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似て非なるもの (其の二)

深刻な表情で悩む二人。

シーンと静まり返る部屋に、突然バンッと勢いよく扉が開いた。


「ピーター、ノア王子、主様をどこへやったの?」


現れたエドウィンの姿に、二人は反射的に立ち上がる。


「エドウィン、いつ戻ってきたんだ?」


「お帰り、療養生活は終わったんだね。無事に戻ってきてくれて嬉しいよ」


帰ってきたエドウィンを迎え入れる二人の姿に、エドウィンは金色の瞳を細める。


「うん、ただいま、戻ってきた。もう元気。って、それよりも主様をどこへ隠したの!」


「リリーなら宿舎にいるんじゃないか?あー、違うな、あいつ出て行ったんだった。城にいると思うが……」


ピーターは窓の外へ目を向けると、エドウィンの苛立った声が響いた。


「違う、城にいるあの女は主様じゃない!見た目が同じだけの別人。俺の主様をどこへやったの!」


鋭く睨みつける金色の瞳を見つめながら、ピーターとノア王子は大きく目を見開いた。


「「別人!?」」


衝撃的な事実に二人は声をそろえると、顔を見合わせる。


「エドウィン、どういうことだ?」


「別人とはどういう意味なの?」


問いかける二人の姿に、エドウィンはムッとした表情を浮かべると、ズンズンと部屋の中へやってくる。


「別人は別人だよ、わかるだろう!全然違う、あんなの主様じゃない。俺と主様は魂でつながっているんだ。現にさっき見つけて触れてみたけれど、狼の姿に戻れなかった。なんで中身が違うのかわからないけど……俺がいない間に何があったの?」


詰め寄ってくるエドウィンを横目に、ピーターとノア王子は真剣な表情で考え込む。


「中身が別人……まさかそんなことが?だがそれなら不可解な言動に理由がつく」


「あぁ、そうだね。だけどそれが本当なら、本物のリリーはどこへ行ったんだろうか?」


ノア王子の言葉にピーターはハッと何かを思い出すと、勢いよく顔を上げた。


「……もしかして……いや、まさか……だが……お願い、信じてか……」


ぶつぶつとピーターは呟いたかと思うと、視線をノア王子へ向ける。


「ノア王子、教祖への面会許可をいただけませんか?もしかしたらもしかするかもしれません。リリーが変わったのはあいつを捕らえた日からです」


ノア王子はピーターへ顔を向けると、難しい表情で頷いた。


「それは教祖が本当のリリーかもしれないということかな?教祖がリリーだとしたらかなりまずい……。急ぎこちらから申請しておこう。もしピーターの言う通りなら……大変なことだ」


「ありがとうございます。すぐに俺とエドウィンで確認してきます。ノア王子は危険ですので、ここでお待ちください」


ノア王子はその言葉に一瞬言葉を詰まらせるが、わかったと渋々呟いた。


★おまけ(エドウィン視点)★


やっとここへ戻ってこられた。

俺は城を見上げながら、笑みがこぼれる。

主様に早く会いたい。

俺は主様の匂いを探すと、城内へ入って行った。


回廊を抜けた広場に主様の姿を見つける。

駆け寄ろうとした刹那、違和感に気が付いた。

匂いは間違いなく主様、だけど何かが違う。

何だろう……?


俺は首を傾げながらも主様へ近づいていくと、彼女がこちらを振り返った。


「あら、エドウィン様、ごきげんよう」


他人行儀な挨拶に目が点になる。

それに雰囲気も全く別人だ。


「主様……?」


「主?あなたの主はノア王子でしょ」


意味の分からない返答に思わず戸惑う。

彼女の前まで行きじっと瞳を覗き込むと、その奥には深い闇が浮かんでいた。

なんだろうこれ?


「ちょっと近づかないでよ、獣風情が」


彼女はムッと眉間にしわを寄せ俺の胸を突き飛ばすと、不快そうに顔を歪める。

俺を一瞥し一歩下がると、そのまま城内へと戻っていった。


先ほど触れた彼女の手。

俺は獣姿に戻ろうとしていた。

けれど戻れなかった。

感じていた違和感、その答えは……。


「……あいつは誰だ……?」


俺は去っていくのその姿を見つめながら茫然とすると、その場から動けなかった。

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