25話
(告白するのとは別に感謝の気持ちも伝えたい。でもそのための品物は一人でじっくり選びたいじゃない)
体格的にはイェルクさん、レネさん、クルトさんだったら一緒にお店にも入れたと思う。
そうしたら相談しやすいだろうな。
でもイェルクさんは親切だけど口数が多くて落ち着いて選べない気がする。
逆にレネさんはまだ帰らないのかって無言で急かされそう。
クルトさんは……うーん、邪魔はしないけど、あとでテオを前に買い物に言ったことを普通に話しそうっていうか……。
(何がいいかな)
どうせだったら普段から傍に置いてもらえるものがいいと思う。
たとえフラれたり、将来的に一緒にいられないのだとしても……テオが私にあのお守りをくれて、それがどれほど私の心の支えになってくれたのかを伝えたい。
(ブローチ……ブレスレット? ラペルピンとかどうかなあ)
メギドラの人は装飾品をよくつけるってイェルクさんに教わったんだよね。
昔は部族ごとに代表者が身につける装飾品で豊かさや権力を示した名残なんですって。
装飾品を贈ることは親しい間柄であることを示すとも聞いたから、テオに告白するのも含めてアクセサリーがいいかなと思ったんだけど……。
(『そんなつもりじゃなかった』ってフラれたら、さすがにアクセサリーはきまずいかしら……)
感謝の気持ちも含まれているから、しまい込まれるとさすがに悲しいな……!
それに聞きかじった程度のメギドラの知識に則ってアクセサリーを用意するなんて、恋に浮かれているって丸わかりで恥ずかしい気もするし……。
目についた、可愛らしい猫の置物をつついてみる。
レネさんはこれを見てちょっと嫌そうな顔をしていたっけ。
なんでも、故郷にいる幼馴染みを思い出して腹が立つとか言っていた。
こうして思い返してみると、使節団のみんなとの思い出が少しずつ増えていることを実感する。
「あ……」
ふと目についたのは、カフスボタンだ。
私の目の色に似た、明るい緑の色をしたそれ。
このユノス王国では女性から男性に告白する際、定番の贈り物。
ちなみに男性から女性の場合は恋人の年齢分の本数で揃えた花束が定番だったりする。
……あくまで私もオルヘン伯爵家の若いメイドさんたちの世間話で聞いただけだから、どこまで正しいかはわからないけど。
「あの、すみません! こっちの羽ペンと、その……このカフスボタンください。贈り物用のラッピングをしてもらいたくて……」
テオがカフスボタンの話を知っているかは知らない。
でも、受け取ってもらえたら嬉しいし……羽ペンは普段から使えるデザインだし、きっと変には思われないはず。
告白の結果次第では受け取ってもらえないかもしれない。
でもそうしたら、それはそれで私の思い出として大事に使えるだろう。
「……いずれにしても、前に進まなきゃ」
何につけても、前に。少しでも。




