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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第四章 東都都庁別館

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第23話 貴重な研究資料

「これは……嵯峨警部」 


 部屋の奥から低い声が響いた。到着したのは生物学の実験室のような部屋だった。遠心分離機に検体を配置している若い女性研究者の向こうの机に張り付いていた頭の禿げ上がった眼鏡の研究者が茜に声をかけて来た。


 ようやく人の感情を持った人物に出会えたことで一同はほっとした気分に包まれた。


「例のものを見に来ましたわ……それとその処理を行える人材もいましてよ」 


 研究者があまりにも研究者らしかったのがおかしいとでも言うように噴出しかけたかなめを一瞥した後、茜はそう言って巾着からマイクロディスクを取り出した。


「そうですか。失礼」 


 そう言うと眼鏡の研究者はそれを受け取り手元の端末のスロットにそれを差し込んだ。画面にはいくつものウィンドウが開き、何重にもかけられたプロテクトを解除していく。


「なんだよ、ずいぶん手間がかかるじゃないか」 


 かなめはそう言いながら部屋を見渡した。


「サンプル……人間の臓器だな。貴重な資料だ。西園寺、傷つけるなよ」 


 カウラの言葉に誠は改めて並んでいる標本に目を向けた。いくつかはその中身が人間の脳であることが誠にもすぐにわかった。他にもさまざまな臓器のサンプルがガラスの瓶の中で眠っているように見える。


「カウラよ。アタシを小学生かなんかと勘違いしてねえか?アタシにも常識くらいある。触れねえよ」


 カウラに言われたことが癪に触ったと言うようにかなめは静かな口調に怒りを混ぜてそう口にした。


「ちょっと、そこ」 


 明らかに緊張感の無い様子でアメリアがつついたのは島田の手にしがみついているサラを見つけたからだった。


「ランちゃんは……平気なの?」 


 島田から引き剥がされたサラがランを見下ろした。自分自身が人類の狂った科学が生み出した戦闘用人造人間ラスト・バタリオンであるにも関わらず、サラにはこういう状況に対応するような心の持ち合わせは無いようだった。


「オメーなー。アタシが餓鬼だとでも言いてーのか?アタシはこういうものはうんざりするほど見てる。恐らくこういうものを切り刻ませたらこの東和にはアタシの右に出るものは居ねえだろうな」 


 そうランが愚痴った時、ようやく研究者の端末の画面がすべてのプロテクトの解除を知らせる画面へと切り替わった。


「それでは参りましょう」 


 茜はそう言うといつものように緊張感の無い誠達に目を向けた。



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