表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第三十三章 科学と進歩のもたらすもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

155/206

第155話 歪んだ理想を持つ頭脳の影

「どういう人物なんでしょうか?人体実験の研究者って」 


 そのまま寮を出て駐車場のカウラの車にいつもどおり後部座席にかなめとアメリアが座り、誠は助手席でそうつぶやいていた。


「何といっても生体人体実験だからな、今回のは。研究者の矜持で動いているんじゃねえの?科学の進歩は人類のためになるとか……まったく迷惑な話だな。臨床系の人間は頭がぶっ飛んでるとして、基礎理論を打ち立てた連中は……これが実際に行われると思ってたかどうかでそのぶっ飛び具合が代わってくるだろうな。とにかくまともな人間じゃないことだけは確かだ」 


 かなめは無関心そうに動き出した車の振動に身を任せている。アメリアは誠に見つめられると首を振っていた。


「あっさり引くなよアメリア。お前も『人造人間』だろ?私もこの前の肉の塊に変化した少女と違いは無いんだ。オメエ等『ラスト・バタリオン』も基礎理論があって、実際に製造にかかわった技術者が居るんだ。他人事じゃ無いんだぞ」 


 ハンドルを切りながらカウラが言った。二人は人の手で創られた存在であり、科学が生み出した地球人類を超える存在をうたわれて作られた人造人間である。


「それはそうかもしれないけど。私は誰が私を作ったかなんて考えたこともないし……ってそれじゃあ嘘になるかもね。まあ、私は私を作った基礎理論を作った人にどう思えばいいのか分からないの。ひどい目に遭ったこともあるから恨んでもいるし、その宿命を考えると憎くもある。でも、今は楽しいから感謝もしている。色々複雑なのよ。私も」 


 そう言いながらアメリアは笑った。車は前に飛び出してきたサラを後ろに乗せた島田のバイクについて走っていた。


「科学者の好奇心?禁秘に触れる快感?自分の理論の証明?どれにしても勝手な理屈だな。結果として多くの悲劇を生む。今回は確実に被害者まで出した。そんなことを机上の空論だからと言って研究して見せる人間の神経がアタシには理解できねえ」 


 かなめの言葉に誠達は頷いた。後ろを見やればすぐに茜のセダンが迫っていた。


「そう考えると……今のところはひよこも容疑者の一人なわけだな。アイツもよちよち歩きとはいえ法術の基礎理論の研究者の一人だ。いや、神前や茜やかえでみたいな典型的な法術師を日常的に観察している分、より容疑は深い」 


 かなめの一言。あぜに黄色い枯れ草を晒している田んぼの向こうに巨大な菱川重工業の豊川工場の姿が見え始める。


「まあアリバイはすぐ取れるからいいとしても聞いてみる価値はありそうだな。同じ法術の研究者として今回の事件のきっかけを作った理論を組み上げた奴が何を考えていたのかをさ。同じ研究者同士、似たような発想をする人間がどんな人間か知ってるかもしれねえ」 


 かなめの声に全員が心を決めるように頷いた。工場に向かう車にトレーラーが混じり始めると流れは極端に悪くなり、それまで先導するように走っていた島田のバイクがその間を縫うようにして先行した。


「島田の奴、ひよこをつるし上げたりしないだろうな。アイツはあの少女から変化した化け物が持っていた法術に近い存在なんだ。島田の奴は走り始めると止まることを知らねえからな」 


 冷ややかな笑みを浮かべるかなめを誠はにらんだ。 


「冗談だって!島田もそこまで馬鹿じゃねえのは分かってるよ。だがアイツの法術を使っての体再生能力は今回の実験で作られた化け物の共通点だ。アイツらしく頭に血が上ったとしか思えない暴走ばかりしていたのは覚えているだろ?それに奴はヤンキーだ。ヤンキーは絆で動く生き物だ。仲間のひよこに手を上げるような真似は絶対にしねえことは知ってるよ」 


 そんなかなめの言葉に車の中の空気が寒く感じられた。工場の正門を抜け、リニアモーターカーの車体を組み上げていると言う建物の先を折れ、生協の前を抜けると司法局実働部隊を囲む高いコンクリートの塀が見えた。


「ただ多くの法術の基礎理論を研究していた容疑者の中の一人減るだけじゃないの。そんなにひよこちゃんが信用できないの?かなめちゃんはヤンキーじゃないから絆とかあんまり関係ないものね」 


「アメリア。西園寺もそこまでは言ってない」 


 カウラが笑みを浮かべながら部隊のゲートに車を進める。警備部の隊員が珍しそうに詰め所から顔を出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ