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宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――  作者: 黒鯛の刺身♪
【第二章】赤い地球

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第七十八話……少女艦長候補生

 私は少将に昇進した。


 表側の理由としては、ドラグニル星系の反乱鎮圧などの功績であるが、裏側の事情としては、帝国の戦力の損耗がかつてないほどであったことが理由だった。


 ヴェロヴェマ子爵家の新造艦船を戦力化したい帝国中枢の思惑が透けて見えた昇進だった。

 エールパ星系の艦隊司令官が負傷したのも影響し、私はエールパ星系の艦隊司令官を再び務めることになっている。

 この件は、蛮王様の希望もあったのだろうと推察された。




 ……まぁ、それはさておいて問題なのが、今回の上司である。


 以前の敗戦の責をとり、予備役になっていたリーゼンフェルト中将が再び軍に復帰。

 私達の上司である、第五星系管区軍団長となっていた。


 帝国の重鎮であるクレーメンス公爵元帥の娘婿という立場からすれば、軍への復帰は当然だったのかもしれない。




「ヴェロヴェマ君! ワシが復帰したからにはそれなりの戦果が上がらねばならん!」


「……はぁ」


 帝都総司令部バルバロッサの会議室で、リーゼンフェルト中将の相手をする。



「わからん奴だな! 私は義父上の後を継がねばならん、元帥にならねばならんのだよ!」


「……はい」


 リーゼンフェルト中将は以前、カリバーン帝国参謀大学校を首席で卒業した俊英らしいが、いまはその良い部分が陰っているようだった。

 復帰後の手柄を焦る様子がありありと見えた。



「……で、だな、スプーン星系を再奪取したいのだが、どう思う?」


「戦力がありますれば、それもよろしいかと」


 カリバーン帝国は以前に陽動作戦で占領したスプーン星系を共和国に取り返されていた。


 あまり価値があるとは言えないスプーン星系の争奪戦に、帝国軍は多数の死者を出していた。

 私が指揮する予定のエールパ星系艦隊も現在、無傷な船が一隻もいない状態だった。


 ここ数か月の共和国との激しい戦闘で、帝国軍の艦艇の48%は何らかの損害を受けていたのだった。



「だからだな、君の領地の近くの辺境星域連合の艦隊も動員してほしい」

「……そのための君の現場復帰だよ、少将昇進の件も私の口添えだよ、君……」


 ……どうやら、リーゼンフェルト中将の出世のための私の少将昇進だったらしい。


 この後も恩着せがましいことを、次々に言われた。




「中将閣下! まだ会議ですの?」


 見目麗しい女性たちが突如会議室に入ってきた。



「いやいや、もう終わるぞ! ではヴェロヴェマ君頼んだよ!」


「はっ!」


 リーゼンフェルト提督は沢山の美女たちに手を引かれ、会議室を去っていった。

 ……どうやら、噂通り女性に弱い提督の様だった。



 私はバルバロッサの総司令部の作戦室を後にして、考え事をしながら廊下を一人歩いていた。

 リーゼンフェルト中将のことはいかにしたものかと……。



「少将閣下! お願いの儀が……」


「ん?」


 突如、声をかけてきたのは数名の軍服を着た少女たちだった。

 ……だれだろ? この人たち。



「どちら様で?」

「はっ! もとスチュワード伯爵麾下の者です!」


 ……ああ、思い出したぞ。


 あの少女しか軍務につかせない極端な政策の伯爵のところの元司令や元艦長さん達だった。

 どうやら捕虜から軍に復員したらしい。



「で、ご用は?」


「……はっ、少将閣下は新規艦艇の艦長候補を探しているとのお話をお聞きしておりまして……」


 確かに新造艦の艦長を誰にしようかと思ってはいた。

 ……しかし、なぜそんな情報が洩れているのだろう?



「私たちを艦長に雇ってください!」


「!?」


 確かに、経験者は貴重な戦力だった。


 ……しかし、これってどうなんだろうね?



「……希望はわかった、追って通知する!」


「「「はっ!」」」


 ……とりあえず、その場はそのままにしておいた。




☆★☆★☆


 ホテルに帰って、幕僚たちに少女士官たちの件を相談してみた。



「提督! で、少女たちの処遇はいかになさいますか?」

「どうするポコ?」


「どうしよう?」


 皆にも答えがあるわけでもないらしい。



「とりあえず使ってみるメェ!?」

「こき使ってやるニャ!」


「助手が欲しいクマ!」


 新造艦船を預ける士官の当てがないことは確かだった。

 皆も手が足りているという訳ではなさそうだ。



「……試用期間つきで雇うかぁ……」


「それがよろしいですわね!」

「お試し期間ポコ!」




 その日のうちに、少女たちをホテルの晩御飯に招いた。

 

 今日のメニューはエビフライ。

 食料不足のこの世界では、かなりの御馳走だった。

 


「お替わりポコ♪」

「エビフライ美味しいニャ♪」


「タルタルソース美味しいメェ~♪」

「おいしいですわ♪」


 幕僚の皆さんご満悦の様だ。

 もちろん私もご満悦だが。



 少女たちの話にも耳を傾ける。


 ……どうやら、元敵軍といった過去があるので、首都星系にいるのは非常に具合が悪いとのことだった。


 そういう事情もあって、辺境星域への赴任が多く、人族ではない私に声を掛けたらしかった。



「まぁ、一応は試験採用ということで……」


「「「有難うございます!」」」


 ……なんだか不況期の人事採用側の気分になった日だった。




 翌日には、ハンニバルはツエルベルク星系を出立。


 三度目のエールパ星系艦隊司令官新任の挨拶の為、惑星リーリヤの蛮王様の元へ急いだ。



 ……実に久しぶりのエールパ星系だった。




挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 昇進もしたらしたで、面倒くさいことが増えていきますなあ……。 そしてこの調子でいくと、ますます加速度的に増えていきそうな予感……! 大変だなあ、提督……。
[一言] リーゼンフェルト中将厄介だなあw でもこういう上司いますよねw そして少女艦長候補生ゲットだぜ!w 夢が広がりんぐ!w
[一言] いろいろ苦労もありますが、楽しそうではあります。
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