12話
テオとイェルクさんと馬で移動した後、さらに別の町で他の使節団の人たちと合流した。
人生で初めて〝魔道扉〟を使ってつい感激しちゃったのは内緒。
魔道扉というのは、かつて魔法使いがもっと世界中にいた頃に作られた魔道具の一種で、今は国が管理している便利な移動手段だ。
オルヘン伯爵領のような田舎から王都まで馬車でだいたい一ヶ月ほどかかるのに……なんと一瞬で移動できるっていうすごい魔道具なのだ!
その代わり、非常に高額な使用料を求められるので一般人や私のような貴族でも末端な人間がおいそれと使えるような代物じゃないけどね……。
「それじゃあ、これからよろしくね。リウィア!」
「え、ええ……あの、よろしくお願いいたします。精一杯、頑張ります!」
そしてあれよあれよという間に私は〝メギドラ王国使節団宿舎のメイド〟という職を得たのである。
いいのかな、身元の証明とか……そのへんは任せろってテオが言ってくれたけど。
(まあ、私は私でお仕事頑張ろう……!)
メギドラから来た使節団の人たちは、なんとたった六人だった。
私の中にある、貴族としての数少ない知識でもその人数が少ないということはわかる。
基本的に使節団と言えば国の代表者が外国に派遣される際に編成される一団のことで、
大使や副使、書記官の他に随行員として護衛や身の回りの世話をする人員、医師や通訳、法律家など……それこそ、数十人から場合によっては百人以上の大所帯になってもおかしくない。
それなのにたった六人!
全員が軍属らしい。なんでもこなせる人たちが選ばれているらしいけど、なんと少ないことか。
おかげで私がすべき家事が少なくて済むのは、ありがたいことではあるけれど。
(いくら国交が途絶えていて、悪感情が渦巻く国だからといって……いえ、逆にだからなのかしら? テオはいったいどの役職なのかしら……)
それについてはさすがに踏み込んで質問はできなかったし、向こうも説明はする気がないらしい。
まあ、あと半年ほどの関係なのだからお互い詮索せずに過ごせればいいのだ。
(……半年あれば、ご近所付き合いもできる、わよね?)
以前、オルヘン家でキッチンメイドから〝ご近所付き合いは大事〟だと説明を受けている。
彼女は私が義母や義妹に折檻された日にこっそりと手当してくれたり、食事を持ってきてくれたせいで追い出されてしまったけれど……元気にやっているだろうか。
いつか、お詫びとお礼をしに行きたいなと思うけど、彼女がどこで暮らしているのかもわからない。
(でも生きて無事に爵位を継げば、私にだってできることが増えるはずよ……!)
詳細はわからないにしろ、義母のせいで母方の叔父夫妻とは絶縁となってしまったオルヘン伯爵家だけど……それだってきっとなんとか戻してみせる。
今は亡きお母様のためにもね。
そうよ、今はへこたれている場合じゃないわ。
「メイドの仕事だろうとなんだろうと、あの人たちに言われてなんでも経験しているんだからどんとこいだわ!!」




