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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第四十二章 最後の敵を目の前に

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第193話 想定外の援軍

『大丈夫ですよ!』 


 突如、コックピットに聞きなれた女性の声が響いた。目の前の肉塊の展開した干渉空間が瞬時に縮んだ。そして肉塊の表面に展開していた薄い制御空間に出来た歪に何かが命中し爆発した。肉塊が展開していた干渉空間が解かれ、もがき苦しむその様を見て誠は再び肉塊との間合いを詰めた。


『誠さん!なんとか間に合いましたね!これでしばらくはあの化け物は動けないはずです!頑張ってください!』 


 開いたウィンドウにはひよこの姿があった。その笑顔を見て誠は絶望的状況が変わりつつあることを実感した。


『これって、本当に効くんですか?』


 女子隊員の制服を着た『男の娘』アン・ナン・パク軍曹が小型のロケットランチャーを構えているのが誠のモニターにも見えた。目の前でもだえ苦しむ肉塊を見てもまだその状況を信じられないのは、彼が幾多の死線を潜り抜けてきた少年兵だったため、状況の好転を安易に信じることが出来ないからなんだろうと誠は思った。 


『これが効果が無かったら、それは司法局本局の責任ですよ!これは干渉空間を無効化する効果ももっているように開発されているんですから。それにこのミサイルは本来対法術適応型シュツルム・パンツァー兵器ってことで取り寄せたんですからね。法術師の集合体に対して効果があるかの研究なんてしている組織なんてこの宇宙のどこを探してもありません!』 


 ひよこはそう言いながらも自分の持って来た兵器に自信を持っているように感じた。誠の機体のモニターにアン・ナン・パクが構えているロケットランチャーが光っているのが映し出された。その後ろではそれに装填するロケットを重そうに抱えるひよこの姿があった。


「ムゴー!」 


 明らかに痛みを感じているとでも言うように榴弾の直撃を受けた化け物はもがき苦しんでいた。再び干渉空間を展開しようとするが、それも瞬時に消えた。対法術師兵器ならばあの化け物に対して効果があることは今の一撃を見れば誠にも分かった。誠は勝機と言うものを感じた。


『あの化け物、さっきの攻撃で法術が一時的に使えなくなったみたいです!今のうち!今が攻め時です!』 


 ウィンドウが開いたところにはアンの叫びを聞いて誠は覚悟を決めたようにダンビラを構えなおした。


『反撃だ!神前、行けるな。今ならこちらから一方的に攻撃できる!さっき言ったように何度もダンビラを突き立てて奴の神経中枢を見つけ出せ!』 


 カウラの声に励まされるのを感じながら誠はそのまま大きくダンビラを振り上げて目の前の化け物に向かった。


「ムガー!」 


 叫び声を上げる化け物に大きく振り上げた誠の05式のダンビラが振り下ろされた。ただの肉塊のようなものに力が集まっている場所があることが誠のテリトリーの中の感覚から知ることが出来た。そこがこの肉塊の急所だと誠は本能的に察知した。


「行けー!そして眠れ!」 


 言葉と同時に誠の空間干渉能力が発動してダンビラが銀色に光り始めた。振り下ろされたダンビラは急所を外して肉塊の左端を引き裂き、そのまま地面に突き刺さった。切り離された肉塊は地面にボタリと落ちるとじわじわとアスファルトを侵食しながら煙を上げて消滅していくのが見えた。


『外した!でも行けるぞ!敵はあくまでも不死人を製造するプラントであって、奴自体は不死身じゃねえんだ!再生能力のねえでかいだけの化け物ならなんとか勝てるかもしれねえ!』 


 かなめの声にさらに誠はダンビラを構えなおした。その時、またアンのロケットランチャーが先ほど引き裂かれて再生を始めていた化け物の左端に命中した。干渉空間が展開できないでいる化け物は対法術兵器の直撃を受けることになった。


 爆発とそれに伴う炎が化け物を覆い尽くした。肉塊は明らかにひるんだようによろめいた。誠は再び確認するが、先ほどの攻撃で切り裂いた化け物の左側の傷が治る様子は見えなかった。


『次弾装填!神前軍曹!お願いします!』


 ビルの上でアンが対法術師シュツルム・パンツァー用ミサイルを構えているのが見える。 


『アンさんこれがラストですよ!絶対急所に当ててくださいね!』 


 アンの声に誠は再び間合いを取ってこちらも急所への一撃を見舞うチャンスを計った。もはや衝撃波や空間切削の攻撃を繰り出すことを忘れた肉塊はただの的となっていた。大きく振り上げた誠の05式のダンビラが振り下ろされた。アンの最後の一撃が化け物の左半身に命中するのと同時にその中央に誠のダンビラが突きたてられた。


「こなくそー!これで終わりだ!助けてやるからな!みんな!」 


 このプラントの製造の為に使用されたすべての命の為の誠の叫びと共に肉塊に突き立てられたダンビラが光を放った。一瞬動きを止めた後、肉塊は大きくうごめいて苦しがっているように見えた。


『ごめんな……でも仕方がね-んだ。もう戻れないんだ、連中は。オメーが連中にしてやれることはそれだけだ。早く弔ってやれ。もうそれは生ける屍なんだから』 


 ランの法術を使っての声が誠の脳内に響いた。ダンビラは白から赤に色を変えながら一段と際立った光を放ち始めた。化け物の動きが抵抗から痙攣に変わり、明らかに力を失って崩れ落ちようとしているのが誠の05式のモニターに映し出された。


『ア・リ・ガ・ト……サヨナラ』 


 そんな声が誠の頭の中に響いたような気がした。先ほどのばらばらに誠に襲ってきた意識が一つになって誠に向けて感謝するためにそう言っている。誠には脳内で響くその声がそんな感謝の言葉に聞こえた。


 突き立てられた05式のダンビラの光がさらに強まった。誠は全身全霊を込めてダンビラに干渉空間を展開させた。傷口からは赤黒い粘液がどろどろと流れ落ちた。そしてそのまま流れ落ちた血のようなもので合同庁舎前の大通りが赤く染まった。


「ウギャー!」 


 肉塊はうめき声を上げた。その破れかぶれともいえる干渉空間が05式の手元で瞬時に展開されて炸裂した。反動で誠の機体はダンビラを離して吹き飛ばされてしまった。


「これじゃあ」 


 隣のビルに叩きつけられた誠の機体。体勢を立て直して肉塊の体内に取り込まれていくダンビラを取り返すべく突進を仕掛けた。しかし、化け物は一切反撃すること無くその場に立ち尽くすだけだった。



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