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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第四十三章 かすかな希望が持てる話

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第197話 意外なる来客

「おにぎやかね」 


 そこにスーツ姿の落ち着いた雰囲気の女性が現れた。公安機動隊隊長の安城秀美少佐だった。いつものように笑顔で隊員達を一瞥すると背後に立つ誰かの方に振り向いた。


「安城隊長……その人は?」 


 パーラが聞くのは見慣れない小柄な老人がその隣に立っていたからだった。老人はかぶっていた鳥打帽を脱ぐと頭を下げた。


「あっ、西園寺のお嬢様」 


 老人の視線がかなめに注がれた。先の事件の加害者とも被害者とも言える人身売買組織を仕切っていた志村三郎の父親のうどん屋の亭主であることが分かり、場が一瞬静まり返った。


「ああ……どうも。先日はうどん旨かったですよ」 


 かなめは何を言ったら良いのかわからず、とりあえずそう返事をしていたが、そこにいつものがらっぱちなかなめの姿は無かった。そんな姿に安城が困ったような表情を浮かべていた。


「工場の正門で困った顔してたから乗せてきてあげたの。西園寺大尉!」 


「はい!なんでしょう?」 


 凛とした安城の声にかなめは最敬礼で答えた。その顔はいつもの斜に構えたかなめではなく気恥ずかしさを押し隠している無表情をまとっているように見えた。


「お客さんは案内したからね!じゃあ私はあの昼行灯のところに行くからよろしく。第二小隊の機体を買いたいからうちの予算を回せですって。ふざけるにもほどがあるわ。あんな高いものうちの予算でどうにかなるわけないじゃないの!予算の事なら同盟機構の本部に問い合わせなさいよ……まあ、その会議でいつも寝てるからいつまでたっても肝心の予算の執行がされないのよ」 


 老人を置いて安城は嵯峨に対する愚痴をこぼしながらそのままハンガーの奥へと去っていった。


「かなめちゃんのお客さん……確か、租界でうどん屋をしていた方でしたよね?」 


 アメリアは初めて見る老人の姿にかなめが戸惑っているものの、いつものようにいたずら心から場をかき乱すような発言はせずに普通に対応していた。


「あの志村さんのお父さん?」 


 誠はうどん屋ではあれほど元気があった老人が、ここに来てはまるで退職後の老人ホームの住人の様に元気がなく感じることに不安を感じていた。


「はい……そうです……」 


 誠の言葉に一同の目が老人に向けられた。うどん屋で見た景気の良い大将の姿はそこにはなく、明らかにどこか借りてきた猫のようにそわそわして見えることが誠には気になった。そしてランも冷めた瞳で老人を見つめているかなめに目をやった。


「ちょっと近くまで用事がありまして……西園寺の姫様。よろしいでしょうか?」 


 顔を上げた老人にかなめが頷いた。それは隊での普段着のかなめではなく、よそ行きの海の合宿での食事会の時に見た、姫君としてのかなめの姿だった。


「サラ!茶を用意してくれ。あとクバルカ中佐。応接室使うんで!」 


 かなめはそう言いながらも、上品なしぐさで老人をハンガーの奥の応接室の方向に案内を始めた。


「ああ、いいぞ。大事な客だ。失礼がねーようにしろよ」 


 ランの許可を取るとかなめはそのまま安城が消えた技術部の詰め所の方へと足を向けた。ハンガーで剣道の試合を眺めていた人々はただ呆然と彼女を見送るだけだった。


「サラ。アタシも手伝ったほうがいい?」 


「うん……お願い!」 


 パーラの言葉にサラは答えると奥の給湯室へと消えていった。それを見送ったアメリアがいつの間にかこの光景を他人事のように見つめていた技術部の士官の隣に立っていた。



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