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操り人形 (其の四)

がむしゃらに抗うが、もちろん効果はない。

私はトレイシーを見つめると、彼女の頬を両手で包みこむ。


「えぇッ!?あの、リリー様ッッ、何をッッ」


エメラルドの瞳に戸惑いの色が浮かぶ。

私はゆっくりと顔を近づけると、息のかかる距離で首を横へ傾けた。

その様に察したのか、トレイシーの頬が赤く染まると、ガブリエルは楽しそうに笑う。


「リリーストップだ。その表情いいよ、最高だ。君はリリーを異性として愛しているんだね。これは面白い。ゆっくり見物させてもらおう。どうぞ進めて」


写真のアングルを見るかのように私たちを眺めるガブリエル。


「この変態!今すぐやめさせて!こんなのこと可笑しいわ!……ッッ、リリー様、正気に戻ってッッ」


ゆっくりと近づく彼の瞳。

待って、なんで、こんなことッッ。

彼の唇へ触れると、私はむさぼるように齧り付く。

唇の感触も熱も何も感じない。

舌で唾液をかき混ぜ、水音が響くと、彼の息が荒くなっていった。


「んんん……はぁ、ふぅッ、うぅぅん、はぁ、んんんんん」


唾液が口角から垂れ、深く激しい口づけを続ける。

私は息一つ乱れぬまま、とろんとしたエメラルドの瞳を見つめた。

おもむろに唇を離すと、指先で乱れた服を脱がせ、彼の体をなぞっていく。


「はぁ、はぁ……リリー様、ぃやっ、んんッ、こんなのッッ、リリーさまぁッッ」


鎖が激しく揺れ、エメラルドの瞳に涙が浮かんでいる。

こんなことしたくないッッ、なのに……もう嫌!

自分の意思と関係なく動く体に心が悲鳴を上げる。


私は指先で彼の胸板を優しく撫でると、くぐもった声が漏れた。

もう何も見たくない、考えたくないッッ。

耐えられないと心が叫ぶと、靄が濃くなり黒く染まっていく。

トレイシーのスカートへ手を伸ばした刹那、ガブリエルの声が脳に響いた。


「いいねいいね、感じている姿はさらに美しい。嫌だと言いながらも体は素直だ。女性と違って男はわかりやすくいい。あぁ待った、リリー、ストップだ。役者は多い方が良いからね」


ガブリエルはポケットからカギを取り出すと、エドウィンのいる檻を開ける。

鎖でがんじがらめにされたエドウィンを引きずってくると、私の前に投げ捨てた。


どうして今エドウィンを?

だけどこれはチャンスかもしれない……。

あの檻の中に私が行くことは不可能だった。

彼が傍に来てくれたのなら、何とかして触れさえすれば……。

閉じようとしていた心に光が差し込むと、黒い靄が若干薄くなった。


「エドウィンと言ったかな?君はどうみても男だが……そのプラチナの髪に、輝く金色の瞳は僕の好みにピッタリだ。男でもこんなに楽しめると知った今、君も僕を楽しませてくれるだろう」


エドウィンは今にも殺しそうな目でガブリエルを睨みつけると、ウゥッと唸り声を上げる。


「挑発的な態度は気に食わないが……まぁ仕方がない。リリーこっちへ来なさい。彼が終わったら最後は僕だ。こういった4Pは初めてだよ。楽しみだ」


ニタニタとゲスな笑いを浮かべるガブリエル。

本当に最低、ゲス野郎だわ。

心でどれだけ悪態をついたかわからない。

操られていなければ、こんな男に負けるはずないのにッッ。


私は彼の言葉通り、スッとトレイシーから離れると、ガブリエルの元へ跪く。


「彼も楽しませてやってくれ。暴れられないようになるくらいまでね、あはははは」


金色の瞳と視線が絡むとエドウィンは小さく頷く。

これは彼が何かをするのならと、言っていた合図。

エドウィンもわかっているんだ。


私は横たわるエドウィンの頬を手を伸ばすと、トレイシーと同じように触れた。

狼に戻って、トレイシーを助けて。

そう強く心で命令した刹那、彼の体から光が溢れた。

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