表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【短期連載版】虐げられ少女を助けたら縛り首の刑になった騎士の話  作者: 山田 勝


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/5

空き地デビュー

「「「お姫様!」」」

「「「お嬢様!」」」


「「「ハハー!ハハー!」」



 どういう状況だって?

 エルダを空き地デビューさせたら、子供達がエルダをお姫様にして貴族に仕える使用人ごっこを始めやがった。


 エルダを空き箱に座らせて平伏してやがる。

 可愛いからから仕方ない。

 エルダは輝く金髪にエメラルドグリーンの瞳、どう見ても貴族の家系だ。


 俺は隣で見ている状況だ。そうだ。面倒を見ると決めたのだ。



「おっさん。使用人ってこんな感じか?」


「ハハハ、トム、二つ違うぞ。まず。俺はおっさんではない。そのごっこ遊びは超絶違うぞ」


「そうなの?じゃあ、どんなんだよ!」



「そうか・・・」


 貴族なんて遠くから見たことしかないか?



「まずな。女子はエルダに侍り。ちやほやする。男子は周りを囲んで警戒だ。騎士の役だな」


「おっさん。父ちゃん。冒険者だけど!」


「じゃあ、何か探してエルダに献上せよ」

「分かった」



 さっきから呆然としているエルダに声をかけた。


「エルダ、大丈夫か?」

「はい・・」


 大丈夫と言っても大丈夫なはずがない。

 しかし、人に慣れなければいけない。

 今日はこの辺にして切り上げるか?


 女子の会話にも上の空だ。



「まあ、奥様、素敵なドレスね。どこで買ったのかしら」

「オホホホ、昨日旦那が飲んだくれて困っていますわ」



「はい・・」



 女の子たちがチヤホヤしてもエルダは返事くらいしか出来ない。


 その時、トムがやりやがった。良い意味でしでかした。


「お嬢様!魔獣を捕まえて参りました」

「ウミャー!」


「猫・・・」


 トムが太った野良猫を捕まえて来た。

 不適な目で猫はダランと脇を抱えられて抱っこされている。


 俺はトムに耳打ちをする。


「おい、この猫、大丈夫か?」

「大丈夫だよ。トラは達観猫と言われているよ」



 話を聞くと、子供に好きなようになでられているようだ。

 その時はジト目、まるで諦めているかのような表情だから達観猫とあだ名がついている。


 つまりこのトラ猫は、無我の境地だ。子供達が騒ぎ出してもナデさせる猫だ。


「まあ、トム、手柄ね。奥様、ナデナデしてさしあげて」

「はい・・・」

「ウミャーミャー」(何だ、新顔か?)


「ねえ。ふてぶてしいでしょう?」

「うん・・・猫ちゃん。クスッ」



 それからエルダは少し変わった。俺に相談するようになった。


「エド・・・私、友達と上手く話せないわ」


「いいぜ。それも個性だ。ペラペラ話す奴も信用できない。自分のペースでいいぜ」

「うん・・それと・・・」

「何だ。言ってみな。出来る事は出来ると言うから」


 自分でも驚いた。『出来る事はやってあげるから』と夫人と同じ物言いになった。


「自分の・・・部屋が欲しい」

「分かった。少し待て」



 それから、数週間にわたるクエストを受けた。大金を稼げる仕事だ。

 今は宿暮らしだ。一軒家を借りてエルダに部屋を提供したい。


 エルダをスミス夫人に預けた。


「エド・・・いつ帰って来るの?」

「来月の頭くらいかな」

「・・・・・・・・・」


 無言で服の袖を掴んだ。


「エド、私のせい?」

「いや、エルダのためでもあるが、俺のためでもある。金稼ぎたい」

「分かった」


 帰って来たら。

 無言だが、手の平を合わせて出むかえてくれた。


「あんた、やるじゃない」

「スミス夫人、いつもありがとう」

「エルダちゃん。炊事を頑張ったよ。独りでお留守番出来るってね」


 コクッと頷くエルダに、俺は少しだけ安心した。




 ☆☆☆


 あれから平屋を借りた。炊事も出来る。

 エルダと一緒に家事をしたりしている。


「「「「エルダちゃーーん。あーそーぼー!」」」


「エド・・」

「おう、行ってこい。後は俺がかたづけるから」

「有難う・・・マリーちゃん。今行くね」



 入れ違いにスミス夫人がやって来た。小言かな。と思ったら小言だった。




「あんた。エルダちゃんに構って、仕事はしなくて良いのかい?」

「エルダが心配で」

「生活出来ないとエルダちゃんも困るよ!遠出の時は私も見に行くから」


「しかし」


「しかしも鹿もないよ!生活も大事じゃないのかい?」


「エルダのいる生活が大事です。はい」

「全く、ダメ男の典型だね。仕事しな!」


 グウの音も出ない。生活が楽しくて仕方ない。妹とは違った楽しさがある。

 何だろう。これは・・・親しいけど他人、家族?いや、義妹と言ったところだろう。



「それよりも、父ちゃん貴族のお抱えだから調べてもらったよ」

「本当ですか?」

「一筋縄でいかないね」



 何でも、エルダは貴族社会では悪い噂が流れている。

 実母が亡くなり。後妻と仲が悪くて、使用人を連れて贅沢に外国に旅行ばかりしていると?


「そんな馬鹿な?10歳だよ?」

「そりゃ分かっているわ。怒らずに聞きなさい」


 後妻は慈愛の母と評判で子供4人を引き連れて家族6人で社交界にも出席し、エルダが懐かないのは私のせいだ。よよよーとお涙頂戴話をしている。



「何でも、今度生まれる王太子殿下のお子さんの養育係になるとか・・」


 ダン!


 思わず机を叩いた。


「はあ、はあ、はあ、そんな馬鹿な!」

「落ち着きなさい。でね。あんた、エルダちゃんから母方の祖父母のことを聞きなさい」

「難しいです」

「それが分かってればいいわ。それとなくね」






最後までお読み頂き有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ