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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第二十九章 人斬りの喜びと言うもの

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第144話 腐りきった町で

「しかし……ひどい町ですね。ここに住むようになってからと言うもの、以前の学生活動家時代の正義感って奴が目覚めてしまいましてね。あのデモンストレーションの際は本当に心のつかえが取れた気分になれましたよ。ここに住む住民の不満をあそこで働く資本家の犬共に思い知らせる……いやあ、愉快痛快とはこのことでした」 


 北川は久しぶりに心のそこから出た言葉を後ろの桐野に投げた。彼自身は東都の生まれで大学に在学中に地球人排斥運動に参加して表の世界での生活を捨てた。そして彼の運動の始まりもこの貧弱な建物の並ぶ租界だった。当時からこの街の貧しさは変わっていない。そしてそのことに対する北川の怒りもまた変わっていなかった。


「そうか?俺には天国に見えるがな。いつどこで誰が何を斬っても良い街だ。俺のような人殺しには最適の街だ。むしろこの外の世界がどうかしているんだ。人を斬ることの何が悪い。人が多すぎるから斬って減らす。それは当然の自然の摂理だと俺は思うがな」 


 そう言って桐野は笑った。信号が変わり走り出すごみ収集車に続いて車を走らせた。誰の顔も汚れと垢にすすけて生気という物を感じさせるものが一つとしてない街。そこがここ東都租界だった。


「ここが天国なら世界中天国だらけですね。ああ、人が斬れない世界は旦那には地獄なんですよね。でも止めに来た警察官も斬れば良いじゃないですか。そう考えればこの宇宙何処へ行っても天国だらけだ」 


「そう思ったほうが幸せだろ?俺は今の境遇が幸せだと感じている。いつでも気に入らない人間を斬れる。北川。貴様を斬ってやっても良いんだぞ。まあ、俺も帰りの足が必要だから今すぐお前を斬ることは無いが」 


 北川は冗談か本気か分かりかねる不敵な笑みを浮かべる殺人狂をバックミラー越しに見ていた。自分が斬られるかもしれないということは何度と無く経験してきた。桐野にとって人を斬るのが挨拶程度のことだというのはこの半年あまりの付き合いで良く分かっていた。桐野の神経は確実に壊れている。北川はその事実は今後も生きていくために必要な知識なんだと心にとめた。


「じゃあ今回の取引は終了ですね。本国の意向を無視して厚生局の連中がつまらない実験をした報い。どうなるか楽しみですねえ。所詮、法術師を扱わせたら我々に勝てる組織なんぞ存在しないんですよ。まあ、そう言って回れないのが俺としては少し不服ですが」 


 北川は冗談めかして後部座席の壊れた脳を持つ人斬りに声をかけた。


「そうだな。後は厚生局の連中の首を『茶坊主』嵯峨惟基の手駒達が取るか、遼の姫君が取るのかと言う問題だ。まあ遼の姫君は俺達のデモンストレーションのおかげで厚生局相手の仕事からは外されるかもしれないな。遼帝国も、姫君に危ない橋を渡らせる度胸は無いだろう。俺達は厚生局の連中が追い詰められていく様を高みの見物を気取ればいいだけの話だ……同盟厚生局はいい噛ませ犬だったというだけの話だ。本国の忠告を無視して暴走した結果がこれだ。役人は役人らしく上の言うことさえ聞いていればいい」


 そう言って桐野は目をつぶり沈黙した。その満足げな顔につばを吐きかけて自分の車から叩き落したい衝動を我慢しながら北川は同盟軍の装甲車両の脇を抜けて東都の街へと車を走らせた。



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