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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第二十三章 『戦争犯罪人』と『粛清者』

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第125話 戦う意味を問う『粛清者』

「オメエ等も餓鬼じゃない。それどころかきっちり軍事訓練を受けた兵隊だってことは知ってる。だがな。租界に足を踏み込むってことはだ。そんな兵隊さん達の寝首を掻くことぐらい造作もなくやってのける化け物達に目を付けられる可能性があるってこった」 


 誠から見てもかなめの表情は冷たく厳しいものだった。一息ついて誠を一瞥するとかなめは話を続けた。


「まあ、今時そんな凄腕が東和くんだりで商いやってるとは思えねえがな。遼州の火薬庫。ベルルカン大陸の失敗国家の紛争地帯に行けばそう言う連中の手ならいくら出しても買いたい奴は五万といる。ただ、そいつ等が里心がついて租界のゲットーに舞い戻ってる可能性も捨てきれねえ。それに東都戦争ではなりを潜めていたが、遼南共和国も遼州人の国だ。当然法術師も居るはずだ。もしそんな連中に出くわした時はどうする?相手は百戦錬磨の法術師だ。そんなの相手にできる自信はあるか?」


 物騒なことを言う割に、かなめの顔は笑っていた。


「西園寺の言う事は大げさに聞こえるかもしれねーが、アタシも西園寺もその慎重さゆえに今があるんだ。だからアタシからも言っておく。本当にヤバい奴に出会って、その場にアタシ、西園寺、隊長が居ないときは逃げろ。もしここ豊川近郊での出会いなら、あの店に飛び込んであのデブにそれについて説明して保護を求めろ。まあ、順番は逆だが、同じことは第二小隊の連中には説明済みだ。日野は自分ならなんとかできるとごねてたが、相手が法術師だった場合、実戦経験の無い日野に勝ち目はねー。アイツは確かに強いが所詮はお座敷剣法の達人と言えるレベルだ。一回の実戦を経験した素人の方がよっぽど使い道がある」


 ランはそう言って笑った。その表情には強がりのようなものがあった。


「ランちゃん……あのデブがそんな切れ者だなんて……今となってはただのうどん屋の亭主じゃないの。そんな昔話を今でも信じろって言うわけ?私達がピンチになるとしたら今現在なのよ。そんな遼北軍を駆逐した20年前の戦争の時とは事情が違うんじゃないの?」


 アメリアの言葉に島田は激しく頷いてランを見つめた。


「一応アタシの先輩なんだぜ……顔ぐらい立てろ。それにアメリカをはじめとする地球圏の特殊部隊の襲撃を今まで切り抜けてきてるってことはその技量はまだ衰えちゃいねーってことだ。この世界、少しの衰えが死につながる。あのデブが生きてる間はその腕前は落ちていねーと言う何よりの証拠だ。恐らくその勘が鈍った時があの大将の最期の時だろー」


 ランは言葉を選びながらそう言った。そして最後に自嘲気味に笑った。


「でも、私達軍人でしょ?ふつうそんな犯罪者に守ってくれだなんて……確かに相手が悪かったら別だけど私はあまり頼りたくないな……」


 立ち上がったアメリアがそう言って机を叩く。


「まあな。だが、あのうどん屋の親父レベルになると、普通の兵隊なんて射撃の的のスイカ同然だ。アタシや西園寺もそのスイカを食う側の人間だってことだ。そんな連中を前にしたらオメー等は無力だ。まさに的のスイカだ。軍人なんて言っても上には上がいるもんだ。アタシ等の言う通り黙って逃げろ」


 冷酷なランの言葉に誠達は打ちのめされた。


「で、オメエ等。アタシ等の話は分かったか?アタシはオメエ等を死なせたくねえんだ。せっかく仲間になったんじゃねえか。叔父貴があのデブ達を身を挺して守ったように、オメエ等を守りたい。でもそれには限界がある。分かってくれ」


 そう言ってかなめは周りを見回した。誠はこれほど人を思いやるかなめの姿を初めて見ることになった。


「西園寺はともかく、クバルカ中佐が嘘を言うとは思えないからな。私も犬死はするつもりは無い。確かに世の中上には上がいることは理解できる。西園寺、貴様の言うことを信じよう」


 カウラは静かに頷いて隣のアメリアを見た。


「私だって死にたくないわよ!まだ見て無いアニメ結構トランクルームに保存してあるんだもの。それを全部見るまでは死ぬわけにはいかないわ!」


 自分の胸を叩きながらアメリアは激しくそう言った。


「私も嫌、せっかく生まれたんだもの。たとえ、戦闘用の人造人間だったとしてもそれはそれとして受け入れて生きていきたい。……正人は?」


 サラはそう言って島田を見つめた。しかし、島田の表情はいつもならすぐに答えるところがまるでそこに意識が無いと言うようにぼんやりとしていた。


「俺は……とりあえずクバルカ中佐の言うことは聞きます。俺を導いてくれた恩人ですから」


 誠は島田のランを『恩人』と呼ぶ言葉に違和感を感じつつ、視線を茜に向けた。


「お父様もご存じとあれば、私に異存など……ラーナは?」


「へっへっへ、まあアタシも……死ぬのはしばらく先の方が……いいかと……」


 法術特捜コンビの茜とラーナもそう言った。


「おい、神前。オメーもそうか?」


 ランは一人黙って自分を見つめている誠に声を掛けた。


「まあ、僕も死にたくは無いですけどね……でも……」


 誠は頭を掻き、照れながらそう言った。


「まあ、誰でも死にたくは無いわな。じゃあ、それで良いんだな」


 そう言ってかなめは周りを見まさす。


「西園寺さん!僕の話を聞いてください!僕が言いたいのはですね……」


「なんだよ神前。死にたくないでそれでいいじゃないか、それで十分だぜそれで」


 かなめは真剣な表情の誠をなだめすかせるようにそう言った。ただ、誠にはまだ納得できないことが残っていた。



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