表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/134

ヒロインとの出会い (其の六)

その後湯あみを済ませ着替えを貸すと、トレイシーは自分の宿舎へ戻って行った。

事情というのは聞けなかったが、それよりもノア王子はトレイシーが男だと知っているのだろうか?

ノア王子が彼女をこの城へ連れてきたようだし、それにとりあえず二人は付き合っている。

本で見た男色との噂は、本当だったのかな。

私との婚約がなくなった今、ノア王子は未だ婚約者を作っていない……もしかしたら。


前世ではBLにそれほど興味はなかったけれど、ノア王子とトレイシーならありなのかも。

どちらも整った顔立ちで、想像すると大変美しい。

これはこれであり。

何はともあれ二人には、幸せになってほしい。

二人の恋路は身分さ性別と困難が多いけれど、乗り越えてほしい、そう切に願ったのだった。


★おまけ(トレイシー視点)★


リリー様の事は以前から知っていた。

女でしかも爵位も高い御令嬢が、女騎士として騎士学園にいることを。

私の姉も彼女と同じ、剣が好きだった。

強くて優しくて穏やかで……。

逆に私は令嬢がする裁縫や花、料理が好き。

戦う勇気もなく、弱いくせに気だけは強い。

姉と性別が逆に生まれてきたとよく言われていたの。


男であるにも関わらず、女のような私を皆が笑っていた。

何度か男らしくなろうと努力したこともある。

だけど男らしいとは何なのか、女らしいとは何なのか、わからなくて……。


姉はそんな私を支えてくれた。

そのままで良いと言ってくれた。

姉だけが私の味方だった。

姉のおかがで、次第に笑われるのも気にしなくなって、くだらない事に従おうとしている自分が馬鹿らしくなって、言い返す術を覚えた。


だけどここへやってきて、私の味方は誰もいなくなった。

皆が女だと信じているから笑われることはないけれど、その分変なやっかみが増える。

私の可愛さに言い寄ってくる令息。

私は女の恰好は好きだけれど、恋愛対象は女、男に興味はない。


味方がいないお城の中で、唯一の癒しがリリー様だった。

リリー様はどこか姉と似ていて、ノア王子のお気に入りとの点でも同じ。

だけど侍女の私が彼女と話す機会はなかった。


だけどのあの日、リリー様と城で出会えた。

このチャンスを逃すわけにはいかないと、すぐに話しかけた。

仲良くなりたくて。

話すと本当に優しくて、こんな私の相手をしてくれる。

一緒に居ると辛い事も悲しい事も耐えられるそんな気がした。


次第に仲が深まり、私の中にある感情が芽生え始めた。

異性として惹かれている事実。

だけど彼女は私を女だと思っていて……。

そこで初めて私は、男として見てもらいたいと思った。


今日も令嬢に絡まれてうんざりしてたところに、リリー様がまた助けてくれた。

水浸しになった私を部屋まで連れて行くというが、私は男、行きたいけれど行くわけにはいかない。

しかしお風呂との単語で、彼女の入浴姿を想像すると、頭が沸騰しそうになった。


あたふたと混乱していると、気が付けば彼女の部屋。

部屋に入るや否や、彼女は服を脱ぎ捨て下着姿になる。

いつも服で隠れていた肌があらわになると共に、豊満な胸から目が逸らせない。


固まる私の姿に、彼女がゆっくりと近づいてくる。

思わず後ずさるが、気が付けば後ろは壁。

大変な状況のはずだが悲しいかな男のさが。

自然と谷間に視線がいくと、私はゴクリと唾を飲み込んだ。


滑らかな肌に、柔らかそうにゆらゆら揺れる胸。

そんな気持ちを知る由もない彼女は、私の濡れた服を逃がそうと手を伸ばした。

強く拒絶すれば、リリー様はきっとやめてくれる。

だけど心の奥に、男だと知ってほしいそんな邪な思いが頭を掠めた。


バレてはいけない事実。

それにどんな反応をされるのか怖い。

だけどノア王子が信頼している彼女ならと……どこか期待した。


男だとバレてしまったが、リリー様は姉と同じように私を認めてくれた。

すごく嬉しかった。

私にはリリー様しかいない。

姉以外で、こんなに誰かに対して強い感情を抱いた事なんてない。

私の中でリリー様の存在がどんどん大きくなっていく、そんな気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ