表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/134

リリーの物語 (其の一)

私は隣国の近くにある森で目覚めた。

あなたの記憶が先行して、まさか私が!?異世界転移だとか騒いでいたわ。

だけどどこか懐かしい空気と匂い、既視感にリリーの記憶が蘇ってきた。

そしてはっきりと気が付いた。

この世界は前世の私が暮らしていた世界かもしれないとね。


ここが生きてきた世界だと確認するためも、私は隣国へ向かったわ。

そこは記憶の風景と全く同じだった。

時代を確認してみたら、私が死ぬ数年前、私が10歳になったばかり。

まだノア王子と婚約していない時期だった。


場所もわかり時代もわかった私は、次にこの世界が前世と同じなのか確認することにしたの。

王妃になるために十分な教養は学んでいたし、自国だけではなく世界の歴史についても勉強していたから確かめるのは簡単。

調べてみると、王の名王妃の名、国の名前、地図、そしいて歴史、全てが記憶と通りだった。

この世界が前世と同じ世界だと確信し、ある答えに行き着いた。

歴史が同じなら、運命は同じなんじゃないかって。

私に二度目の人生が与えられたのだと。


これはきっと恨みつらみで死んだ私への神からの贈り物。

私を裏切った二人に制裁を与えろとの啓示だと思った。

だけど今の私は、高い壁に覆われた王都へ入ることは不可能。

そこであなたの知識が役に立った。


リリーの記憶を思い出したせいなのか……ユカとしての人格が薄れ、記憶が酷く朧気になっていた。

だけど教養はしっかり残っていたわ。

義務教育で学んだこと、学生生活で学んだこと。

あなたは一つも役に立てていなかったけれど。

宝の持ち腐れとはこのことね。

私はそんなあなたの知識から、手っ取り早く力を付けられる宗教を利用しようと考えたの。


宗教はいいわ。

信者を集めれば簡単に統率が取れた軍隊を作り上げられる。

そのために必要だったのは、人ではならざる者の証。

神秘さと人を魅了し心酔させる力。


私にはこの世界で起こる様々なこと知っている。

それを生かして信者たちを募ったの。

そうそう、あなたが趣味にしていた手品も使わせてもらったわ。

目に見える不思議な現象は、人を魅了しやすいでしょう。


だけど未来を知っているのは、大きな出来事だけ。

そうそう大きな事件なんて起こらないわ。

だから別の方法も考えてみたの。

人は弱ったときに、頼れる何かを求める。

その心理を利用した。


最初の信者は、私の身代わりで死んだあの男。

暗殺者として育った彼は深い闇を抱えていた。

そこに付け込んだの。

ゆっくり彼の心へ入り込んで、私のものにしたわ。

彼を引き込んでから、私は顔を隠し話すこともやめた。

だってそのほうが神秘的でしょう?


ある程度人を集め、私はノア王子の母親に会いに行ったわ。

彼の母親については、よく知っている。

地位や財力を手に入れたにも関わらず、弱く愚かな人間。

信者にするには最高のカモだった。


拍子抜けしてしまうほど、彼女は簡単に信者になった。

そこで最初の復讐を思いついたの。

母親を利用して彼を傷つけようってね。

ノア王子は母親を慕っていた。

そんな彼女から裏切られたらさぞ傷つくと思ったのよ。


劣等感を煽ってノア王子を憎むように仕向けた。

だけど失敗しちゃった。

売る前にバレてしまったのよね。

使えない母親だったわ。


次にノア王子が王都から出るのは数年先。

トレイシーを迎え行くその日。

それまで何もせず待ってるわけにはいかなかった。

だからトレイシーへ狙いを移したの。


隣国でせっせと布教活動で信者を増やし、有力者もこちら側へ引き込んだ。

そして援助ももらえるようになって、どんどん成長したわ。

だけど王族に手を出すにはまだまだ足りない。

その突破口となったのが、この地で起きる大地震を予知し広めたことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ