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帰ってきた王都 (其の三)

最初の試験で上位にもはいれなかったエドウィンだが、次の試験では10位に入っていた。

そして最終試験ではなんと、ピーターの次位。

さすがにピーターには勝てなかったが、十分いい勝負が出来ている。

正直数年やってきた私よりも上達していた。

筆記テストはボロボロみたいだけれど……。


そして私はというと……最終試験の数週間前にギブスが外れた。

だが腕の怪我が完治したわけではない。

そこから様子見でまた数週間。

ようやく剣を持てる頃には、最終試験が始まってしまい、参加できなかった。


初心にかえり、筋トレと基礎訓練に励んでいると、あっという間に月日が流れ私は17歳になった。

最終試験を受けられなかったが、前回の成績を参考に無事進級。

最初の試験で実力を謀りまた護衛騎士が新たに選任されるのだが、きっと私の席はないだろう。

ギブスをしていた数か月、練習はおろか筋トレすらまともに出来ていない。

技術も体力も大分落ちている。


ここで護衛騎士に選ばれれば、城へ上がることが出来たのだが……実力の世界、厳しいよね。

小説が始まるその時にお城へ上がり、ノア王子の傍で楽しむはずだったんだけど……。

けれど私の席にエドウィンが入れば、小説が始まるシチュエーションと全く同じになる。

つい先日ストーリーを変えてしまったのかと焦ったけれど、結果だけを見れば変わっていない。

ということは……もしかして私がどう抗おうとも、変わらないのだろうか。


ううん、そんな後ろ向きな考えじゃダメだ。

ノア王子は小説の冷たい王子とは違う、彼は変わったのだ。

女性嫌いではないし、表情も豊か。

変えられない事なんてない、そう信じてる。


進級して暫くしたころ。

ようやく医者から練習の許可がおると、早速訓練場へ向かい剣を振る。

城ではきっと小説のストーリーは始まっているだろう。

休んでいた間筋力が落ち、数回素振りをしただけで、腕が痛み息が上がる。

また一から鍛えなおしだな……。

次の試験で結果を出して、あわよくばお城へ上がれたらと思っていたけれど……。


木刀を見つめシュンと肩を落としていると、早朝の訓練場にピーターとエドウィンがやってきた。


「リリーこんなところに居たのか。ノア王子が呼んでいる。いくぞ」


「えっ、私を?」


「うんうん、大事な話をするみたい」


エドウィンはギュッと私の手を握ると、ニコニコと嬉しそうに笑った。


「主様、怪我はもう大丈夫?無理しないで、何かあれば俺が守るよ」


「えぇ、大丈夫よ。エドウィンありがとう」


ニッコリ笑みを返すと、ピーターがムッとした様子で、私とエドウィンを引きはがす。


「さっさと行くぞ」


ピーターはエドウィンから剥がした腕を持つと、そのまま城へと引っ張っていった。


ノア王子の元へやってくると、私達は敬礼を取り膝をつく。


「やっと来たね、遅いからどうしたのかと思ったよ。前回の騎士試験には参加できていなかったけれど、今年の護衛騎士の一人として、君を任命したいと思っているんだけれど、どうかな?ピーターとエドウィンはすでに任命済みだよ」


耳を疑うその言葉に、私は悄然と顔を上げた。


「ノア王子発言をお許し下さい。ピーターとエドゥィンはわかりますが……私もですか?私は前回も最終試験すら受けられていない上、剣の技術も落ちております。ノア王子の護衛に相応しいかどうか……」


「君でもそんなこと気にするんだね。ふふっ、でも君には女の勘があるんだろう?二度も僕を救ってくれた。選ばない理由がないよ」


ノア王子は出会った頃と同じように手を差し出すと、少年のような笑みを浮かべる。

その姿に私は自然と手を伸ばすと、あの時と同じように手の甲へそっと唇をおとしたのだった。



★おまけ(エドウィン視点)★


主様とピーターについていき、俺は初めて人里へやってきた。

人狼の村とは違う、その多さに驚く。

見たことのない食べ物に、道具、何もかもが新鮮だった。


最初街へ入ってすぐに言われた言葉。

人狼という存在は世間にそれほど知られていない。

これから人狼の街が国民に知れ渡るまで、人狼という事を隠してほしいと。

人型ではあまり生活していなかったから、慣れるのが大変だった。

だけど主様の傍にいる為と思えば、全然苦痛じゃなかった。


無事に街で生活できるようになると、ピーターは約束通り俺を剣士にする為学園へ入学させてくれた。

もちろん俺もちゃんと約束を守ってる。

主様の唇には触れていない。

この前のノア王子の前で触れたのは頬っぺただ。

約束は破っていない。


剣を初めて持って、振り回すのが難しかった。

爪や牙で攻撃したほうが数段楽。

だけど主様を守るためには必要だと理解していた。

学園が終わってピーターと日が暮れるまで練習して、主様も強くなる俺に喜んでくれたんだ。


こうやって人間として暮らすようになって分かったことがある。

主様は俺が人型でいると、あまり触れてくれない。

だけど狼の姿だと、いっぱい触ってくれるんだ。

主様にいっぱい触れてほしい、俺は主様の特別になりたいんだ。


ピーターに内緒でこっそり部屋を抜けだし、主様の窓の前へやってくる。

トントンとノックすると、すぐに窓を開けてくれるんだ。


「エドウィン、どうしたの?」


「会いに来た。怪我大丈夫?」


「えぇ、もう元気。もうすぐギブスを外せるよ。心配してくれてありがとう」


ニッコリと笑う主様の姿に、物足りなさを感じる。

俺は主様の手に触れると、狼の姿に変身した。

主様は慌てた様子で窓とカーテンを閉めると、俺を抱きあげてくれる。


「エドウィンダメよ。見られらたどうするの?」


狼の姿だと人間の言葉は話せない。

怒る主様の様子に、俺は甘えるように脚へ体を寄せると、鼻をこすりつける。

すると主様は嬉しそうな表情を浮かべて、俺を膝へ乗せてくれるんだ。

体をいっぱい撫でてくれる、幸せなひと時。


「エドウィン、ちゃんとピーターに私のところへ来ると伝えた?また怒られるよ?」


伝えてない、伝えたらダメっていうし。

知らぬ存ぜぬと、ツンッと鼻を上げる、扉がドンドン叩かれた。


「リリー、エドウィンが来てないか?」


「はぁ……やっぱりね、もうちゃんと言っておかなきゃ……」


扉を開けに行く主様に触れると、俺は人型へ戻る。

そのまま窓から飛び降りると、ピーターが戻ってくる前に部屋へ戻ったのだった。




*****************************

第二章ここまでとなります。

お読み頂きありがとうございますm(__)m

いかがでしたでしょうか?

ご意見ご感想等ございましたら、

お気軽にコメント頂けると嬉しいです(*'▽')


次話より最終章が始まります。

犯人の姿が徐々に明らかになってくると共に、

リリーを囲う恋愛模様もお楽しみ頂けると思います(*'ω'*)

最後までどうぞ宜しくお願いいたします。

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