7話
※アップしていたものが重複だったため、投稿誌直しております
「リウィアは察しがいいね。そう、僕はメギドラからの使節団の一員なんだ。君に会えるかなって思ってさ」
「……」
「君の名前は覚えていたし、貴族の令嬢だろうと思っていたんだ。侍女と騎士を連れていたからね」
「……」
「だからこの国に来る前に貴族名鑑を調べたんだ。それでここに来た。……すぐに会えて良かった」
「……どうして」
どうして、そんなに私を探したの。
どうして、私だってすぐにわかったの。
どうして、嬉しそうにしているの?
聞きたいことは山ほどあるのに、何から聞いたらいいのかわからない。
聞いたところで私もどうしていいのか、まるでわからない。
だから、言葉は続けられなかった。
テオも、急かすことはなかった。
どちらからともなく歩き始めて、私たちは無言のまま歩を進める。
ちらりと隣を見ればとても上機嫌なテオがいて、私はいたたまれない気持ちになった。
幼馴染みに再会できて、さっきまで浮かれた気持ちが嘘のように萎んでいる。
だって、しょうがないでしょう?
すごく立派に成長して、かっこよくなったテオ。
手入れされないパサついた髪を適当に括って、すっかりみすぼらしくなった私。
出世して使節団の一員にまでなった彼は、あの時誰かに守ってもらわなきゃいけない弱々しかった面影なんてなくて……今じゃ逆転しているなって思うと、居心地が悪かった。
(別に、悪いことなんてしてないけど)
むしろ誰よりも真面目に働いてきたって、領地運営は私が支えていたんだって自負はある。
それがたとえ押しつけられた業務だったとしても、だ。
でもキラキラした人を前にすると、惨めな気持ちになる。
ずっとずっと、そうやって見下されてきたからだ。
美しく装った義母と義妹、そして私の婚約者になるという人から――みっともない、みすぼらしいと散々言われてきたことが胸に刺さった棘となって、抜けないまま。
(負けてなるものかってずっと彼らの言葉を気にしないように、気にしないようにしていたけど)
テオを前に感じるこの胸の痛みは、彼と私の成長の……あまりの差に、悔しい気持ちになったからだと思う。
彼は悪くないし、私も悪くない。
「テオは」
「うん」
「……母国で、大変じゃなかった? 見た目、その……人間族と同じような姿に見えるし」
「うん? ああ、大丈夫。僕はこう見えて強いんだよ。見た目は……うーん、そっか、人間族にはわからないよね。僕らは互いにフェロモン感知があって一目で相手が獣人族かどうか見分けがつくんだ」
「そうなの?」
「そう。見た目ではさほど人間族と変わらない連中も多いよ。鳥族とか、蛇族もそうだし……特徴が表に出るタイプと出ないタイプがいるんだよね」
「そうなんだ……知らなかった。じゃあ、テオは」
「うん、僕は基本的には目立たない方。種族的にはちょっと珍しいから、あまり公にはしていないけどね」
何の種族かは聞いてくれるな、そう釘を刺されたような気がした。
まあそうだよね、言いたくないことや聞かれたくないことってあるものね。
(今の私がまさにそうだもの)
再会した幼馴染み、だけど面影があるからと言って十年以上会っていなかった相手だ。
会いたかったと言われても喜びよりも困惑の方が勝る状況では余計なことは何一つ言えない。
早く、村に着けばいい。
でも村に着くまでに、彼にはここで私と会ったこととかを秘密にしてもらわなくちゃ。
そんなことをただひたすらぐるぐると考えるのだった。




