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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第二十九章 人斬りの喜びと言うもの

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第143話 殺人者としての自覚

 着ていた古ぼけたトレンチコートに付いた血痕を確認しながら細身の骸骨のような顔をした男が小型自動車の後部座席に乗り込んだ。その緩慢とした動きを苦々しく思うように運転席のサングラスの男が見つめていた。


「ありゃあ揉めそうな感じですねえ……でも……なにも斬ることは無いんじゃないですか?どうせ奴は俺達の事は何も知りませんよ。出てくるのは厚生局の下っ端役人の名前くらいだ。そんなうち等の商売敵の身を守ってやったところで何の得になるんです?」 


 革ジャンの袖を触りながらオープンカーの運転席のサングラスの男。北川公平は後ろの席のコートの男に声をかけた。


「気に入らない奴を斬っただけだ。人買いは気に入らない。商売として俺は認めていない。それに何よりも俺は人が斬れるからあの御仁についているだけだからな……俺もお前も法術師だ……同じ法術師の仲間を売り買いする……そんな下司(げす)のやることを許せるか?」 


 不敵な笑みを浮かべるのは『人斬り』の異名を持つ男、桐野孫四郎だった。法術師の能力の強制発動の実験に材料を提供していた人身売買組織の幹部の暗殺。地球人の利益の成ることに憎悪を燃やして活動する二人にとってそれは至極当然な行為だった。


 これまで厚生局の実験に協力する姿勢を見せていたのは二人が所属する組織が出資者への配当を滞らせている現状を打開するための苦肉の策に過ぎなかった。地球人への報復。それだけを目的としてつながっているテロ組織を再編成して結成された彼等の組織は拡張と共に安定した財源の確保が問題となった。


 そこに声をかけたのが地球人至上主義を掲げるゲルパルトのアーリア人民党員で元秘密警察の幹部であるルドルフ・カーンだった。


 お互いまったく正反対の主張を繰り広げる非公然組織だが、当面の課題として北川達は資金が、カーンの手には優秀な手駒が不足していた。そこで両者は手を結び、法術研究の地下組織を支援することで一致し動き出した。そしてその為に北川達は主である『廃帝ハド』に無断で彼らの手駒を三つ調達し、その試験も兼ねて覚醒に失敗する公算の高い法術師の少女を擁する厚生局の連中に持ち掛けて同盟機構の入るビルの前で暴走させ三人の調整した法術素体が攻撃するデモンストレーションを行った。


「でもあのチンピラ。どこまで知っているんでしょうねえ、我々のことを。ああいった連中は意外と耳が良いもんだ。それに俺達もここの住人だ。下手をすれば噂くらいは聞いてるかもしれませんよ。法術師の中でも覚醒した者だけを集めている人間がここに居るって」 


 そう言うと北川はエンジンをかけた。野次馬達を徐行してやり過ごすと北川はそのまま廃墟に近い東都租界を車で流した。


「奴は俺の顔を……知らなかった。奴は俺達とは連絡を取る手段は持っていなかったからな。もしかしたらゲルパルトのネオナチ連中と商売をしていたこともあるかもしれないが……今となってはそんなことはどうでもいいことだ。一人の人買いの人生が終わった。俺にとってはどうでも良い話だ」 


 桐野の言葉にハンドルを握る北川も頷いた。元々敵が同じだからと言うことで一時的に手を結んでいるだけと言うカーンの組織を守ってやるほど二人の心は広くは無い。恐らくカーン達も同じ考えだろう。そう思いながら北川は信号が変わって停車したごみ収集車の後ろにつけた。


「もうすぐ朝ですね。帰って朝寝ってのも趣向としては悪くない」


 北川はそう言って笑った。彼等の頭目である『廃帝ハド』が今頃目覚めている時間だろう。そんなことを考えながら北川は車を飛ばした。



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