表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第三十四章 心無き研究者達

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

160/206

第160話 自分達の力の及ぶ範囲

「つまりこの三人ならば捜査に法術特捜の捜査権限が生かせると言うことですわね。法術特捜は法術の悪意的使用に関する容疑を立件できることを同盟司法局が認めれば職権にて必要な措置を取ることができる……同盟厚生局に直接関係のある研究者はもうすでに遼南山岳レンジャーのライラさんが面会して回っているでしょうからね。まあ彼等が何か言うとは思えないですけど。厚生局全員を敵に回せるほどの度胸のある研究者なんてこの遼州系には居そうに無いですもの」 


 納得したように茜は頷くとすぐさま端末からコードを伸ばして部屋に据え置きの機器に接続した。かなめも頷き、カウラもひよこの端末から茜の目の前の画面に視線を移した。


「なるほどねえ、ライラさんが会った研究者はもし研究に加担していたとしてもすでに厚生局の偉いさんから因果を含められてるって話だな。例えしょっ引いても絶対に口を割らないようになってる訳だ。時間が惜しい今なら手を出すだけ無駄ってことか」 


 島田は島田なりに考えていることがその言葉で分かった。それを見てひよこが生暖かい視線を送る。にらみ合う二人を見てランが口を開いた。


「今回の事件には間違いなく厚生局の他にもその技術の買い手のどこかの軍がかかわりがあるってことは感じてるな?当然、彼らも危ない橋を渡っているという自覚があるわけだ。さらに遼南レンジャーが捜査に参加したことであちらさんも相当警戒している。これから使えると言う臨床系の技術者を囲っておこうと彼らが思っても不思議はねーだろ?ひよこの言う通りもう臨床系の技術者を追いかけて証拠を上げることは無理だろー。すべてが遅すぎたんだ。もー今となっては」


 ランの言葉に茜は唇を噛んだ。すべてが遅すぎた。その意味するところが自分の責任だと茜は自身を責めているように誠には見えた。


「じゃあ他の研究者は見逃せって言うんですか?何人が犠牲になったか分からないんですよ!それにこの技術が今後応用されたらどういうことになるか……」 


「正人!」 


 ランに詰め寄ろうとする島田をサラが押さえようとする。しかし、子供にしか見えないランは動じることなく島田を睨み返していた。


「だからだよ。今回は何がしかの糸口を見つけて今の体制の厚生局の解体に持っていかなきゃならねーわけだ。ひよこも三人の名前を挙げたということはこいつ等のうち最低一人は基礎理論……あの化け物を作る理論的根拠を示して見せて臨床系の技術者の指導に当たっていたと言うことなんだろ?」 


 ランの言葉に静かにひよこが頷いた。


「この三人なら厚生局にすでに用済み扱いされてるから、司法局上層部の反対も無いだろうから容疑が固まれば身柄を確保できる。取調べが出来ればそこからこの事件の関係者の名前が分かってくる可能性がある」 


 落ち着いてつぶやくランを見て静かに島田は腰を下ろした。


「逆に言えばこの三人以外は違法研究の嫌疑で身柄を押さえても……」


「お偉いさんから横やりが入って……はい、それまでよ、だ」 


 誠の言葉にかなめが諦めたように言い添えた。かなめの隣でエメラルドグリーンの髪を掻き揚げているカウラがいた。どこへ向けていいのか分からないような怒りがその整った顔に浮かんでいるのを誠は見逃さなかった。


「食らいつくところが決まったんだ。誰が担当する?……ってアメリア、目が怖ええよ!」 


 かなめの視線の先にはらんらんと瞳を輝かせるアメリアの姿があった。


「それでは工藤博士は(わたくし)とラーナが担当しますわ。そして北博士は……」 


 全員の視線がアメリアに向く。頭を掻いた後、アメリアはその手をサラに伸ばし、サラは島田の腕を掴んだ。


「その組み合わせ、力のある法術師が出てきたらやばそうだな。仕方ねえやアタシも出る」 


 ランの言葉に茜が頷いた。


「じゃあ残りはアタシとカウラに神前か」 


「誠ちゃんが悪の女幹部に誘惑されたら困るからね!」 


「アメリア。頭腐ってるだろ?」 


 アメリアとかなめの会話に和やかな空気が漂う。それまで端末をいじっていた茜がようやくコードを抜いて振り返った。


「それぞれの端末にデータを転送しておきましたわ」 


 それを聞いて誠も自分の端末を開く。脳に直接データを転送していたかなめは少し目を閉じた後、複雑な表情を浮かべた。


「なるほどねえ、今回の実験が『近藤事件』を契機に一気に進んだ理由が良く分かったよ」 


「どういうことだ?」 


 カウラの声にかなめは口元を緩める。その瞳の先の茜が仕方が無いというようにうなづく。


「法術系の研究をしていた研究者の監視の多くは法術の存在が知られてしまった時点で中止の指示が出てていたはずですわ。それまで監視を受けて研究が進まずにいた研究者はあっちこっちから引っ張りだこ。その研究が合法的なものばかりではありませんし。結果、地下に潜った臨床系の技術者を厚生局が理由を付けて片っ端からこの研究に引っ張った。それが今回の事件が示してくれた結果ですわね」 


「そう言うわけだ」 


 かなめが誠の襟首を引っ張って立ち上がらせる。カウラも鋭い視線を誠に投げた。


「じゃあ行ってきます」 


「がんばってね。そこの二人!誠ちゃんを襲っちゃ駄目よ!」 


「誰が襲うか!」 


 かなめはアメリアを怒鳴りつけるとそのままセキュリティーの厳重な冷蔵庫の扉を開いた。心配そうに実働部隊の詰め所から顔を出しているかえでとリンの顔が見える。


「見世物じゃねえぞ!」 


 そう言いながらかなめは大またでその前を通る。仕方が無いというようにカウラと誠もそれに続いた。


「がんばってくださいね!お姉さま!」 


 クールな調子だが妙に色気を感じるかえでの声にかなめはびくりと震えた。


「愛されているんだな。いいことじゃないか」 


 じっとかなめが出てくるのを待っていたであろうかえでを見ながら皮肉を飛ばすカウラをにらみつけたかなめはそのままハンガーの階段を大きな足音をわざと立てながら下り始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ