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宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――  作者: 黒鯛の刺身♪
【第二章】赤い地球

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第六十六話……スツーカ大佐のお願い事

「私はヴェロヴェマと申します」


私は半魚人の方に自己紹介をする。



「お食事をお持ち致しましたわ♪」

「コーヒーもいれたポコ♪」


 すかさず、副官殿がランチプレートを持ってくる。


 ……ハンニバル食堂特製、合挽肉のハンバーグスパゲティーを食らえ。

 私の心がそう叫んだ。


 彼は疑心暗鬼ながらに、食べ始める。



「……う、これは美味しい!!」

「でしょ?」


 ……よし、ハンバーグ接待作戦成功。


「まあまあ、お酒もどうぞ!」


 お酒も注ぎ、ヨイショする。


「いやいや、これは申し訳ない」


 所詮、世の中接待よの……。

 元営業マンのどす黒い私の計略、美食接待だった。

 



(……20分の会食ののち)



「……では、我が王であるスツーカ様にお会いなさるとよろしかろう」


「それは有難いですな!」


 食事後に和気あいあいの雰囲気の歓談となり、相手のリーダーを紹介してもらえることになった。




☆★☆★☆


 ハンニバルは双胴部分を分離し、全長250mのコアシップの姿となる。


 全長800mはあまりにも大きいため、分離できるようにしてあったのだ。



「潜航モード用意良し!」


「潜航開始!」


 半魚人さんの道案内のもと、海中を進むハンニバル。

 窓から外をみると、沢山の奇麗で美味しそうなお魚が泳いでいた。


 海嶺にそって暗い海溝に潜ると、そこにはドームのようなものの中に建物が立ち並ぶちょっとした海底都市だった。



 船着き場のようなところに、ハンニバルを帰港させる。

 中にはいるとそこには空気があった。

 空気を確認したため、装甲服のヘルメットを脱ぐ。



「不思議なところポコ」

「楽しそうなところですわね♪」


 海底都市には、人魚のような人や半魚人のような人々が数多く歩いていた。

 きっと、竜宮城ってこんな感じなのだろうか?



「こちらでございます」


 大きな宮殿のようなところに案内されると、中は見たことのある機械だらけの部屋だった。

 これは、もしかして軍艦か軍用施設!?


 ……我々に緊張が走る。



「こちらがスツーカ様にございます」


「ようこそ、客人殿!」


 話しかけてきたのは、カプセルのようなものに入った脳みそだった。

 機械仕掛けの暗視装置がこちらを認識するように、ときどき怪しい光を放つ。



「私はカリバーン帝国准将、ヴェロヴェマと申します」


「!?」


 ……?

 反応がおかしい、急に相手は困ったような雰囲気になった。



「じゅ、准将閣下ですと!?」


「……はぁ」


 素っ頓狂な声で応じると、



「た、確かにその襟章は……」

「……失礼いたしました。小官はカリバーン帝国大佐、スツーカと申します」


「うん??」


 なんだか、辺境地に来たのに階級章が役に立ったようだった。




☆★☆★☆



 話を聞くところによると、このカプセル脳みそさんは、もとカリバーン帝国の軍人さんだということだ。

 はるか大昔に遭難し、ここに住み込んでいるらしい。

 彼が、半魚人さんに言葉や文明を伝えたらしかった。



「スツーカ様! こやつらはいったい?」

「控えろ馬鹿者が!!」


 脳みそに一喝され、周辺の半魚人さんがビックリする。



「はやく宴の用意をせんか!」

「私に恥をかかすな! ヴェロヴェマ殿は、私より偉いのだぞ!」 



 ……その後、立場が逆転し、こちらが人魚さんの御酌を受け、歓待されてしまった。

 軍の縦関係は、このように強いものなのか……!?




☆★☆★☆


 結局、彼らは私の指揮下に入ると言ってくれた。

 悪い話でもないので受け入れる。



「准将閣下! 実はお願いしたい儀が……」


「なんでしょう?」


 ホタテ貝の水着姿の人魚さんにお酌をうけ、まんざらでもないような私。


「もっとお酒もってきてポコ♪」


 &酔っぱらいタヌキ一名と醒めた副官殿。



「この先に巨大なタコがいるのです! 是非やっつけていただきたい!」


「任せてください!」

「提督! 安請け合いをなさっては!?」


 副官殿に諫言されたが、私は簡単に応じてしまった。

 ……まぁ、普通に考えて宇宙戦艦がタコに負けるはずがなかったのだ。




☆★☆★☆



「トリム正常!」

「現在、深度16000m」


「艦内圧力上昇!」

「全区画閉鎖! 居住区画圧力正常!」


 『ほれみたか』と言わんばかりの副官のクリームヒルトさん。

 ……安請け合いした相手は、なんと超深海にすむ大タコだった。



「深度24000m」

「外殻装甲区画浸水!」


「排水急げポコ!」


 敵の攻撃と違い、水圧は全方向から来る。

 全方向から絶えず押し寄せる水圧には、最新鋭の電磁障壁も、強力な重力シールドも無力に近かった。



「深度35000m……更に降下いたします!」

「耐圧シャッター閉じてください!」


「了解!」


 一体どれだけ深く潜るのだろう?

 外は光が届かず真っ暗で、深海魚も泳いでいなかった。


 用意された地図に記された海溝をさらに深く潜ると、大きな空間に出る。




「左舷にエネルギー反応来ます!」

「ポコ!?」


「電磁障壁展開!」


 激しい音響と閃光が深海に走る。


 真っ暗な暗闇から這い出てきたのは、なんとレーザー光線を放つタコの化け物だった。


 足の長さだけでも400mはありそうなタコだった。

 頭の部分には巨大な貝殻も背負っている。



 ……な、アホな。


 私に刺さる副官殿の目線が痛かった。

 世の中には宇宙戦艦が苦戦するようなタコもいるということだった。





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― 新着の感想 ―
[良い点] いやー、まさかまさかのまたまさか、ですね! たまにはこういうのも、艦隊戦とはまた違った趣があっていいですやね。
[一言] どんな世界でもモノを言うのは接待と階級ですよねw そしてフィクションの中のタコは総じて強い説( ˘ω˘ )
[一言] いやあ、高くついた接待になりましたね。 思わず「あ せったい」
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