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その43、健康に気を使う王様のこと


意識高い系。







「お酒がない?」


「ないというか、少ないんですね」


 しばらくして。


 夜――わたしはタフトと食事をしていたのだが。

 その時、こんな話題をふられたのである。


「値上がりはしてるけど、ありますが」


 わたしはタフトの前にある木製のジョッキを指す。


「いえ、ここのことではなく、王都で、です」


「なんで?」


「最近クルラホーンが暴れているとか……」


「それって、お酒の妖精でしたっけ?」


「ええ。魔法使いが使い魔にしていたりするものですが、それが集団で街道の隊商を襲撃しているとか……」


「ふーん。それで、王都にお酒が入ってこないと……?」


「ええ」


「しかし、王都でも酒造はしとるんと違いますか?」


「もちろん。しかし、質では名産地方のものに劣るようですね」


「はあ」


「まあ、庶民は安いお酒でも満足できますけど、上級階級とか、貴族のかたは」


「満足できない、と」


「はい。なのでお酒の値段が上がっていますね。そして、他国からも良いお酒が非常に高値で入ってきています」


「それならお金持ちだけの嗜好が問題ですか」


「ですが、徐々に数がなくなりつつあります。王都ではいち早く酒税が設けられており、家庭で造られたお酒は没収されています」


「そりゃあ酒飲みはつらいですねえ」


「なので闇でお酒が売り買いされてもいるようです。取り締まりもしていますが、まあイタチごっこというか」


「しかし水代わりに飲んでいたものが禁止されたら不便でしょう?」


「いえ、近年はトロル由来の水魔法で、王都では水道が引かれています」


「ほええ?」


「この魔法によって、汚水を浄化したり、海水を真水に変えることができるのですね」


「ふーん。そんな便利な魔法が……」


「最近ではさらに改良されて、飲料可能というレベルを超えて、非常に美味しい水に」


「できるんですか?」


「できるんです。そもそも、この街の大型浴場で薬効のあるお湯に変える技術もその一つ」


「それは知らなかった……」


 魔法で科学文明並、いやもしくはそれ以上になっているわけか……。


「しかし、なんでお酒の規制を?」


「まあ、お酒の害というのが問題されまして。特に国王陛下が」


「害って……」


「酒毒というのですか。お酒が入ると問題行動を起こすようになることがありますね」


「ああ、酒乱ってやつですね」


「そうです。実は公爵家がそれで問題を起こして、表ざたになったのです」


「醜聞ですね」


「詳細はハッキリしませんが、お酒が原因で人死にも出た。それも、貴族のかたが」


「ありゃりゃ」


「これによって、国王は強権を振るってお酒の規制をしくことにしたようです。元から健康に気を使うというか神経質なかたのようでして」


 ふーん。健康オタクってやつか?


 それとも、意識高い系ってやつ? どっちにしろ面倒くさそうな王様……。






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