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51 ドラゴン襲来

 その日私は、魔王城にアルバイトに来ていた。ゴーケン、オデット、ティーグ、レミールさんが王都の部隊観閲式に行ってしまった関係で、必然的にアルバイトが増えた。魔王とも更に仲良くなった。


「エミリア、わらわは少し出掛けて来る。何かあればスタッフに申し付けてくれ」

「はい、分かりました。お気をつけて」

「うむ、ではセバス、ミミ、メメ、参るぞ」


 魔王はセバスとミミとメメを連れて、出掛けてしまった。アルバイトに任せて、みんな居なくなるなんて・・・とは思ったが、最近は特にトラブルもないし、スタッフも慣れているから心配はしていない。貴族の子弟も、ほとんどが部隊観閲式に出席するから、ミニ魔王城に挑戦する者はいないしね。でも、1軍戦力はすべて王都に行っているから少し不安だ。何も起こらなければいいけど・・・


 問題が起きたのはそんなときだった。スタッフが慌てて私を呼びに来た。


「大変です!!魔王城にドラゴンが・・・」

「ドラゴン!?」

「そうです。なんでも『マオ様に会わせろ』と言ってきました。ギルマスとオルグさん、それに精鋭の冒険者で対応してもらってますが、もめているようです」

「分かりました。すぐに行きます」


 魔王城の入口に居たのは、赤い鱗で体長10メートルほどの、巨大なドラゴンだった。スタントンさんとオルグを中心に対応をしており、他の冒険者は怯え切っていた。


「我はフランメ!!魔王軍の四天王だ。マオに会わせろ!!」

「我はオルグだ。我も四天王の一人だが、お前のことなど知らんぞ。嘘を吐くな!!」

「我もお前のことは知らん!!」

「何をしにここに来たのだ?」

「マオを倒しに来たのだ!!」

「だったらなおのこと、マオ様には会わせられん」


 赤いドラゴン、そして名前がフランメ、間違いなくゲームに登場した魔王軍四天王の一角、「火竜フランメ」だ。ゲームでは、魔王に対抗心を燃やしている描写も描かれていた。また、四天王は基本的に単独行動だったので、オルグとフランメに面識がなくても不思議はない。

 そういえば、セバスも「所在不明になっている大馬鹿者」が四天王にいると言っていたし、フランメがその四天王なのだろう。


 それよりも、決闘する雰囲気になってきた。オルグも武人気質で相当な実力者だし、どっちが勝つにせよ、ここで戦われたら、町に大きな被害が出る。なので、私が仲裁に入ることにした。


「少々お待ちを、ここで暴れられたら、町に大きな被害が出ます。ですので、決闘をするにしても、闘技場でお願いします」

「なに?ところで、お前は誰なんだ?怪しい格好をして、恥ずかしくないのか!?」

「そ、それは・・・」


 恥ずかしいに決まっている。まだ、仮面を付けているから、耐えられているだけだ。


 ここで私は、素直に「アルバイトです」と答えるかどうか迷っていた。というのも、前世でアルバイトをしていた飲食店で、店長から「俺がいない時にもめ事があったら、とりあえず、「店長代理です」と言っておけ。アルバイトよりは説得力があるからな。それにアルバイトを店長代理にしたらいけない法律はないしな」と言われていた。実際、アルバイトでも肩書きがあると相手も話くらいは聞いてくれる。

 なので、それを使うことにした。


「我は血塗れ仮面!!四天王候補生です。それにマオ様の代理をしています」


 嘘はない。箔をつけるために四天王を持ち出した。私の名前は四天王候補に挙がっているし、今日だけは魔王に代理を頼まれているからね。


「なに!?だったら丁度いい。闘技場とやらに案内しろ。そこで偽物の四天王とともに、我が嬲り殺しにしてやろう。まずは血塗れ仮面、お前からだ」


 あれ?私と決闘する流れになってない?



 ★★★


 何とか火竜フランメを闘技場に誘導した。

 となると私がやることは時間稼ぎだ。魔王が言うには、今日中に帰って来るとのことだったので、魔王が帰って来るまで時間を稼ぐことにした。


「フランメ殿、観客が入るまで待ってもらいたいのです。盛り上がりますし」

「なるほど・・・我の恐ろしさを多くの者が知るところになるのは僥倖だ。しばらくは待ってやろう」


 それからしばらくして、闘技場は満員になってしまった。もう言い訳はできない。


「それでは、血塗れ仮面とやら、参るぞ!!」


 いきなり炎のブレスを吐いてきた。「受け流し」を発動するも、かなり熱い。火傷をしそうだ。多分、レベル差があり過ぎて、すべて防ぎきれないのだ。なので、私は近接戦に持ち込む。いつも通り、フランメに引っ付いて、「返し突き」を繰り返す。フランメからは血が噴き出ているものの、全く効いていない。なぜなら、傷を付けたそばから、傷が塞がっているからだ。


「なんだ?そのへなチョコな攻撃は?全く効かんぞ」


 コイツも私が相性の悪い相手だ。フランメは回復力が高すぎる。ゲームでも毎ターン50程回復していたように思う。動画サイトでも、「返し突き」だけでフランメと戦っている動画があったが、「返し突き」のダメージは平均して30前後なので、5時間やっても勝利することはできないでいた。つまり猛者ゲーマーでも、魔王は倒せてもフランメは倒せないのだ。

 普通ならここで諦めるのだが、今の私には必殺技がある。


「ライライ剣!!」


 ライライが私のレイピアに電撃魔法を付与する。最近、使うことも多いので、事前の打ち合わせなしでも、対応してくれた。


「ふん!!それがどうした。そろそろ、決めやる!!」


 フランメは前足の爪で私に斬り掛かってきた。


「返し突き!!」


 私のレイピアがフランメの尻尾に刺さる。


「グギャー」


 フランメが悲鳴を上げる。ダメージは入っていないようだが、苦痛は与えられている。可哀そうだが、このまま、フランメの気持ちが折れるまで、「返し突き」を繰り返すしかない。


「痛い!!痛い!!おのれ!!」


 怒り狂ったフランメの攻撃を躱し、突き刺していく。遠距離からブレス攻撃に徹していれば、そんな苦痛を味わうこともなかっただろうに・・・


 最初は盛り上がっていた会場の雰囲気が変わっていく。


「エミリア先生、ヤバいよ・・・」

「流石に可哀そうだな・・・」

「多分、本人はバレてないつもりで、いつも以上に無茶してるんだ」


 というのも、ライライ剣の効果なのか、フランメの自動回復スキルが弱体化し、傷が塞がらなくなって、血塗れになっている。客観的に見て、私がドラゴンを面白半分に虐待しているようにしか見えないだろう。それに私だと観客にバレてしまっている。私のほうが先に心が折れそうになる。


「もう止めにしませんか?」

「うるさい!!殺してやる!!」


 仕方なく、同じことを繰り返す。次第に観客がフランメに声援を送り始める。


「頑張れ!!ドラゴン!!根性見せろ!!」

「そうよ!!悪の血塗れ仮面をやっつけて!!」

「本当に胸糞悪いぜ!!」


 おい!!どう見ても私が正義のヒーローだろうが!!

 いや、やっぱり違うか・・・


 そんな時、魔王がやって来た。


「おい、フランメ!!わらわを倒しに来たそうじゃな?」

「そ、そうだが・・・」

「だったら、ここからはわらわが相手をしてやろう。エミリアよ。ご苦労じゃった。何でも四天王候補生で、わらわの代理だそうじゃな?」

「そ、それは・・・」


「ヨシ!!その責任感と熱き思いに応えて、正式に四天王に任命してやろう。オルグ、ミミとメメ、セバス、それでよいな?」


「御意!!」

「「もちろんです」」

「エミリア殿なら、文句のつけようもありません」


 あれ?私が四天王?

 思考が追い付かない。


 しかし、そんなことはお構いなく、目の前では凄惨な光景が繰り広げられている。幼女がドラゴンをフルボッコにしている。フランメの特徴である自動回復スキルが弱体化した状態で、攻撃力が異常に高い魔王と戦うなんて、自殺行為だ。

 そんな時、ライライが魔王とフランメの間に割って入る。


「ライライライ!!」


 流石の魔王も攻撃を止めた。


「フランメよ。ライライに助けられたな・・・」


 ああ!!多分、ライライは魔物テイムのマニュアルに従って動いたんだ。最近、少しでも餌を貰おうと、あざとくなっていたからね。血塗れの弱り切ったフランメの見て、ピンときたようだ。

 すると、フランメは小型犬くらいのサイズになってしまった。後で聞いた話だが、魔力が尽きかけると、この大きさになるそうだ。普段はこの大きさで、戦闘やみんなの前で威厳を示すときは、大きなドラゴンになるという。


 そして、フランメは言う。


「ありがとうございます・・・雷獣様!!一生ついて行きます!!」


 火竜フランメをテイムしたはいいが、ライライが雷獣だって!!

 ちょっと待て!!


 私はある恐ろしい仮説を導き出した。それは・・・

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

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