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宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――  作者: 黒鯛の刺身♪
【第二章】赤い地球

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第九十七話……国会議員『小池勝』とクリームヒルト

――生体反応同期装置。


 過去の人工知能の反乱により、軍事兵器や宇宙船、とくに星間航行艦は生体認証を必要とした。

 ハンニバルの始動キーは私の生体反応そのものであり、私が生物的に殺されるまで、この船が奪われることは無い。


 私は手をハンニバルの認識センサーにかざす。


【同期完了】……艦長ヴェロヴェマを認識いたしました。ご命令を!


「ハンニバル発進!」

「了解! 発進します!」


 アンドロイドというよりは、バイオロイドというべき副官であるクリームヒルトさんが下士官に発進を伝達する。

 彼女の中身が何かは知らないが、外殻は生物的な皮膚に覆われている。


 我々は新たな資源を輸送すべく、中継地である準惑星ツーリアにピストン輸送による資源搬送を続けていた。




☆★☆★☆


「……防衛施設の建設の為、アルデンヌ星系の惑星カイの立ち退きを命令する!」


「はっ!」


 総司令部から指令が来る。

 食料資源を開発していた惑星カイが、帝国軍により立ち退き命令を受ける。

 立ち退き保証額は150億帝国ドル(1兆5000億円)。

 食料高騰の折、帝国中央政府は、私の作った田園地帯に高額の保証を払ってくれた。


「移民希望の方に輸送船を手配しておいてね!」


「了解ポコ!」


 この時はアルデンヌ星系を手放すことに何ら違和感は無かった。

 それよりも辺境域での資源輸送に必死だったのだ。




☆★☆★☆


(……それより、2週間後。)


 現実世界のアパートでの早朝。

 そとはシトシトと雨が降る。



――PIPIPI


 シャワーを浴びた後に、携帯電話に着信が光る。



「……もしもし」

「あ、カズヤ! TVをつけてニュースを見ろ!」


 兄だった。

 慌ててTVをつける。


『本日、午前4:30、N国政府と同盟国A国は宇宙人より攻撃を受けたことを発表します!』


「……は?」


 TVで臨時速報を繰り返しやっている。

 さらには、世界各国の空軍基地が攻撃されている映像が流れた。



「カズヤ! 攻撃している相手はだれだかわかるか?」


「……え、えと、ゲームの世界のグングニル共和国軍そっくりです……」


「やっぱりな……」

「それから、お前のとこにお客さんが来るから、お茶くらい出しとけよ!」


「え? そうなの?」


 それだけ言って、兄は電話を切った。




☆★☆★☆


 お客が来ると聞いたので、ゲームをせずに1時間くらい待っていると……。



――ピンポーン


 玄関のチャイムが鳴る。



「おはようございます!」


 やってきたのはスーツの姿の小太りの中年の男。

 挨拶を返すと、秘書らしき方が名刺をくれた。


 ……政府諮問機関委員、『NJ党』小池勝。

 国会議員様だった。



 ……やべぇ、安いお茶しかないぞ!? Σ( ̄□ ̄|||)




☆★☆★☆


 小池議員は部屋に上がるなりこういった。



「クリームヒルトさんはどこかね?」

「……ぇ?」


「君のお兄さんに聞いたんだよ、彼女が敵の情報にとても詳しいとね……、悪いが君には用はないんだ、早く紹介を頼むよ!」

「あ、少し待ってくださいね……」


 携帯電話でクリームヒルトさんの携帯電話に電話する。



――プルル……ガチャ。


「提督、御用事ですか?」

「ああ、私じゃなくてね……」


 小池議員が奪うように携帯電話を受け取る。


「……君には内密の国家機密を話すから、少し席を外してくれ!」

「はぁ……」


 小池議員は1万円をくれた。

 外でお茶でも飲んでてほしいとのことだ。


 まぁ、ウチのアパートに貴重品はないから、少し外で待つことにした……。


 コンビニで食料を買い出し、自販機で缶珈琲を買って、部屋に戻ると……。



「……いやぁ、君にはこれからも情報収集を頼むよ!」

「あ、あと、クリームヒルト女史にはくれぐれも失礼のないようにな!」


 笑顔の小池議員に肩を叩かれる。


 ……どうやら、私には向こうの世界でクリームヒルトさんと繋ぎをして欲しいらしい。

 そもそも、議員は向こうの世界がゲームだとか知っているのかな?


 それだけ言うと、小池議員は急いで秘書と共に黒塗りの車で立ち去っていった。



 ……まぁ、結局、この世界の私には誰も用事は無い様で……。

 用事があるのはヴェロヴェマさんですよね。



 なんだか、ゲームの中の自分に対して嫉妬してしまう。

 なにはともあれ、私はゲームの世界に戻ることにした。



 ……まぁ、なんだ。

 あのゲームの世界は全くの仮想世界ではないということが、遂に証明されたようなものだった。




☆★☆★☆


「お帰りポコ!」

「おかえりなさいですわ!」

「おかえりニャ!」


「た~だい~ま♪」


 ふざけた挨拶をする私。


 副官殿に確認すると、アルデンヌ星系はすでにグングニル共和国軍に占領されているということだった。


 ……やっぱり、件のワームホールが原因かな?



「グングニル共和国の放送を取り寄せてくれ!」

「わかりましたわ!」


「……グングニル共和国の報道をモニターに流します!」


 …………。

 ……。


 モニターにグングニル共和国の政府報道官が映る。



『……我々はもうすぐ60億人を超える安価な労働力を手にすることになるだろう!』



 ……共和国の人口は二億。帝国は一億。教国は8000万。

 星系間熱核戦争で戦前の1%以下にまで減っていた人類である。


 安易にアンドロイドにも頼れない今、未曾有の生産労働力の入手が模索されていた……。





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― 新着の感想 ―
[良い点] むむう、なんともかんともエラいこっちゃなことに……! てーへんだ!
[一言] 地球が危機だってのに、ヴェロヴェマさんの正体も分からないようじゃ、先が思いやられます。
[一言] 地球人が安価な労働力にされちゃううう!!!! 助けてヴェロヴェマアアア!!!!
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