第25話 剣の扱い方
「次で目的地ですから安心してくださいね」
開いた扉を見ながら茜はそう言って笑う。誠は何を安心すれば良いのかわからず握り締めていた刀に目をやった。
「あの、嵯峨捜査官……これ、本当に何に使うんですか?」
誠は静かにそう言って手にした刀を茜に見せた。茜はそれを見てにっこりと笑ばかりで答えることは無かった。
「そうですわね。とりあえず剣は袋から出しておいた方がよろしいのではなくて?」
茜の言葉に誠は刀の袋の紐を解いた。
「へー、そう言う風な結び方なんだ。初めて見たわ。さすが剣道場の跡取りだけあって手慣れたものね」
アメリアは珍しそうに刀の入った袋の紐をほどく誠の手元に目をやった。
「別に決まりなんて無いですよ。ただ昔から普通に……こうして……これで大丈夫です」
誠の言葉が出る前に通路の奥で不気味なうなり声のようなものが聞こえた。誠達は身をすくめてその異様なうなり声のするあたりを見つめた。
「このうなり声……茜さん。なんなんです。答えてくれますよね?」
心の決まった声で誠は茜に尋ねた。茜は笑顔でごまかしたりはしなかった。
「この剣を使うべき時が来ました。いずれ『彼』にも休むべき時が来た。その為にその剣を使ってください」
茜ははっきりとそう言って誠にそのうなり声の主を斬ることを命じているのだと誠にも分かった。




