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宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――  作者: 黒鯛の刺身♪
【第一章】青い地球

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第六十一話……再びの目薬

 我がエールパ星系艦隊は辛くも勝利し、スプーン星系を占拠した。

 後続の帝国軍の軍政部隊が来たため、占領政策は彼らに任せて撤収した。


 ……その後。

 蛮王様の招きに応じて、惑星リーリヤにて祝勝会を開いた。



「今回の戦いは皆さんの勝利であり、私一人での勝利は到底ありえません……」


 メモを読みながらありきたりのスピーチをした。


 一応は宴席の主人公だったが、すぐに宴席は政財界の大物たちの交流の場に代わった。

 私はいわゆる酒の肴だったらしい。



☆★☆★☆


「う~辛い」

「……飲みすぎたかな?」


 タダ酒をたらふく飲んだ私は、とってあったホテルの一室に戻る。


 靴を脱ぎ棄て、部屋にて煙草をふかす。

 気だるくも、心地よく酔いが回る。


 ……至福のひと時だ。

 どうも宴席は肩がこる。

 私は一人の方が性にあっているのかもしれない。




コンコン。


『……だれだろう?』


 深夜、ホテルの扉をノックする音がした。

 気持ちが悪いので、明日にしてほしい。


 悪いがいないふりをした。



――が、


「カズヤ様、いらっしゃいますか?」



 『……ぇ?』


 慌てて鏡を見る。

 一つ目巨人の姿だ。

 肌も緑色でゲームの中に違いない。


 なぜ私のリアルの世界の名前を知っている!?



 煙草の火を消し、急いでドアを開ける。

 そこには背の小さな老婆がいた。



「へっへっへ、こんばんは」



『!? 以前こんなことあったぞ!』




☆★☆★☆


 ……私は老婆を部屋に招き入れ、席を勧めた。



「お邪魔しますよ」

「どうぞ」


 備え付けのお茶をお出しし、すぐさま質問をぶつける。



「以前もお会いしましたよね。お婆さんはだれなんです?」


「女神じゃが!?」


「……へ?」


「女神ルドミラじゃよ」


 我こそはルドミラ教国の主神たる女神を自称する老婆。

 髪は白く細く、顔はシワシワな女神様だった。



「……、ではなぜ私の名前を知っているのです?」

「……女神じゃからの……」


 そう言って、ゆっくりとお茶をすする老婆。

 ……そう答えられては、何をどう聞いて良いかわからない。



「さてこの前、お金を貰ったのに占ってやれんかったのでな……」


 老婆はおもむろに二枚のカードをテーブルに置いた。

 片方は赤く、片方は蒼かった。



「どちらか好きな方を選べ」


 私は酔っているのもあり、何も考えず、あっさりと赤いカードを指さした。



「赤い方じゃな、よっと」


 老婆が赤いカードをめくる。


 カードの裏は赤色で描かれた地球のような絵だった。


 ……そこからすぐ、私の意識は眠気で深い闇に沈んだようだった。




☆★☆★☆


 現実世界のアパートにて起きる。

 空は良い天気だ。


 うぇ……、飲みすぎで気持ちが悪い。

 ゲームの中の二日酔いが、現実世界の体にも波及したようだ。



――ピンポーン

 玄関のチャイムが鳴る。


 宅配便だった。

 サインを書き、荷物を受け取る。



 荷物の差出人は再びの『VR・AVS』社。今やっているVRゲームの運営会社だ。


 メッセージカードには『当選おめでとうございます』と書かれている。


 箱を開けた中身は目薬だった。

 眼も疲れていたので、有難く眼薬をさす。



『!?』


 目薬をさした後、以前も貰った目薬をさしたことを思い出す。


 慌ててPCの電源を入れ、ゲームの中の自分のステータスを覗き込んだ。




【DATE】


名前・ヴェロヴェマ


提督レベル・A+級

特定スキル・羅針眼

A級スキル・魔眼

乗艦・装甲戦艦ハンニバル

階級・准将

爵位・男爵

領地・衛星アトラス、衛星ガイア


…………。

……。



『……!? A級スキル魔眼ってなんだ??』


 マニュアルを読むが、相変わらず詳しいことは何も書かれていない。

 私は少し考えた後、悩むのを諦めた。




 布団を干した後、少し歩いて駅前の牛丼屋で昼食をとる。


『……MASA中央宇宙局の報道によりますと、地球に巨大小惑星が近づいているとのことです……』


 牛丼屋に備え付けのTVでニュースを見る。


 もし、小惑星が地球に極端に近づけば、A国が戦略ミサイルで進行方向を変えるらしい。

 ……なんでもできる世の中だな。



 牛丼大盛りの卵付きを食べた後、お金を払って外に出る。

 見上げると、どこまでも続く青空だった。



 それから、のんびりとアパートの自室に帰り、再びVRゲーム用のカプセルに入る。


 カプセルを内側から閉め、いつもの赤いボタンを押す。

 心地よい冷たい白煙に包まれ、意識が遠ざかる。



――天賦スキル

【魔眼】を手に入れました。




『……知っているさ』


 誰にというわけでなく、一人呟いた。




☆★☆★☆


 ゲームの世界は、再び造船活況となっていた。

 現在、グングニル共和国はカリバーン帝国とルドミラ教国の二方面で大規模な戦闘を行っている。


 軍籍のみならず民間の宇宙船も多くが破損し、船や鋼材の値段は跳ね上がった。



「お金持ちポコ♪」

「うれしいにゃ♪」


 再びの戦時景気で活況を呈するハンニバル開発公社。


 ゲームの世界だからと、素直に活況を喜んでおく私。

 余剰な資源を売り払い、返済資金にメドを立てる。



「……いまのうちにお金を返さないとね」

「珍しいですわね……」


 クリームヒルトさんが珍しいものを見るような眼で私を見る。

 ……そりゃあ、借金を返すときもありますよ。




 前回の戦いで、拿捕した船が多かったのも幸運だった。

 巨大な戦果として、巨大宇宙母艦ハボクックを衛星リーリヤに曳航。



「大きいクマー!!」


 クマ整備長殿がその大きさに驚く。


 ドックで分解してみると、何とこの船は貴重なエルゴ機関を4つも搭載していた。

 ……そりゃあ、防御スクリーンが堅いわけだ。


 帝国本国の船籍事務所に、私の名前で新規のエルゴ機関の保有登録をする。

 エルゴ機関は貴重なので、所有は登録が必要だったのだ。



 ハボクックは部品取りをした後、残念ながら解体することにした。

 あまりにも巨大で、維持費が払える見込みが無かったのだ。




☆★☆★☆


「……さてと、ログアウトするか……」


 艦長室で一人ログアウトしようとしたが、エラー表示がでる。



 『……なになに?』


【ログアウトに必要な電圧が不足しています】


 ……って、リアル社会は停電でもしてるのか!?





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― 新着の感想 ―
[良い点] 魔眼……こりゃまた性能が気になるところ……。 でもってやはり活況になりましたねえ。 これで借金生活脱出なるか!?……って、そうカンタンにはいかないのがきっと世の中……。(笑)
[良い点] ログアウト出来ない!? 面白くなってまいりました!! 果たして主人公は世界にどのような影響を!?……
[一言] ええっ? 電圧が不足するとログアウト出来ないんですか?
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