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未来の護衛騎士 (其の一)

ピーターが出発するぞと立ち上がると、エドウィンは私の唇へ顔を寄せる。


「ちょい待て、お前なぁ、そうしないと変身出来ないのか?けが人の上寝込みを襲うなんてどうなんだ?」


ピーターはエドウィンの肩を掴み静止すると、金色の瞳が微かに揺れる。


「むぅっ、別に……出来ない事はないけど……」


プクっと不貞腐れながら、エドウィンは私の手に触れるとポンッと狼の姿に変わった。


「出来るのかよ!ってそれならわざわざキッ……ッッ、しなくてもいいじゃぁねぇか」


エドウィンはプイッとそっぽを向くと、白い尻尾を振りながら、ピーターの脇をすり抜け外へ出て行った。

ピーターは疲れた様子でため息を吐く姿に、グレッグが落ち着かせるよう彼の背中をポンポン叩く。


「怒らないであげてくれ。私たちにとって主というのは、特別な存在なんだ。魂が共鳴するとでも言えばいいかな。主へ触れれば、己の意思で姿を変えられる。だが自分を認識してもらうために必死なんだよ。そうそうもう一つ、私達人狼は人型であれば言葉を話せるが、狼の姿で人間の言葉は話せない。でも理解は出来るから安心してくれ」


ピーターはわかったようなわからないような表情を見せ頷くと、エドウィンの後を追うように出て行った。


空は月が昇り、夜が更け始める。

深い森の中へ入ると、月の光が遮られ、暗闇が包み込んだ。

ピーターはエドウィンの背中に跨ると、急こう配な下り坂を駆け抜ける。


「ちょっ、おぃ、マジかッ、早すぎだろうッッ、あっぶねぇッッ」


人を乗せているとは思えない豪快な走りで、体が左右激しく振れた。

目の前に迫る枝をギリギリ避けると、振り落とされないよう狼の背中にしがみつく。


「だがこのペースなら、ノア王子が街へ入るまでにたどり着けるかもしれない。隣国へ向かう山沿いの道へ向かってくれ。そこから街へ向かおう」


エドウインはチラッと金色の目でピーターを見ると、鼻先を上げながら向きを変えて、急斜面を駆け下りて行った。


一晩中走り続けるが、一向にペースが落ちない。

だが出発した頃よりも、息が荒くなっている。

背に捕まっているピーターは、目に見えてわかるほどに疲労していた。


捜索に森を歩き続け、人狼たちと共に戦い、休む暇などない。

二日ほどまともに寝ていない体には、疲労が蓄積されていた。

休憩をしたいところだが、そんな時間はないと二人とも理解している。


夜が明け太陽が昇り視界が広がる。

狼の背に慣れたピーターは体を起こし、注意深く辺りを見渡した。

森の中はどこも同じ景色見える。

太陽の位置で方角を確認しながら、馬車が通る山道をようやく見つけると、ピーターの顔に笑みが浮かんだ。


そのまま山道沿いを木々に隠れ進んで行くと、街門付近でノア王子の馬車を発見した。

ピーターはエドウィンの背を叩くと、馬車を指さす。


「予想より大分早く着いた。あの馬車だ、止まれ、俺が行く。お前はここで待っていろ」


エドウィンはスピードを緩めると、ピーターは背中から飛び降り、土埃を上げ着地する。

山道へ出ると、馬車へ向かって走り出した。


「ダニエル士官!」


「ピーター!?」


ダニエルはピーターの姿に目を見開くと、馬を止めるように指示を出した。

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