬物の取引なんぞの甘い汁を吸えなくなってからこの租界に派遣されているのは今じゃあ三流の部隊だ。地獄の沙汰もなんとやら、要するに見て通りのことが行われているってことだ。駐留軍の連中は相変わらず見て見ぬふり。世の中金さえあれば何でもできるのさ」 


 かなめの言葉を聞きながら誠はただ呆然と画面をスクロールさせた。


「でも法術師の研究とは関係ないんじゃないですか?それとも臓器売買のルートの解明に捜査範囲を拡大するんですか?」 


 誠は今回の犯罪とは別の犯罪を見つけ出したかなめにそう尋ねた。


「さっきのデータなんてこの街じゃ常識程度の軽いもんだ。他の画面も見てみろ……って時間ももったいねえしここじゃあ場所が悪いな。カウラ、車を出せ」 


 ランが端末のモニターをにらみながら指示を出した。カウラはアクセルを踏み、車はそのまま路地を走り出した。


「このまま租界に入るぞ。検問の同盟の駐留地まで行け」 


 そのまま誠は画面をスクロールさせていった。ようやく一番下まで来ると次の画面に移るためのカーソルが開いた。次の画面はさらに誠の顔をしかめさせるものだった。それはこれまでの文字だけの世界とは違うリストが表示されていた。


 それはまるでペットか何かのように子供の写真と値段が表示される画面。誠はこのサイトを作った人間の神経を想像して恐怖と怒りを感じた。


「おっと二ページ目か。まあ見ての通りだ。人身売買で特に血統重視。遼州系の人間ほど高い値がついている。これでアタシが何を探してきたか分かったろ?最近人気は遼州系の純血種か……明らかに誰かがそれを狙って買い漁ってる。恐らく今回のホシだろうな。これが例の被害者の三人の租界の住人って訳だ。男はこの街では労働力として重宝されるが、女はこうしてシンジケートを通じて外に売りに出されるか中で体を売るしかねえ。それがこの街だ」 


 思わず吐き気に口を押さえた誠を冷ややかに突き放すようなランの一言が響く。車内の空気はよどんだ。


「カウラ。とりあえず窓を開けてやれよ。エチケット袋は有るか?」


 かなめは運転席のカウラにそう言った。カウラはランの目の前のダッシュボードを開けると誠用に用意しているエチケット袋を取り出した。


 誠は久しぶりに吐いた。それは怒りと非人間性が吐かせるこれまでにない酔いだった。 


 淡々とかなめはそう言うとデータを読み終えてコードを首から外した。



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