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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第六章 誠がもたらした『世界』

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第34話 同じ存在としてサラは言った

「これ凄くひどいことだと思うんです。そんな言葉で表すことが出来ないかもしれませんけど……。私やアメリアは作られた……戦うために作られた存在ですけど、今はこうして平和に暮らしているんです。元々遼州の先住民の『リャオ』の人達は戦いを終わらせるために文明を捨てた、そう聞いています。でもこれじゃあ何のために文明を捨てて野に帰ったのか分からないじゃないですか」 


 サラは自分の宿命と自分なりに向き合っている。それまで能天気で笑ってばかりいる彼女もその事実を忘れたことは無い。そんな言葉の意味に誠は心打たれた。


「これからは出てくるのさ、こう言う犠牲者が。実験する連中から見ればまるでおもちゃ。しかも出来が悪ければ捨てられる。おもちゃ以下というところか?」 


 隣でサラの肩に手を置いた島田がそう吐き捨てるように言った。この中では遺伝的には誠と島田がほぼ純血に近い遼州の先住民族『リャオ』だった。


「そうですわね。一刻も早くこれらのきっかけを作った組織を炙り出さないといけませんわ。そのために皆さんにご覧いただいたんですもの」 


 そう言ってみた茜だが、隣に明らかに冷めた顔をしているかなめとアメリアを見て静かに二人が何を話すのかを待った。


「だから、この人数で何をするんだ?確かに湾岸地区から租界。治安は最低、警察も疎開の駐留軍もショバ争いでまじめに仕事をするつもりなんてねえ。こう言う怪しい研究をするのにはぴったりの場所だ。加えて元々ある土地は細かく張り巡らされた水路があって逃げるには好都合だ。最近の再開発では町工場は壊滅して地上げの対象でほとんどの建造物ががら空きで人の目も無い、さらに租界は自治警察の解体と同盟加盟国の駐留軍の直轄統治でなんとか治安は回復したがそれでもあそこ魔都であることに変わりはねえ」 


 かなめはそう言って再び先ほどののぞき窓に向かう。


「今回は私もかなめちゃんと同意見ね。確かに逃げられる公算は高いけど東都警察の人的資源を生かしてのローラー作戦が一番効率的よ。相手が公的機関ならなおさら表ざたになるのは避けるでしょうからこの研究を少しでも遅らせることくらいは出来るでしょうし……いっそのこと『ビックブラザー』に『情報ちょうだい』って言ってみたら?きっと宇宙と交信して教えてくれるわよ」 


 アメリアがふざけて答える。その様を一人壁際で腕を組んで眺めていたランが眺めていた。


「まー普通の意見だな。アタシもこれまで出た情報だけから判断すればクラウゼの論に賛成だ。それでもなあ……」 


 ランはそう言うと誠を見つめた。



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