4話
私の前に降り立ったのは、見たこともないほど綺麗な男の人だった。
陽の光を受けた黒髪は青みがかっていて、目はキラキラとした金色で……シンプルな旅装なのに、この人はきっと貴族、それも高位の人に違いないと思わせる存在感と気品があった。
そんな人が目を細めて、本当に本当に嬉しそうに微笑んだのだ。
その破壊力ったら!
義母と義妹もかなりな美形だと思うし実際そうだと思う。
行き交う人たちが振り向くくらいの美女たちだ。
彼女たちが社交界に出てからは引っ切りなしにラブレターが届いているのがいい証拠。
けれど、この目の前の男性は男性だとわかるのに、そんな彼女たちよりもずっと美しい。
男性にその表現を使うのが正しいのかはわからないけれど。
「探したんだよ、リウィア。君が今もお守りを持っていてくれて良かった」
「えっ」
思わず呆然と見蕩れていると、彼はにこっと笑って懐から何かを取り出した。
それは、鈴だ。彼の手には小さい、鈴だった。
「えっ!」
思わず私もお守りを取り出して見比べる。
私のものに比べると幾分かまだ塗装が残っているけれど、同じ形で……いや鈴なんてどこにでもあるからこれは偶然。
偶然……なわけない!
だって私の名前も呼んでいたし、わざわざこんな美形が私なんかに嘘つくためにこんな古ぼけた鈴を出してくる意味がわからないもの!!
「えっ……」
どうしよう、予想外のこと過ぎて反応に困る。
あの子は私と同じ位の年齢だった、の、なら……確かに彼が大人になっているのは当然のことで、でも待って?
「探した……?」
「そうだよリウィア。その様子だと僕のこと覚えてくれていたんだね。嬉しいな」
「えっと……えっ?」
「二人でよく手を繋いで走ったろう? 花冠の作り方を教えてくれたのはリウィアだったよね。僕は上手にできなくて、綺麗な花冠を君に作ってあげたかったけど……事情があって会えなくなってしまった」
ニコニコと彼が語る思い出は、私とあの子しか知らない出来事だ。
いや名前を思い出せないし私の中の思い出は〝楽しかった〟程度でもはや朧気なのでそんな詳細に覚えられていたことの方にびっくりして言葉も出ないんだけど、これはどうしたら正解なんだろうか?
「あ、あの……えっと」
「覚えていないかな。小さい頃に一緒に遊んだテオだよ」
「テ、テオ。……えっと、ご、ごめんなさい……?」
「まあ随分と前のことだからね。覚えていなくても仕方ないか……でも、今度は忘れないで欲しいな」
「え、ええ……」
なんだろう、優しい声に言葉なんだけど、圧を感じる。
名前を忘れちゃった私が悪いんだけども!




