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宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――  作者: 黒鯛の刺身♪
【第一章】青い地球

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第二十四話……造船景気

 みゃあみゃあとカモメが鳴き、槌の音も勇ましい。



 ここ惑星リーリヤの海岸水上型宇宙港は活況を呈していた。


 カモメが狙う漁船が入港する海上船の港はとても大きく、実はそれに小さく間借りする形で宇宙港は存在している。

 惑星リーリヤの漁業は一大産業だったからだ。


 この世界の構造は、今の我々が考えるよりもずっと食料は貴重である。

 干物や缶詰めなどの水産加工業も盛んだった。




 のんびりと海を進むタグボートの後ろで、宇宙船建造ドックのいくつかは完成にこぎつけ、順次宇宙船の建造に着手していた。


 カリバーン帝国政府は、先の敗戦の汚名をそそぐべく、宇宙船の増産体制を発していた。

 しかし、折からの資源高騰で、造船計画は遅々として進まない。

 更には軍の民間船徴用によって、民間産業の停滞を招き、より一層の宇宙船不足に悩まされていた。

 これは多少の差こそあれ、グングニル共和国も同様である。


 長く続く戦争により、文明のある全宇宙において、宇宙船はいくらあっても足らない状況だったのである。



 半面、惑星リーリヤは近場の衛星アトラスより、ミスリル鋼などの資源を安価に手に入れていた。

 それを伝え聞いた商人たちは、次々に惑星リーリヤへビジネスの為のオフィスを立ち上げていた。

 造船産業が沢山の人に職を与え、その余波は他の産業にも波及し、惑星リーリヤは好景気を迎えていた。



 惑星リーリヤの現状を見た帝国政府は、蛮王ブルーに侯爵の地位を授ける。

 そして、エールパ星系の支配権も正式に与え、彼の感心を帝国に繋ぎとめようとした。


 それに従い、惑星リーリヤの宇宙防衛艦隊の実質的な提督である私も中佐に昇進した。造船産業様さまである。戦働きだけが提督の仕事ではないのかもしれない……。



 産業の躍進は、同時に犯罪も連れてきた。


 ……大規模な宇宙海賊の出現だった。




☆★☆★☆



「ヴェロヴェマの旦那ぁ~」


 惑星リーリヤの街中でラーメンを啜っていたら、星間ギルドの職員さんであるウォルフさんに話しかけられた。

 最近は惑星リーリヤの星間ギルドの出張所が大きくなって、職員さんも100名以上いる。



「なんでしょ? 急ぎの小惑星案件です?」


 私は拉麺の器を両手で持ったまま、ナルトをくわえながら答えた。

 実は私は【小惑星キラー】の二つ名を頂くほど、小惑星破壊の仕事に打ち込んでいた。きっと小さな小惑星だと、私の名を聞いたら逃げ出すに違いない……。



「いやいや、宇宙海賊のほうでさ!」


「ぇ? それはマルガレーテ嬢に言ってよ!」


 ……餅は餅屋なのだ。

 確かに私は小惑星破壊に限っては銀河一巧いだろう。動かない石ころ相手なら、もはやS級提督と言っても過言では無い成績をあげていた。



「いやいや、相手がおおいんでさ! 旦那!」

「反撃してくる相手は苦手なんだよなぁ~」


「戦争屋がなにいってんだい!」


 実は宇宙文明有史以来、宇宙軍の主な仕事は宇宙海賊退治である。間違っても戦争ではなかった。

 民間の航行の安全を守ることこそが、宇宙軍人の真の姿なのだ。


 間違ってもサボれる案件ではないと、ウォルフさんに怒られた。

 ……たしかに、武器を持っている人が戦うべきだ。今の私の姿はギガースだけど。




☆★☆★☆


 衛星アトラスに帰り、タヌキ軍曹の家で作戦会議を開く。

 彼の家は宇宙港のとなりで便利だからだ。

 本人の承認は、実は得ていないが……。きっと大丈夫だろう……。

 机上の作戦パネルの周りにみな席に着いた。



「敵が多すぎるニャ!!」


 宇宙海賊対策部長様がおかんむりだ。

 敵が多すぎて手が回らないらしい。

 手が回るなら、私にこの手の仕事は回ってこないはずだ。

 マルガレータ嬢は依頼報酬が大好きだからだ……。


 ……しかし、宇宙港に泊まっている彼女の船は傷だらけだ。

 前面のみならず、側面や後方からの被弾の痕も見られた。

 本当に苦戦しているのだろう。

 


「宇宙海賊の活動範囲は、この円の範囲ポコ!」

「この円の中心に近いところに、宇宙海賊のアジトがあるはずですわね」


「お肉の倉庫はどこ辺りメェ?」

「それよりも金庫はどこニャ?」



 ……敵は宇宙海賊。

 さして強くないかもしれないが、地形を生かしたゲリラ戦が強い。


 彼等の巣窟は主に辺境星系シャーウッドの外縁の小惑星帯だった。

 ここは磁場も強く、センサー類も当てにならない。

 下手に踏み込むと、思わぬ奇襲を食らうかもしれなかった。


 準備は多めにしておかなければならない。

 ゲリラ戦対策って何をすればいいのか分からないけれども。


 更には、平和的な解決も相手が望めるなら行うべきだ……。

 ……好き好んで残忍な海賊になる人も少ないだろう。



 ……作戦会議は深夜まで続き、お目当ての夜食は美味しい牡蠣鍋だった。


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― 新着の感想 ―
[一言] もう中佐になってしまったのですかぁ。順調ですね。 いろんな食べ物が出て来ますねぇ。軽く飯テロですね。 戦闘描写を書きながら、さりげに読者にまで攻撃するとは、なんという……。 牡蠣鍋かぁ〜は…
[一言] 着々と出世してるうう!!!!(歓喜) でもゲリラ戦は厄介ですね……。 果たしてどう出るのか!? 楽しみです!
[一言] ゲリラ怖い。アメリカもソ連もナポレオン(酒ではありません) も勝てなかった相手です。
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