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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』  作者: 橋本 直
第三章 極秘法術研究施設

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第12話 同乗者で揉める『特殊な部隊』

「じゃあ行きましょう」 


 茜はそう言うとそのまま玄関を出た。冬の空は雲ひとつ無い。吹きすさぶ風。茜は楚々として寮の隣の駐車場に止めてある電気駆動の高級乗用車に向かった。


「そう言えば何でこれが……それとなんでこの剣を隊長が持ってるんですか?茜さんは娘さんですよね?何か知りませんか?」 


 誠が手にしている刀を茜に見せようとしたとき、茜は自分の車のトランクを開けた。


「ええ、その剣の入手先についてはお父様からは何も知りませんわ。その剣はこちらに。今すぐ使うものでは無いですし、大切なものですから。なんと言っても一国の国宝ですもの。ベルガー大尉の車のトランクは狭いでしょ?傷つけたら責任問題になります。私の車でしたらトランクのスペースに余裕がありますし、私は色々やわらかいものを運ぶことが多いのでクッションが敷いてあります。私が預かりましょう」 


 問いに答える代わりに茜が手を伸ばした。仕方なく誠は茜に刀を手渡した。


「アイツ等……いい加減子供じゃねーんだからよ。決まったことはちゃんと守れや」 


 呆れたようにランがため息をついた。


 その視線の先のカウラの『スカイラインGTR』があった。いつも出勤に使っている車の前で島田とかなめが怒鳴りあっている。かなめはランとの同乗を嫌がり、島田は茜の車の香水の匂いが気になっているようだった。カウラの車は四人乗りである。どう考えても島田に居場所などない。


「島田、いい加減諦めろ。彼女のサラと同じ車でよかったじゃないか。では、クバルカ中佐、よろしく」 


 そのままカウラは運転席のドアを開けた。誠とサラに引きはがされてなんとかここまで来たかなめは借りてきた猫のように静かに後部座席のドアを開いた。


「クバルカ中佐。この車はサスペンションがきつめに設定されているので揺れますが大丈夫ですか」


 カウラが気を利かせて助手席に乗り込むランに声をかけた。ランは背が低くて視界が利かないのが気になるのか、しきりに前方を覗き見ていた。


「そんなの気にしねえ。シュツルム・パンツァーに比べたらどんな車のサスペンションだってロイヤルサルーン並みだ」 


 後ろの二人を見て二人が大人しくしているのを確認した後、カウラは慣れた調子でシートベルトを締めた。すぐに低いエンジン音が響き、エンジンの力がタイヤにつながり、車がバックを始めた。茜の車の前ではさらに苛立ちを隠せなくなっていた茜が運転席から顔を出して車に乗るのを嫌がる島田への説教を始めていた。


「まああいつ等も端末のナビでこっちの位置を特定できるんだ。迷子にはならねーだろうしな。それにあの建物の駐車場は広いから迷う心配もねー」 


 ランの皮肉めいた言葉に釣られて誠も笑った。カウラの車はそのまま砂利のしかれた駐車場を出た。


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