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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第四十一章 すべての悪意の源に向き合って

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第186話 交渉術と言うもの

「細野さん。引き際を間違えると大変だねえ」 


 嵯峨は画面に映る憔悴した細野陸幕長を眺めた。明らかに会議漬けと言う髪は乱れ、口の前に手を組んだまま目だけが画面を見つめていた。


『引き際?私達がいつ君達と対立したのかね?私たち軍はいつでも同盟機構には協力してきたつもりだ。特に、司法局には貸しはあっても借りは無いと思うんだが、どうだろうか?うちからクバルカ中佐を始めとする人材を次々と引き抜いたじゃないか、君は。その借りは私はしっかり覚えているよ』 


 ようやく開かれた口には明らかに力強さが欠けていた。それを満足げに見つめる上司を見て、アメリアも白髪交じりの司令官に同情を感じてしまっていた。


「07式の厚生局に持って行ったの。あれはやりすぎましたよ。今回のタイミングであそこに07式が有ったら馬鹿でも厚生局の出資元が東和陸軍だってわかる。……まあ、一部同盟機構に不満を持つものが厚生局の局員にそそのかされてあそこに置いて来たって言うなら話は分かりますが。少なくとも俺は分かるな……そっちの方がお互い都合がいいですものね」 


 そう言いながら嵯峨はタバコをくわえた。


『同盟機構に反対する将校が居るのは事実だ。それで、その線で行くとそちらはどう都合が良いのかね?』 


 ぼそぼそとつぶやくように東和陸軍のトップである細野幕僚長は話した。それをあざ笑うような下卑た笑顔で追及しようと嵯峨は画面のをにらみ付けた。


『乗って来たな……自分がかわいいと人は他人にはいくらでも残酷になれるって奴の典型例って奴だ。ランも言ってたがやっぱり東和陸軍で敵に回したくない人物第一位になるわけだわ』 


 そう思いながら画面の中の細野の顔を覗き見る嵯峨を兵士は見つめた。


 しばらく沈黙した後、嵯峨は肩からかけているコートのポケットから一枚のディスクを取り出して兵士が持つ端末のスロットに差し込んだ。


「じゃあ、コイツを見てからはどうお答えになりますか?ああ、セキュリティー解除のキーワードはHISHIKAWA323ですよ」 


 嵯峨の目に狂気が浮かんでいるように見えたのは気のせいだろうか?そう思いながら兵士の見ている画面では手元の別画面に目を移してすぐに驚きの表情を浮かべる初老の男の姿があった。


『これは……どこにも出していないだろうね?』 


 急に陸幕長の声が穏やかになったのを見て嵯峨の笑みが顔全体に広がるのを兵士は見つめている。


「当然!信用第一が司法局の売りですからねえ……そりゃあもう……租界の物資がこんなところに流れてるなんて……」 


 嵯峨はゆっくりとも見てをしながら将官の映された画面に擦り寄る。幕僚長の顔は嵯峨に対する不快感で歪んでいた。


『なあに、アンタには対等な交渉なんてする気は俺にはさらさらないの。こっちが有利に交渉しなきゃ交渉なんて意味ないでしょ?こうして情報を小出しにして揺さぶりをかけるのは俺の専売特許。そりゃあもうゆすりまくるよ……俺は』 


 そう思いながら嵯峨は画面をにらみつけた。そのディスクの中身が先日のベルルカン大陸の失敗国家『バルキスタン』の独裁者エミール・カント将軍波政府の壊滅作戦の時に入手した情報が入っていた。


 同盟加盟国の中での離脱運動を支持する政治家、軍人、官僚、ジャーナリスト。彼等の活動資金としてばら撒かれるカント将軍がため込んだ非合法取引で得られた莫大な資金の裏づけを目の前の悪党としか表現できない男、嵯峨惟基が握っている。


『それでは……大事な話だ。来てくれ給え』 


 しぶしぶ、不承不承、細野幕僚長は兵士に目をやった。


 兵士は任務を完全に忘れたように立ち尽くしていた。その姿は不思議な生き物に遭遇したようなぽかんと口をあけているただの若者に過ぎなかった。


「案内。頼むよ」 


 嵯峨の一言にようやく気がついた背の低い兵士が扉を開けた。



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