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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第四十一章 すべての悪意の源に向き合って

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第185話 時間稼ぎに奔走する『駄目人間』

 頭をさすりながら長身を折り曲げてどうにか借り物の軽自動車から降りた嵯峨は、運転席から降り立った。そこは東和陸軍本部ビル前の車止めだった。警備兵達が急に現れたボロボロの軽自動車に驚いたように集まってきた。


「あー疲れた。技術部の若いのに『一番安いので』ってことで借りたはいいが……もっといい車にすりゃあいいのに。まあ、電車で来るよりはましだったか。電車代なんて俺は今持ってないし」 


 そう言って嵯峨は自分に駆け寄ってくる警備兵達の顔を見つめた。


「ここに来ると聞いてから……大体の今回の事件の大枠が見えてきたがやっぱり東和陸軍はどこまで関わってるのか……一部過激派の責任と言うことで手を打ってくれればいいが、その人物が責任を擦り付けるにはあまりに立派な家柄の人物だったりすると面倒だな。菱川大佐とか……菱川グループの御曹司がなんだってこんなお荷物扱いされてる東和陸軍なんかに居るんだよ。それが不思議だ」 


 嵯峨は一人そう言って胸のポケットのタバコを取り出しかけてやめた。


「法術の軍事利用はどこの国も密かに行っていた。今回の厚生局だって東和陸軍に研究成果を引き渡すことで陸軍の虎の子の07式を引っ張り出す算段をつけたに決まってるんだ。まあ東和陸軍としては厚生局が本気で本局防衛に走っちゃって07式を起動せざるを得ないところまで頑張っちゃうとは思っていなかっただろうけどな。厚生局本局とプラントの関連施設があっさり陥落しちゃえば07式は厚生局に奪われたってことにしておけば東和陸軍としては逃げ道はいくらでもあるもの」


 嵯峨は自分に言い聞かせるようにそう言って頷きながら集まって来た警備兵の中の背の低い兵士に身分証を渡した。


「いきなりこんなところに……司法局の方ですか……誰とご面会ですか?こんな時間に面会など……来る時間を間違えているんじゃないですか」 


 確かに深夜である。東和陸軍の客人が訪れる時間としてはあまりに遅い。そのことに明らかに歩哨が不信感を抱いているのが嵯峨にもありありと見えた。


「決まってるだろ?面会だ。細野陸幕長だ……今いるんだろ?あ?この時間までお仕事してるのはお互い様さ。幕僚長も今頃は虎の子の07式がお釈迦になって機種選定を05式にしておけばよかったと後悔している最中じゃないかな?タイマン勝負じゃ07式に勝ち目は無いって幕僚長に伝えて。俺達『特殊な部隊』の勝ち。残念だったねって」 


 そう叫んだ嵯峨を見て長身の兵士の顔がゆがんだ。しかし、身分証を見ていた兵士が彼に耳打ちするとその顔色は水銀灯の光のせいばかりではなく明らかに青ざめていくのがわかった。


「しばらくお待ちください」 


 兵士の一人が嵯峨が司法局の関係者だと知って態度を変えたことに嵯峨は満足げな笑みを浮かべていた。


「え?同盟厚生局前の一件……東和陸軍も関係してるんだから。一刻を争う事態だぜ。場合によってはこの建物の中に俺達が追ってる厚生局の違法法術研究のプラントがあるかもしれないんだぞ。そうなったら東和陸軍は解体だ。なあに、東和宇宙軍が別部隊を編成して代わりを務めてくれるから。君たちは安心して失業して良いよ」 


 嵯峨の穏やかな声の調子がさらに二人の兵の恐怖を煽った。


「ですから、そう急かさず、しばらくお待ちください!こちらにも事情が有るんですから!」 


 長身の兵士がドアを開いて消えていった。その様子を満足げに眺めた後、嵯峨は今にも失禁しそうな表情を浮かべている小柄な兵士を見下ろした。


「司法局実働部隊の隊長をやってるんですよね?あの『特殊な部隊』の」 


 歩哨の質問に答える代わりに嵯峨はタバコの箱をいじりながらにやりと笑った。


「まあ隊長なんていうのはなるもんじゃねえぞ。面倒ばっかりだって言うのに感謝もされないどころか友達が少なくなる。損ばっかりだよ。今回だってそうだ。やれ、秘密主義だの情報の正確性が低いだの同僚や部下から突き上げを食らって、命がいくらあっても足りないくらいだ。平の兵隊さんくらいが平和な時は一番楽でいいの。なあ、兵隊さん!アンタもそう思うだろ?」 


 嵯峨がタバコを手に取ると何を思ったのか歩哨はポケットからライターを取り出した。


「あのー俺も持ってるんだけど」 


 そう言って嵯峨が使い捨てライターを取り出すと同時に先ほどの長身の兵士が手に通信端末を持って飛び出してきた。


「ほう、直接話すのは嫌なんですか……シャイだねえ。それとも俺が法術師だと知ってて怖くて近づけないのかな……軍人ともあろうものがそんな命を惜しむようなことをしていちゃだめだよ。まったく」 


 嵯峨は兵士に見えるように肩をすぼめて見せた後、兵士に両手でタブレット端末を持たせたまま画像を開いた。



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