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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第二十三章 『戦争犯罪人』と『粛清者』

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第126話 戦う意味を問われて

「いえ、それじゃあ納得できないんです。クバルカ中佐。一つ、質問があります」


 誠は勇気を振り絞ってその納得できない気持ちをランにぶつけてみることにした。


「誠ちゃんが珍しくかなめちゃんの言うことに逆らったわね……」


 いつになく真剣な誠を冷やかすようにアメリアがそう言って見つめた。


「質問だ?……まーいーや。聞こうじゃねーか。なんだ、言ってみろ。この状況での質問だ。それなりに意味のある質問をしてくれると期待してるぞ」


 自分を見つめる強い意志を持った誠にランはそう言って穏やかな視線を返した。


 ランのにらむような視線に見つめられて誠にいつもの気弱な表情が戻る。だが、誠はすぐに意を決したような表情を浮かべて口を開いた。


「何をしても生き延びろ。まあ、僕も無駄死にはしたくありません。でも、そうして生き延びた先。僕達はなぜ、そうまでして生き延びなければならないんですか……そうまでして戦い続ける理由は何ですか?戦う理由。それを教えてください。それが僕の質問です。僕を騙してこの『特殊な部隊』に入れた以上、答えてもらいます」


 言葉を一つ一つ選びながらそう言った。そのいつもに無い気の弱い誠の視線。しかし、ランはそれにひるむことなく誠を見つめ続けた。


「戦う意味だ?……神前……オメエ何が言いたい……」


 誠の言葉にあきれ果てたという口調でかなめはそう言った。


「おい、西園寺。オメーは浅はかだぜ……神前よりはるかに場数を踏んでるのに……オメーは本当に浅はかだ。いいぜ、聞かせてやろう。神前、オメーが望むもの。そして、司法局実働部隊隊長、嵯峨惟基特務大佐からアタシが聞いた戦う意味って奴をさ……同席した連中は僥倖(ぎょうこう)だぜ……聞き逃すなよ……」


 そう言ったランの顔には満足げな笑みが浮かんでいた。


「アタシが知らない話だ。聞こうじゃねえか」


 満足げな笑みを浮かべながらかなめがつぶやいた。


「急くなよ、西園寺。まあ普通の兵隊さんの目的は勝利だわな……要するに何をしたって勝ちゃあいい。まあ、その際に国際法だ、政治力だ、経済力だ、まあ色々あるが、目的ってのは勝利ってことになってる。この勝利ってのも単純じゃない……まあそんなことはこの際どーでもいーこった。要するに軍の目的は勝利だ。まあ、うちと性格の似ているお巡りさんなら治安維持、国民の財産と生命を守る。まあ兵隊の勝利が目的ってのと比べると多少分かりにくいが、ようするにみんなの命を守る。まあ目的ははっきりしてるわな」


 さっぱりとした口調でランは言い切った。隣でかなめが凄味を利かせた目で小さなランを見つめた。


「一般論を利かせるたあ……随分とご立派になられたことで」


 かなめはランの言葉に呆れたようにそう言って小さな拍手をした。


「だから西園寺、最後まで聞け。戦う意味、アタシ達が戦い続けなきゃならねー目的ってのは……命を救う事だ」


 静かに。そして言い切るようにランは言った。その言葉にアメリアが納得できないように頭を掻いた。


「期待させておいてそれ?ランちゃん。それならさっきランちゃんがお巡りさんの仕事だって言ってたことじゃない。何か違いでもあるの?」


 不服そうなアメリアにランは呆れたようにため息をついた。


「そんなこと誰かが言うと思ったよ。アタシ等の命を守るってのはそんなに単純なもんじゃねーんだ。ちゃんと聞いとけ……」


 そう言ってランは余裕のある笑みを浮かべた。それはその姿の少女のそれとはとても思えない老成したものだった。


「確かにお巡りさんのお仕事は命を守るってことだ。まあ、時には持ってる拳銃なんかを抜くが、まあそれも目の前の人命救助って目的のためだ。西園寺、ここで茶々を入れるなよ。怪しいってだけで無実の人をぶっ殺す馬鹿も警察官をやってるって言いたいんだろ?テメーは。そんな例外はアタシの話にゃ上がってこねー。あくまでまともなお巡りさんの話だ。まあ、これから話すことっを聞けば。アタシ等がはたから見ればまともには見えないこともあるってことは言っといたほうがいいかな。まあ、人さんの意見などどうでもいいが……」


 静かにそして冷静にランは話を続けた。


「まあ、アタシや隊長の命令が時に最低で人の道に反していると思えることもあるかも知れねー。まあ、そん時それに従うかどうかはテメー等の勝手だ……そん時言う事を聞かなくてもアタシや隊長は怒らねーよ。ただ、そんな時、オメー等に非道な悪魔になれとアタシと隊長が指示を出した時。指示を出した責任を取るのがアタシや隊長の務めだ。オメー等の責任じゃねー。ただそいつは人の命を救うためだ。目の前の一人を殺すことでその背後にいる数百、数千の命を救えるなら……アタシ等はどんな酷い命令でも出す……そう言う事だ。あのデブの大将はそんな隊長の命令に従って戦争犯罪者になった。もしかしたらテメー等が同じ道を歩むことになるかも知れねー。そん時は……済まなかったとしかいうことが出来ねえな」


 ランの非情で冷たい言葉に一同は沈黙した。


「それが僕達の戦いの意味……」


 誠は真剣なランの表情を見ながら自分の手が汚すであろう血を思い出して恐怖した。


「そう言うわけだ……じゃあ出るぞ」


 かなめはそう言って立ち上がる。カラオケボックスを出ようとしたランをかなめが押しとどめた。



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