24話
「レウドルフさん、少し広場で待っていてくれませんか。子供たちも期待しているし……」
「だが」
「私、あっちの路地で買い物がしたくて……幅的にレウドルフさんは角が引っかかってしまうでしょう?」
路地の中に見える雑貨屋さんの看板を指させば、レウドルフさんも難しい顔をした。
もし角がこの場でポロッと落ちても、体格のいい彼ではちょっと狭そうな程小さいお店だ。
先日レネさんと一緒に買い出しに来て見つけた隠れた名店……とまでは言わないけれど、とても素敵な雑貨を置いているお店である。
「贈り物を、買いたくて……その、そんなにお待たせしないと思うので!」
「……もしや、テオに……!?」
「えっ。は、はい。そうですけど……」
「そ……そうか! それは……その、良かった……? いや、リウィアがいいならばそれでいいんだが、ううむ」
「レウドルフさん?」
何故だか唸るレウドルフさん。
そんな彼の足下には子供たちが群がって、荷物を持つ手にぶら下がったりとやりたい放題なもんだから私は『そんなことしちゃいけません!』と子供たちを追っかけてきた親御さんと一緒に注意する。
危ないからね!
レウドルフさんが優しい人だから許されるけど、普通に同国人でもそんなことしたら怒られる時は怒られるのだもの。
そんな間があったからだろうか?
私が路地に行こうとするのをあまり良く思っていなそうだったレウドルフさんが、ひとしきり悩んだ様子の後、大きなため息と共に私を見つめて言葉を続けた。
「何があってもわたしたちはリウィアの味方だ。テオは決して君を裏切らないが、君の望むようには動かない……と、思う。だからそんなテオの気持ちが厄介だと思ったときは頼ってほしい。役に立つかはわからないが、それでも我々は君の味方だから」
そうして何かあったらすぐに大声を出すことを条件に、私は雑貨屋さんがある狭い路地に入った。
大人がすれ違うのに体をずらさないといけないような、そんな狭い路地だ。
王都とはいえ、いいえ、むしろ王都だからなのかな?
当然ながら栄えている町に暮らしたいのはみんな同じ気持ちだ。
便利だし、安全だしね。
ただそのせいで、王都の端には人が集まりやすいものだから集合住宅なども多いし、こうして路地を狭めてその分建物を作ったり……なんてこともよくある話だったらしい。
中心部に行くにつれ、華やかで整った町並みだけど……栄えているとはいえ、そういうところはどこにでもあるんだなと思ったものだ。
(……それにしても、なんでレウドルフさんはあんなに心配しているのかしら)
テオが私にだけやけに優しいことはもうすでに私も理解していることで、もしかしてその二面性(?)に私が気づいていないと思って心配してくれたんだろうか?
彼は私よりもずっと大人の男性なので、世間知らずの小娘がテオの外面にコロッとやられて失敗したなんて思わないよう、気を使ってくれたのかもしれない。
(それはそれでテオの信頼度がないってことでは……)
仕事仲間としてはとても信頼しているって点を強調されたけど、そこのところはどうなんだろう。
結局のところ、テオがいったい何の役割を担っているのか、今もまだ教えてもらっていないのだ。
(……でも、テオに告白するつもりだってレウドルフさんに話したら、応援してくれたのよね)
ちなみに周囲にいた子供たちは親御さんにしっかり注意されてあの後お行儀よくなりました。
そんな親子たちの様子はとても微笑ましかったけど、レウドルフさんとお話したい子供たちの目に結局負けちゃったのよね。
まあおかげで私もこうやって一人で雑貨屋さんに入れるので、ありがたいけど……。




